第6話:騙し合い
「どこの村も貧しいですわね、殿下」
「ヒルダ嬢は何を基準に村が貧しいと言っているのかな。
私の知る限り、村の生活はどこもこの程度だと思いますよ。
村の貧しさはサヴィル公爵領も同じはずだよ
もし王家の統治が悪いと言っているのなら聞き捨てならないですね」
確かに王家直轄領とサヴィル公爵領は同じくらいの貧しさです。
ですが、私が資金を渡して開拓させた村々は豊かです。
前世の記憶でどうにかできる確証がなかったので、サヴィル公爵領ではなく自分で開拓村を作ってみたのだけれど、あまりにも簡単に成功したので拍子抜けしました。
だからやりようによっては王家直轄領もサヴィル公爵領も今より豊かにできます。
でも今はそのような問題ではないですね。
「別に王家の統治に文句があるわけではないのですよ、殿下。
たしかに殿下の言われる通り、サヴィル公爵領も同じくらい貧しいですわ。
ただやり方によったら、もう少しは豊かにできると確信しております」
「えらく自信満々ですが、何か証拠があるのですか」
「証拠もなにも、私の理論が正しいか開拓村を作って実験してみたのです。
開拓村での実績があるからこそ申しているのですわ」
「嘘はいけませんよ、ヒルダ嬢。
未開の森林や荒地を開拓するとなったら十年単位の時間がかかるのです。
それをヒルダ嬢がやったと言われても信じられませんよ。
だってヒルダ嬢はまだ十六歳ではありませんか。
それなのに開拓村で実績を作り出したと言われる。
いったいいつから開拓村を始められたと言われるのですか」
「八歳ですわ、八歳から始めて八年で実績が出ましたの。
だってわたくし天才ですもの」
王家に要求を通そうと思ったら、少々ハッタリも必要です。
私には大切にしなければいけないだけの価値があると思わせる必要があります。
単にサヴィル公爵家の血統というだけではいつ切り捨てられるか分かりません。
ノーマンが私に好意を抱いているなんてあやふやな事を当てにはできません。
私一人の事ならどうとでもなりますが、オーウェンに爵位を継がせたいとなると、確固たる力が必要になります。
「まさかとは思いますが、私にそれを見せるために独り旅を計画されたのですか。
私はまんまとヒルダ嬢の仕掛けた罠に飛び込んでしまった。
そういう事なのですね、ヒルダ嬢」
「そんな事はありませんわ、殿下。
私は本当に独り旅がしたかったのです。
今まで公爵令嬢としてできなかった事がたくさんあります。
その一つが自分の目でこの国の状態を確かめる事です。
ですが邪魔された時の事も考えておかなければなりません。
今の状態は私にとても不本意な状態なのです」
「ふぅううううう、そういう事にしておきましょう。
その方が私を心を平穏に保てますから」
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