第一章 その④「グローバル・セキュリティ・カバー」

 翌朝。日曜日の午前7時10分。雷鳴がランクルを運転をして、成行、見事たち三人は品川へ向かう。

 一行を乗せたランクルは一旦、中央道の調布ICへ向かう。そこから中央自動車道へ入り、都心を目指す。中央道と首都高4号新宿線を経由するルートで品川駅付近を目指すのだ。


 これから三人が向かうのがGSCビル。地上40階建ての高層ビルで、正式名称は『Global Security coverビルディング』。国内最大手の民間警備コンサルタント会社であるグローバル・セキュリティ・カバー社が拠点を構える複合ビルだ。

 このGSC社のグローバル本社をメインに、複数の大手企業が拠点を置いている。品川駅の再開発の目玉ともされているビルで、注目度が高い建物でもある。それがニュースで聞いたGSCビルの知識。それを成行はおぼろげに思い出していた。

 都内在住なので品川に来たことは何度もあるが、車で品川駅付近へ来たことは何回あるだろう?車中で成行はそんなことを考えていた。


 調布市内の静所家を出発しておよそ一時間。雷鳴の運転するランクルは品川駅前まで来ていた。

 「見えてきた。GSCビルだ」

 「おおっ!デカい・・・」

 率直な感想を述べる成行。


 品川駅前に佇む巨人とも言うべきか。太陽の光を浴びて、ビルのガラスが神々しく輝く。屋上にはヘリポートも完備しており、耐震設計の結晶ともうたわれているビル。それに比べれば人間は、どんなにか。


 ランクルはGSCビルの地下駐車場へ向かう。駐車場に入る寸前、入場窓口があった。よくある地下駐車場とは異なり、外にいる警備員が入ってくる車を一旦停止させる。

 地下駐車場へ通じる通路を見ると、地面から砲弾のような太い鉄パイプがまるで生えるように伸びていた。鉄パイプの高さは1メートル、直径は20センチから30センチあるだろうか。


 警備員の若い男性が近づいてくる。雷鳴は運転席の窓を開ける。

 「おはようございます」と、男性警備員から挨拶をした。

 「おはよう。静所おとなし雷鳴らいめいだ。9時から朝食会に誘われている」

 「お待ちを」

 男性警備員は装備した無線機で確認を取っている。

 「結構です。ようこそ」

 男性警備員は笑みを浮かべて言った。そして、受付窓口内の同僚に合図する。すると、地面から伸びていた鉄パイプが、ゆっくりと地中に引っ込んでいく。


 鉄パイプが引っ込んだところでランクルが再発進した。

 「凄い。そういうシステムなんですね」

 「あの鉄パイプのカラクリはテロ対策の一環だ。特注の超合金で、ダンプカーにツッコまれても、突破できないような造りになっている」

 「へえー」

 地下駐車場内は比較的空いていた。日曜の朝早い時間だからだろうか。エレベーター近くの駐車スペースが空いていたので、そこへランクルを止める雷鳴。

 「ラッキーだね」

 エレベーターをみながら見事が言う。

 「ユッキー。レストランへ来いって指示だよな?」

 ランクルを停車させながら雷鳴は成行に確認する。

 「そうです。5階にあるレストラン『グローバル・シャトル』です」

 成行は昨日の招待状を確認しながら答えた。


 「よし。じゃあ、行こう」

 ランクルを停車させ、エンジンを切る雷鳴。

 こうして三人はランクルを降りてエレベーターへ向かう。

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