第4話

「のらびと」④


 ワッフルとインスタントコーヒー。

 今日の朝食は少し贅沢だ。朝の八時ーたまには早起きも良いものだ。って、体中の痛みで早く起きてしまっただけだがー。


 俺はこの事件の勝負に出ることにしたー。


 夜八時ー。

 香奈のマンションの前で待機している。


 短気等エンジンの懐かしい音が近付いてきた。

 香奈はなれた様子で車庫にバイクを停めた。

「香奈さん!ちょっと良いかい?」

香奈はビックリした様子でこっちを見た。

「…警察?」

「似たようなモノですよ」

「そうですか…中へどうぞ」

「いや、外で話しましょう」

俺はエビアンを渡して歩き出した。

 後に香奈もついてきた。

 予め調べておいた公園へ連れて行った。

 ベンチに座った。

「何で警察だと思ったんですか?」

「……」

月明かりに浮かぶ香奈の表情で事件に関わっているのを確信した。

「解らないことがあるんですよ」

「……」

「一人で三人を同時にどうやったんですか?」

「…それは…お兄ちゃんが一人狙って私も一人を狙って二人で撃ちました。そしてお兄ちゃんを撃ちました…」

「お兄ちゃんがいたんですか?」

「お兄ちゃんとは小さいときに生き別れました。お兄ちゃんは施設に入って私は養女に出されました」

「お兄ちゃんの名前は?」

「山田義彦です」

「山田はなぜ金本を殺したんですか?」

「中国人からお金がもらえると言ってました。私はお兄ちゃんを助けたかったんじゃなくて純子さんと子供を助けたかったんです。親と子供を引き裂きたくなかったんです。だから、お兄ちゃんを殺しました。純子さんに保険金が入る為に…」

「なるほど…やはりチャイナか…香奈さん、見逃してあげますよ」

「え?」

「その代わりにどっかでワッフル屋やってくださいよ。山田の女に保険金入ればどっかに一緒に逃げてワッフル屋やったらいいよ!ワッフルに面締め逃がしてあげますよ。俺はヤクザから雇われた探偵なんで警察じゃないですよ」

「前にワッフル買ってくれたお兄さん!」

「はい!…今から最低限の荷物を纏めて逃げなさいね!あと拳銃はどうしたんですか?」

「家にあります」

「それは俺にください」

「解りました」

香奈から拳銃を2丁受け取って、バイクで走り去る香奈を見送った。


「お疲れ様です!龍です」

「なんだよ!この遅くに!」

「解りました!リンのリストに金本さんが載っていて三人がそれを知って金本さんを殺しました。でも、三人はプロに消されたものです」

「どうやってわかった?」

「リンに会いに行ったら奴等にボコボコにやられて“首を突っ込むな”と脅されて確信しました」

「怪我は?」

「ボコボコなので帰ってしばらく休みます」

「安静にしろよ!残りの金は持って行ってやるからな!」

「ありがとうございます!」

俺はエビアンを飲みながらシャッターの降りたアーケード街を高円寺駅へ歩いた。夜空にはお月様が笑ってる。


 青空が広がる山間の農道沿いに“ワッフル”の幟が立っていて小さなお店がオープンした。若い店長と赤ちゃんとお母さんの三人で切り盛りしている。


おわり

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のらびと 門前払 勝無 @kaburemono

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