第8話 どうやら日本人がいたらしい

 レイをベットに寝かせると、キシは食堂に行き、そこで夕食を食べることに。

 メニューは豊富で、パンを主役にしたものが多い。

しかし、メニューのおすすめにはかなり引っ掛かるものが。


「ディアスさん?」


「どうかしましたか?」


「これって……」


「これはうちの宿舎に代々伝わっているもので、『ラーメン』といいます。

これを食べられるのはうちだけですよ!」


「……これでお願いします。」


 まさか日本で食べてたあのラーメンじゃないよな?

 そして、5分くらい待っているとラーメンが運ばれてきた。


「お待たせいたしました!

これが当店のおすすめメニューの『ラーメン』になります!」


 日本で見たラーメンと全く同じだった。

これは醤油ラーメンであろう。

でも、この異世界に醤油言うものがあるのだろうか?

一瞬首をかしげたキシは、まずラーメンのスープから頂くことにした。

キシはゆっくりとスープをすする。


(……醤油だ。この世界にもあったんだな)


 次は麺に手を付ける。

この世界には箸というものがないのでフォークになる。

フォークを回して麺を絡める。

 そして、口の中へ。


「ディアスさん。」


「何でしょう?」


「少しだけ叫んでもいいですか?」


「ご近所の迷惑にならない程度ならどうぞ。」


 許可を得るとキシはフォークを置く。


「やっぱ醤油ラーメンじゃねぇかぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」




◇◇◇




「ディアスさん、これ誰から教わりました?」


 ラーメンを食べ終わったキシはアースィマに聞いた。


「私は先代に教わりました。

でも、このメニューは先々代の頃に出来たと聞いております。」


「……ちなみに先々代の人の名前知ってます?」 


「確か、フルヤ・ショウヘイっていう人だったような……」


「あ、ははは…。そうですか。」 


やはり伝承したのは日本人だった。

キシは思わず苦笑いした。




◇◇◇




 アースィマに勧められ、風呂に入ることにしたキシ。

さすがに浴場までは日本様式では無かった。

時刻はもう真夜中。


「キシさん。今日はうちに泊まっていきます?」


「そうですね。もう遅いですし……。

お言葉に甘えさせてもらいます。」


「では、部屋はレイちゃんの隣の102号室でお願いしますね。」


 アースィマから鍵を渡され、部屋まで移動する。

 部屋の中は――なるほど、広くもなく狭くもない丁度よい広さだ。

部屋の入り口のすぐ左にはクローゼット、右には洗面台がある。

そして、シングルベットの右隣には小さな机と椅子、大きな窓がある。

まるでビジネスホテルのようだ。


「はぁ〜…。疲れた」


 キシはそう言うと、ベットに大の字になって寝転がる。

今日は驚くことばかりだ。

レイの膨大な魔力量、そして、あれだけ複雑な魔法を無詠唱でこなしていたことだ。

そして、


(この世界で日本の食べ物を食えるとはな…。)


 それが今日一番の驚きだった。

 そうして、今日の出来事を思い出しながら振り返っていると、


(そういえば、レイは大丈夫かな……)


そう思った直後、ノック音が聞こえた。


「キシ、わたし、レイだよ。」


「鍵空いてるから入っていいよ。」


 ガチャっと扉が開くと、申し訳なさそうな顔をしたレイがいた。

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