第33話 新天地
こちらに来て、1週間が経過しているがルーウェンたちは毎日書類仕事に追われていた。レオン大尉率いるクオール守備中隊は、小隊長のクラン中尉、フィン中尉、ヨハネス少尉そしてメル中尉、副官にシェリ中尉という構成になっている。
小隊長のまとめ役のクラン中尉は人望が厚く、隊員からの人気が高い。女性であるクラン中尉がいる隊であればシェリやメルが突然上官になっても反発が少ないと考えて、今回の配属が決められたと思われる。
ルーウェンたちが着任するとレオン大尉は「あとは任せた」と山積みになった書類を託しどこかに行ってしまった。ルーウェンとイリアが目を通し、シェリにサインしてもらい書類を片付けていく。
あたふたするルーウェンをよそにイリアはテキパキと積まれた書類を仕分けする。シェリ中尉が護衛官に剣術がからっきしのイリアを連れていくことを不思議に思っていたルーウェンだったがすぐに納得がいった。現状、役に立っていないのはルーウェンの方である。
「もう駄目だ。疲れた」
「ルーウェンさん、まだ1時間しか経って無いです」
クォールに来てからずっと書類仕事なのでいい加減飽き飽きしている。
「少し休憩にしますか」
シェリは伸びをしてペンを置く。
「シェリ中尉はルーウェンに甘いです」
イリアは不満そうにシェリに訴える。
「私も疲れたのよ。イリアちゃん、コーヒーを淹れてくれる?」
シェリにそう言われては仕方がないので返事をして、イリアはコーヒーの準備をする。
「ルーウェンさんは机の上を片付けるです」
机に突っ伏しているだけのルーウェンに指示をだした。
「イリアが居てくれて良かったよ。シェリ中尉はこうなることを見越してイリアを連れて来たのですね」
「私は、イリアちゃんがこういうことに長けているなんて知らなかったわ。学年1位の成績とか、この間ルーウェンが言うまで知らなかったですし」
いったい、どういうつもりで2人を選んだのだろうか。シェリ中尉の考えは底が知れない。
「お待たせです」
「やっぱ、イリアのコーヒーは上手いな」
「ルーウェンさんには2度と頼まないです」
前にルーウェンが淹れたとき、豆をばら撒き、やりっぱなし、味が最悪でイリアは片付けに苦労したので根に持っている。いつも、メルに頼りきっていたのでルーウェンはなにも出来ない。
3人が休憩していると来客が訪れた。
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