第11話:ナサニエル国王の憂鬱・ノーマン視点

「これは、ヒルダ嬢の失敗なのか、それとも最初からの企みなのか」


 その真実が知りたいのは父王陛下ではなく私の方だ。

 もし企みだったとしたら、ヒルダ嬢は私も騙していたことになる。

 哀しい事だが、父王陛下の疑問は私にも完全否定する事はできない。

 だが他にやり方があったとも思えないから、ここはヒルダ嬢を庇うしかない。

 愛する女性だから問答無用で庇いたいが、下手な事を口にして父王陛下の猜疑心を刺激してしまったら、ヒルダ嬢が王家の敵に認定されてしまうからな。

 ここは慎重に正直に応えなければいけない。


「恐らく、失敗だったと思われます。

 ヒルダ嬢はピーター国王達の能力を低く見積もり過ぎていたのでしょう。

 ですが、他に方法があったとも思えません。

 以前にも話し合ったと思いますが、サヴィル公爵達を殺してしまっていたら、メクスバラ王家に対する非難はもっと強くなっていました。

 ここまで用意周到に逃亡の準備をしていたのですから、事前にサヴィル公爵とオーウェンを捕らえるのも難しかったと思われます。

 内戦が勃発しないように、ヒルダ嬢が独自で大軍を整え追い払った現況が最善の策だったと思われます」


「ふ~う、最善の策をとっても国内外の王侯貴族に猜疑の目で見られ陰口を叩かれるのか、腹立たしい限りだな」


「はい、腹立たしい限りでございます。

 しかしながらバニングス王国に内通していたサヴィル公爵家を取り戻し、完全な味方にできたのですから、結果よしではないでしょうか」


「ノーマン、お前は本当に分かっているのか。

 それとも分からないフリをしているのか。

 お前ほどの知恵者が分かっていないはずがないであろう。

 それで本当にいいのか、ノーマン」


「分かっております父王陛下。

 メクスバラ王家がサヴィル公爵家乗っ取りに加担していなかった、全てはバニングス王国の手先となったグロリアがサヴィル公爵家乗っ取ろうとしたのが原因。

 そう証明するためには、私がサヴィル公爵家に養嗣子に入るどころか、単なる婿としてヒルダ嬢と結婚する事もできなくなったという事は分かっております」


「分かっていてヒルダ嬢の企みではないと言うのだな」


「はい、何度考えても他にやりようがありません。

 父王陛下には何か他に策が思いつかれたのですか」


「……ない、ないからこそ何もできなくなり苛立っておる」


「ならば今後のヒルダ嬢の手腕を見守りませんか。

 今までの言動から、ヒルダ嬢がオーウェンを溺愛している事は間違いありません。

 必ずバニングス王国から救い出そうとするでしょう。

 その上で父王陛下にオーウェンの助命嘆願をするでしょう。

 その時にヒルダ嬢が出す条件を聞いてから全てを決められてはいかがですか」

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