第二章 その②「帰路」
レストランを出て、エレベーターで1階まで降りる成行たち三人。ここまで来たところで、雷鳴が足を止める。
「すまんな、二人とも。ちょっと」
雷鳴は成行と見事を引き留める。
「どうしました?」
「何、ママ?」
「私はさっきの三人と今一度、話をしてくる。今回の件に関して、まあ、もう少し話したいことがある。すまないが、二人で先に帰ってくれないか?」
どこか歯切れの悪い説明をする雷鳴。如何にも、二人には知られたくない事情がありそうな雰囲気だった。
「えっ?何を話すの?」
見事が怪訝そうな表情で尋ねる。
「大人の事情という奴だ。心配するな。ユッキーは調布へ帰って荷物などをまとめるといい。用が済んだら、私が車でユッキーの家まで運ぶよ」
そう言って財布を取り出す雷鳴。
「電車代、兼、小遣いだ」
雷鳴は気前よく一万円札を差し出す。成行はギョッとしたが、見事は何事もないように
※※※※※
雷鳴と別れて、GSCビルを出る成行と見事。取り敢えず、品川駅へ向かうことにした二人。
日曜の午前中。それでもGSCビル周辺の人出は多い。流石、品川駅の周辺。休日だが、制服姿の二人を気にする人は少ない。街行く人に目を向ければ、成行と見事以外にも制服姿の学生はいないこともないのだ。
「この後はどうする?成行君」
歩きながら問いかける見事。
「調布へ戻って荷物の支度をするよ。それと時間があれば、また魔法の練習をしたいんだけど、いいかな?」
見事へ
「そうね。荷物の方はいいとして、魔法の練習はどうしようかしら?昨日の今日じゃないけど、あの騒ぎの後で成行君が魔法を使っていると、何か言われるかも・・・」
「何かって、何?」
見事の言葉に少し不安になる成行。
「つまり、成行君がまた何か壊すんじゃないかって。多分、成行君には御庭番なり、執行部なりの監視がついていると思うわよ?」
少しわざとらしく周囲の景色に目を向けた見事。
「えっ?本当に?」
思わず成行も周囲を見渡す。が、そんなことをしても御庭番や執行部の魔法使いを簡単に見つけられるワケがない。
見事の言葉に驚く半面、何となくそれも想像できることだと思った成行。あんな風に工場を破壊すれば、警戒されるのは当然だろう。
「ちなみに、空間魔法で誰かが監視していることは調べられるの?」
成行は思いついたことを尋ねる。
「可能だけど、探知できる範囲には限界があるわよ」
見事は難しい表情で話す。
「それに変に空間魔法で周囲を探知しようとすると、却って変な疑いをかけられるかもしれないわよ?だから、空間魔法で御庭番捜しとかしないからね。別に悪いことしなければ、何もされないんだから」
見事は成行の案を拒否した。彼女の意見はその通りだが、単なる魔法の練習ならば問題無いだろうに。成行はそう思ったが、師匠にその気がないなら、今日はお休みでもいいだろう。
「ところで成行君。私も成行君のお
打って変わって、楽しそうな口調で問いかけてきた見事。
「僕の家?」
「ええ。この前は車の中で待っていたでしょう?今日、帰るなら私も何か手伝うわ」
見事は張り切った様子で成行に話す。
「手伝うって何を?」
成行は見事に問いかける。まさか、荷物の用意をしてくれるのか?だとしても、そこまではさせるのは申し訳ないと思う成行。
「荷物運びできるわよ?任せなさい。でも、その前に一旦、調布の私の家へ戻りましょう」
何か自信ありげな表情で微笑む見事。
彼女の言うとおり、詳しくは調布の静所家へ着いてからにすればいいだろう。それに見事が自宅に来たとしても困ることもない。成行は歩きながらそう考える。
一路、二人は品川駅へと接近していった。
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