第10話:凡ミス
「大変でございます、ヒルダ嬢。
グロリア夫人とヘーゼル嬢が逃げ出したそうでございます」
あら、あら、あら、意外と思い切りがいいのですね。
もっと王妃の座やサヴィル公爵家夫人の地位に拘ると思っていました。
もしかしたらバニングス王国のピーター王が知恵を授けたのかもしれません。
まあ、どちらにしても大した差はありません。
メクスバラ王国が罪人として告発すれば大陸中で恥をかくだけです。
バニングス王国は否定するでしょうが、独身時代の醜聞を知る王侯貴族達は我がメクスバラ王国の告発を信じてくれるでしょう。
「別に二人が逃げ出しても構いません。
バニングス王国に逃げても大恥をかくだけです。
それよりも各傭兵団や冒険者をしっかりと見張っていてください。
サヴィル公爵家はノーマン第三王子殿下を養嗣子に迎えるのです。
領民や耕作地に損害を与えて殿下の名誉を傷つける訳にはいかないのですよ」
「はあ、それは分かっているのですが、本当に大丈夫なのでしょうか」
「何か気になる事でもあるのですか。
気になる事があるのならすべて報告してください」
サヴィル公爵家に送った密偵達は冒険者ギルドでも特に優秀な密偵です。
私が気がつかない事に気がついている可能性もあります。
伝えられた情報は遠慮する事無く全て話してもらわないといけません。
「はい、でしたら遠慮せずに話させていただきます。
ヘーゼル嬢からは調べるように命じられていませんでしたが、普通なら動向が注目されるはずのサヴィル公爵閣下とオーウェン公子の事でございます。
現地の密偵達もお二人の事が気になっていたようす。
手隙の者に見張らせた報告によりますと、お二人ともグロリア夫人やヘーゼル嬢と一緒に逃げ出したという事でございますが、不要な情報だったでしょうか」
私が、私がバカでした。
グロリアとヘーゼルが自分達以外を大切にするとは思っていませんでした。
グロリアとヘーゼルに戦略を読むことができるとも思ってもいませんでした。
まあ、多分二人にはそのどちらも無いと思います。
その場その場で自分の欲望に忠実に生きるだけだと思います。
まず間違いなくピーター国王が裏で動いています。
ピーター国王は父をどう使う気でいるのでしょう。
いえ、どう使うかなんてわかりきっていますね。
父を使ってメクスバラ王家の非道を大陸中に訴える気ですね。
サヴィル公爵が妻や子供達と一緒にメクスバラ王家の非道を訴えるのですから、グロリアの過去の醜聞話も効果を失ってしまうかもしれません。
私の大失敗です。
ピーター国王の能力を低く見積もり過ぎていました。
だとすると一番の問題はピーター国王がオーウェンをどう扱うかです。
ピーター国王に私のオーウェンに対する愛情を見抜かれてしまっていたら、厳し戦いになってしまうかもしれません。
ここは自主規制していた能力を全開にしなければいけないかもしれません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます