第36話 フィン小隊入門1日目
「フィン中尉、本日より7日間よろしくお願いします」
机仕事が片付き、暇になったルーウェンはシェリに言われフィン小隊の訓練に参加する事となった。
ーー1時間前
「いいですか。何があってもフィン中尉の言うことは聞くように。くれぐれも頼みます」
シェリは心配そうに何度もルーウェンに念を押す。
「そんなに信用ないですか?」
「こういう時はわかりましたと一言いえばいいの。はい、返事は」
「わかりました」
無口な少女。ルーウェンのシェリへの第一印象。環境が変われば人も変わると言うがここまでと思わなかった。気がつけば子どものように扱われている。「命令違反をしないように」誰にでも守れる約束だった。
フィン中尉は40代でレオン大尉より年上になる。短髪で白色の髪が似合う中隊の父親的存在だ。190センチの見た目から武術が得意そうに見えるがからっきしで文官タイプらしい。
「ルーウェン少尉、剣術の腕を部下にみせてやってくれないか?」
「わかりました」
フィンはそう言うと1人の隊員を手招きして呼ぶ。前に出てきたのは大柄の男。見たところ、この隊で1番強そうだった。ルーウェンは剣の柄を握り合図を待つ。
「ルールは怪我をしない程度の攻撃に留めること。トッドは勝ったら酒を奢ってやる。全力で行け」
俺にはご褒美は頂けないのでしょうか。心の中でルーウェンは突っ込む。そんなことを考えている内にトッドは剣を構え向かってきた。
躱す、躱す、躱す。呼吸を整えトッドの動きを見極める。後ろに飛び間合いを開く。闘牛のようにトッドは再びルーウェン目掛けて斬りかかる。
調子がいい。今日は動きが視えている。ルーウェンは迫るトッドに飛び込みすれ違う。まだ剣は抜かない。
振り返り、今度はルーウェンから仕掛ける。一瞬の出来事だった。2人の距離は5メートルほど離れた位置にいたが瞬きをするほどの僅かな時間で距離を縮め、ルーウェンはトッドの首元に剣を触れさせた。
「そこまで!」
終了の掛け声とともに見ていた者から歓声が上がった。ご要望通りルーウェンは剣の腕を見せることに成功した。1ヶ月の特訓の成果、サラ直伝の一撃を無事披露する。
「参りました。噂で聞いていた通りの猛者ですね」
「ありがとう。成功させたのは初めてですよ。本家はもっと速い」
ほっとするルーウェンに一同は歓迎の態度を示す。よし、帰ったらサラに手紙を書こう。奮発してプレゼントも添えて。こうしてルーウェンは1日目を乗り切った。
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