第32話 旅立ち
シェリ先輩から誘いを受けてから1ヶ月が経った。今日は、最上級生とシェリの卒業式が行われている。
「エリスちゃん、ナーシャちゃん今までありがとう。手紙を必ず送るから」
「なんかあったら私にいいなよ。いつでも助けに行くから」
「シェリ……、シェリ元気でね。手紙待ってる。私も送るから……」
エリスは、目を真っ赤にして肩を震わせる。イメージ通りだった。シェリ先輩も泣くのかと思っていたが、案外落ち着いていた。
「ハルト、寂しくなるな」
「何言ってんだ。すぐ帰ってくるだろ」
「ケイ、ハルトを宜しくな」
「うん」
こういう時、サラは来ないものだと思っていたが来てくれていた。
「餞別よ」
ルーウェンの頬にキスする。当たり前のことのようにしてのけたことに周囲は驚いていた。ルーウェンの反応も自然だった。
「ありがとう。サラも元気でな」
「ずいぶんと仲良くなったものですね」
メルだってしたことが無い。ハーネルでの出来事をみなは知らない。
「では、そろそろ行きますか」
ここからシェリ先輩改め、上官のシェリ中尉になる。シェリ中尉の荷物をルーウェンは預かり4人はエスハイゼンに向け馬車に乗り込んだ。
「ルーウェン、サラと仲が良いですね」
先程のサラとルーウェンをシェリも気になるようだ。メルとイリアも気になっていたのでルーウェンをじっと見ている。
「妹のようなものですよ」
「以前にもしたことがあるように感じたです。私も妹だと言われてるです」
イリアも参戦してくる。
「姉の私がしても平気でしょうか?」
雲行きが怪しくなってきた。ルーウェンは心を許すと家族にしてしまう癖があることに気づいた。
「私は言われた事がありません」
シェリが更に話しを難しくする。シェリ先……シェリ中尉はするなら彼女なんだよな。もちろん、余計なことは言わない。笑顔でやり過ごすことにしよう。
「……」
「ルーウェン少尉、上官の質問には答える義務があります」
恐れていたことが起こる。一瞬にして、メルと立場が逆転した。しかもこれはパワハラだ。
「メル中尉は駄目です。上官や隊員とそのようなことは問題になる可能性があります」
とっさに機転を利かせ誤魔化す。ルーウェンは軍規を読んだことはない。メルも知らないだろう。
「サラさんの話しは終わってないです」
こういう時の女子の結束力は固い。弾が次々飛んでくる。ハーネルでサラの兄に乗せられて結婚式を挙げたことは何があっても口にしてはいけない。本当に結婚したわけじゃないし、サラの兄の歓迎のジョークだ。
3人に囲まれたエスハイゼンまでの道のりはルーウェンにとって死ぬほど長い旅になった。
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