第1話 冒険者登録

 たくさんの人たちが溢れ、活気があり、この世界では誰もが知る街、ビダヤ。

 この街は多くの新人冒険者たちや経験豊富なベテラン冒険者たちがたくさんいるため、武器やポーションなどの戦闘に関わる道具を販売している店が多いことで知られている。


「いやぁー、ここがビダヤかー。やっぱ噂通りでかい街だなー!」


街の大通りの真ん中で一際目立つ少年がそう言った。

青い髪に青い瞳、そして少し目つきの悪い少年、キシこと影山かげやま岐志きしである。

 

「軽い気持ちで来てしまったことが悪かったな…。

なんてたって人が多い。あんま都会とか人が多いところなれてないんだよな」


 キシは周りが森しかないところで育ったため、大人数は慣れていない。

そのため、あまりの人の多さに少し動揺している。変な汗もかいてしまっている。


「とりあえずギルドに行って、冒険者登録するか」


 キシはビダヤの大通りの中心へ向かう。

 しばらく歩くと、


「おーすげー! これがビダヤのギルド……

デカすぎるだろ!」


 まるで西洋風の城のような雰囲気を出している。

高さはアパート10階以上はあるだろう。

そして、正面には巨大な扉がこの街に来た人々を迎え入れるかのように開いていた。


「さて、中に入って冒険者登録でもするか」


 キシはギルドの大きく開かれたギルドの入り口へ入る。

中はたいへん賑わっている。さすが、冒険者の街ということだけあるなとキシは思うほどだった。

 そして、キシは受付カウンターに並ぶ列に移動する。

 キシに順番が回ってきた。進むとそこには美人な受付嬢がいた。


「こんにちは。ご要件はなんですか?」


「冒険者登録をしたいと思いまして。」


「かしこまりました。では、こちらのカードに手をかざしてもらえませんか?

手をかざす事であなたのステータスが表示されます」


3秒くらい手をかざすとカードに文字が浮き出てきた。

すると受付嬢は驚いた表情で手の動きが止まってしまった。


「どうかしたんですか?」


「いえ、あなたは魔力がほとんどありませんね…。魔力がなければ剣術や弓術などで補うことはできますが、高ランクに上がることは困難だと思います。それでも、大丈夫ですか?」


「あ、大丈夫ですよ。自分が魔力がほとんどないのは知っていますから」


「え…!? 

では、どうして冒険者をしようとしたのですか!?

しかもあなたは、青い髪で青い瞳だから水属性に適正があると思ったのにそれすらないんですよ!?

なのにそれで、どうやってモンスター討伐などの依頼を思っているんですか!?」


 そう、異世界系ではよくある髪の毛の色や瞳の色で属性がわかるというものがこの世界でもある。

 しかし、キシは髪の毛が髪の毛と瞳の色が青色なので水属性のはずなのに、水属性の魔法すら持っていない。

それで受付嬢は驚いていたのだ。

 しかし、キシは平然とした様子で言った。


「普通に戦おうとすればすぐにモンスターにやられることでしょう。ね。」


「……?」


 受付嬢はますます困惑した表情で固まってしまった。


「まあ、そんなこと言っても誰も信用してくれないと思いますけどね」


 そう言ってキシはカードを受け取り、その場を立ち去った。


「魔力がほとんどないだと?」


「あいつ冒険者をナメてるのか!?」


 周りからは批判の声が飛ぶ。

たちまちギルド内に広まり大騒ぎになる。

それでも、キシは動じないまま、クエストの掲示板へと進む。


「おい」


 若い一人の冒険者がキシの肩を掴んだ。

キシは立ち止まったものの、視線は前を見たままだ。


「なんですか?」


「お前、魔力なしらしいな。

良いかよく聞け。冒険者ってのはなぁ、魔力があるから戦えて、活躍できて、英雄になるんだ。お前のような魔力なしはどんだけ足掻いたって無理なんだよ!」


「「「そうだそうだ!」」」


 彼は周りに聞こえるように言い、それを聞いて周りの冒険者は賛成の声を上げる。

 キシはため息をついた。


「じゃあ、どうすればみんな納得することできるんです?」


「そうだな。じゃあこの俺と勝負しろ。

俺はこのギルドの中でもいい成績を収めている。信頼もされている。

俺に勝てば納得してくれるだろう」


「「「おーーー!」」」


 みんなは彼の言葉に盛り上がりを見せる。


「俺の名はエル・オーウェルだ。さあ、本気で来い!」


 (あ、そうだ。この世界の名前って日本人の名前と同じ姓名の順なんだった。

外国と同じような感じだから、どうしてもこの人の名前が女の人の名前だろって思ってしまう)


そんなくだらないことを考えながらエルと向かい合う。


「1つ聞きますが、本気でいっても良いんですね?」


「あぁ、本気で来て構わない」


「じゃあ、遠慮なく」

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