第3話

「のらびと」③


 岸本香奈ー。

 吉祥寺のワッフル屋で働いている。趣味はバイクー。そして自販機でよくエビアンを買っている。


 ここまで解ったが、香奈が今回の事件に絡んでいるかは解らない。インスタントコーヒーを飲みながら考える。


 一ヶ月前ー。

「香奈!」

「お兄ちゃん!」

山田が香奈に近付いた。

 二人は焼き鳥の煙がわんわんしているいせやに入り焼き鳥とビールを頼んで乾杯した。

「これあげる!うちの店のワッフル」

「お!うまそうじゃん!帰ったら純子と食べるよ」

「純子さんは子供は順調?」

「まぁな!春に産まれる」

「お兄ちゃん…今の仕事は続けるの?」

「俺はこれしか無いんだよ」

「純子さんと子供が可哀想だよ…」

「解ってる…今一発逆転の仕事をやろうとしてるんだ!それが終わったら抜けようと思ってるよ!そしたら純子と子供連れて田舎へ帰る!」

「よかった!私に出来ることがあったら協力するからね!そうだ!保険には入ったの?何かあった時のために前に言っておいたやつ!」

「おう!すぐに入ったよ」

「良かった!」

香奈と山田は再び乾杯した。


 俺はなんとなく吉祥寺へ行って駅構内にある香奈の店のワッフルを買って食べながら井の頭公園へ行ったーが、香奈の店のワッフルはめちゃくちゃうまかった。香ばしい香りと程よく溶けた砂糖がシャキシャキしていて生地は歯切れの良いしっとり感、何かを考えながらと思ったがワッフルに気を持って行かれた。


「おつかれっす!龍です」

「おう!何かわかったか?」

「三人をやったのは一人です。警察は抗争とは思ってないからガサ入れたりしないと思います」

「なるほど!だからデコ達はなんもしてこないのか、本部にも報告しておくわ!しかし、同時に三人をやるなんて大陸のプロか?」

「解らないです」

「まぁ引き続き頼むわ!」

「解りました!あとデコスケが月末に顔出すと言っていました」

「チッ」

昭島は舌打ちして電話を切った。金本組も森本組も同じ傘下で仲も悪くないー。

 

 ワッフルがあまりにも美味かったから帰りにも香奈の店に寄ってしまった。

「お姉さんこのワッフル美味しいね!」

「ありがとうございます!鉄板を特注でベルギーから仕入れてるんです!」

「へぇ!凄いね!また買いに来ますね」

「ありがとうございます!お待ちしております!」

香奈は小柄で可愛らしかった。俺はワッフルを十個もかってしまった…。


 俺は落合の韓国式マッサージ店へ行った。

「店長!孫さんいますか?」

「龍ちゃん、ちょっと待ってね」

奥からデブが出てきた。

「久しぶりね!」

「どうもです!リンさんに会いたいんですが…」

「金本さんの事を調べてるの?」

「はい…」

「誰からの仕事?」

「ごめんなさい!言えないです」

「何でリンさんに会いたいの?」

「金本さんが的になってるのか知りたかったんです」

「龍ちゃんは知らなくて良いよ!帰りな!」

「…解りました。ありがとうございます!」

「気をつけてね!」

俺は店を出てすぐに付けられてるのに気付いた。神田川沿いを走ったが三人の中国人達に追われた。

 下落合駅につくまえに捕まってしまった。三人は何も言わずに襲いかかってきて袋叩きにされた。三人とも格闘技をやっているのか全く刃が立たなくコテンパンにぶっ飛ばされた。

「お兄さん!知らなくて良いこともあるんだよ。次は殺すからな」

三人は去った。

 神田川の柵に寄り掛かりながら桜の芽吹きを見上げた。

「もうすぐ咲くなぁ」


 金本が中国人達の殺害リストに載っていて賞金が掛けられてるとしたら、三人がそれを狙っていたのかも知れないー。

 殺された三人と香奈が何か繫がっていたら…。


つづく

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