第7話 少女の仕事の手伝い2
「その魔法を覚えるのは構わないけど、かなり魔力消費してるっぽいし、それ以前に俺は魔力がほぼ無いし、絶対に出来ないし、そんなことより普通の人なら俺の魔力感知しないはずなのにこの子は感知してるし――」
「キシ、自分が今何言ってるかわかってる?」
キシはかなり動揺して早口で言った。
キシが動揺するのも無理のないことである。
レイの除霊の魔法を見たキシは、まず出来るはずがないと思った。
あんな魔法陣を見せつけられたら、口も開いたままになる。
さらに普通なら絶対にキシの魔力は感知されない。
あまりにもキシの魔力が少ないため、「お前、魔力全く無いじゃないか」と笑われるのが一般的な反応のはずである。
しかし、レイの場合は当たり前のようにキシの魔力を感知した。
それが異常でしかなかった。
レイはため息をし、話を戻すことにした。
「そんなことは置いといて、キシにはこの仕事を手伝ってもらいたいの。
見てた通り、この仕事は魔力をかなり消耗するから、かなり疲れるの。」
「つまり俺もこの作業に参加して、レイの負担を減らす、ということか。」
「そゆこと。」
「了解。
でも、魔力がほとんどない俺にこんな事出来るのか?」
「キシは鬼の力を持ってるよね?」
「おう、もちろん。」
「私が感知したものだと体内の魔力の暴走化、そして大気中のマナの吸収してるよね?」
「……その通りです。」
「なら、それを使えばいいの。」
「鬼化していれば、魔力の少ない俺でも補えるってことか。」
「たぶん。理論上ならね。」
なんと頭のいいことやら。
この子は相当勉強してきたのだろう。
魔法の応用もこんなにサラッと提案できることにキシは感心していた。
「今日はこれであがって、明日試してみよう。」
「そうだな。じゃあ、帰ろうか。」
「あのー……実は私、今歩けないんです…」
「へ???」
「魔力、使い果たしちゃった。」
「……おぶろうか?」
「お願いします……。」
そしてキシはレイをおぶると、道案内をしてもらいながら、レイが泊まっている宿舎へ向かっていった。
◇◇◇
レイが泊まっている宿舎へ着いた。
まあまあ年季の入った、素朴で趣のある宿舎だった。
「レイ、着いたぞ。」
返事がない。
後ろを振り向くと、すやすやと気持ち良さそうに寝ている。
「……あんな仕事してるし、おぶってるからそのまま寝ちゃった感じか。」
あれだけ頭が良くて才能があっても、やはりそこは13歳の女の子だった。
愛らしい顔で寝ているのを見て、キシは仕方がないなぁと思いながら、宿舎の中へ入った。
「ごめんくださーい!」
「はーい!」
出てきたのは緑色の髪をしたスタイルの良い女性が出てきた。
「すいません、この子を運びに来ました。」
「あらレイちゃんじゃないの!どうかしたんですか!?」
「実は……」
キシはこれまでの経緯を話した。
「なるほど、キシさんがレイちゃんを助けてくれたのですね。
深く感謝いたします、ありがとうございます。」
女性は深々と頭を下げる。
「いやいや、俺の意志でやったことなので…あっ、頭をあげてください!」
キシは慌てて手を横に振った。
「さすがに何もしないのもあれなので…。
そうだ!キシさんは夜ご飯は済ませておりますか?」
「いいえ、まだ何も食べてないです。」
「なら、うちで食べていきます?」
「いいんですか?」
「えぇ、遠慮なくどうぞ。」
断っても逆効果だと思ったキシは、レイが泊まっている部屋まで案内してもらい、夕食を済ませることにした。
「そういえば、まだ私の名前をお伝えしていませんでしたね。
私の名前はディアス・アースィマといいます。よろしくお願いしますね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
ディアスさん」
お互い、頭を下げた。
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