第一章 その②「召喚状」

 ソファーからスッと立ち上がる立夏。

「こんばんは、雷鳴さん。お邪魔しています」

 丁寧にお辞儀する立夏の所作しょさが美しい。


「執行部の御役目ご苦労さんだな、立夏」

「いえ。お使いくらい、なんてことありません」

 にこやかに答える立夏。それに対して少し警戒している様子の雷鳴。

「ユッキー。それを見せろ」

 雷鳴は成行の手にした召喚状を指さす。

 成行から召喚状を受けとると、一通り目を通す雷鳴。

「ありがとう」

 そう言って成行に召喚状を返す。


 雷鳴は立夏へ視線を向けた。

「東日本魔法使い協会や執行部は今回の件をどう見ている?」

「重く見ています。非常に」

「なるほどな」

「雷鳴さん、アナタにも伺いたいことがあるようですので、その辺は御覚悟を」

 しれっと言う立夏。そんな彼女を少し睨む雷鳴。


「うむ。そういう言われ方は、あまり良い気分じゃないな」

「ですが、東日本魔法使い協会に黙っていることもあるのでは?」

「痛いところを突くなあ・・・」と、頭をかく雷鳴。いかにも面倒臭そうな顔をした。


「まあ、いい。明日、そちらへ向かう。場所は品川のGSCビルだな?」

「ええ、午前9時にお越しください。ビル内のレストランで朝食を取りながらお話ししましょう」

「わかった。ユッキー、見事、異存はないか?」

 二人を見る雷鳴。

「大丈夫です」

「私も構わないわ」

 成行も見事も頷く。

「よかった。それでは、明日、宜しくお願いしますね」

 OKの返事を貰ったことで安堵の表情をみせる立夏。彼女はソファーから立ち上がる。

「じゃあ、これで失礼しますね」

 静所家を去ろうとする立夏。

「待って!」

 帰り支度をする立夏を引き留める成行。

「帰るなら、途中まで一緒に行くよ」

 時刻は20時を回っている。どこへ帰るかわからないが、立夏に対して成行なりに気を利かせた。

「赤鬼さんだったら平気よ、成行君」

 そう言ったのは見事である。

「えっ?でも、周りは暗いし、一人で帰るのは―」

「普通の女の子ならね。でも、赤鬼さんに限っては、エスコートは不要。赤鬼さんを倒したかったら、海兵隊が二個大隊壊滅するのを覚悟しないと」

 珍しく軽口を叩く見事。そんな彼女を態度を見て、思わず首を傾げる成行。何があるのだ?そう思わずにいられない。

「そんな、見事さんたら。私なら二個連隊を相手にできますよ?」

 にこやかなに物騒なことを言ってみせる立夏。見事の軽口にお返しをした。


「では、岩濱君。確かに召喚状と所持品をお渡ししました。今夜はこれで」

 そう言って立夏はペコリとお辞儀して、静所家を後にした。

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