第29話 休日4
ルーウェンは今、バージンロードを歩いている。教会には大勢の領民が訪れて2人を祝福している。ルーウェンは思った。どうして、こうなった。
「ーー変わらぬ愛を誓いますか?」
「誓います」
ここで、こう答えなければ領民の暴動が起きるかも知れない。諦めてルーウェンはこのまま身を任せることにした。
純白のドレスを着たサラは綺麗だった。フリルや大きなリボンが、まだ幼いサラに似合っていていい感じ。1日でここまでサラに合ったドレスを用意した職人さんには脱帽するけど、職人さんごめんなさい。本当は違うんだ。
「ーー変わらぬ愛を誓いますか?」
「誓います」
あ、サラも諦めたな。ずるずるとここまで来てしまった負い目もあるだろう。サラが本気になれば、ぶち壊すことは造作もない。
「では誓いのキスを」
やっぱ、あるよね。さすがにそこまでするのは悪いのでルーウェンはサラの顔の前にほっぺを差し出す。サラも安心したようで軽く済ませた。ルーウェンはサラに普段から妹と言っているので兄妹のスキンシップだと思えばお互い気にならないだろう。
フラワーシャワーをくぐり抜けサラはブーケを勢いよく投げる。なんだ、サラも楽しんでるじゃないか。記念写真を撮っている。この写真いつ使うのだろうか。あと、周りにいる人達、絶対偉い人だよな。領主のお遊びに付き合わされて大変だな。式も終わり、領民は帰って行った。誤解を解かなくて良いのだろうか。
「サラ、そのドレス似合ってるな。こんな機会で着せてしまって申し訳ない」
「いいわ。兄様の悪ふざけに乗ってくれたのだから。それに、案外楽しかったわ」
顔を見合わせてお互いの格好を笑った。似合っているが状況に流されて、なんて格好をしてるんだ。気が済むまで笑い、本当に結婚したわけではないが以前より仲が深まったように感じた。
「本当にするか?」
「そのくらいにしないと怒るわよ」
これまでにしておいた方がいいようだ。カタチとしてはルーウェンは振られたので少しショックを受ける。
「でもルーウェンは好きよ」
「うん、ありがと。俺もサラが好きだ」
お互いの好きは恋心ではないのはわかっている。今日は生涯の友と誓いを立てた日となった。
後日、式で撮った写真を兄はサラに送ったところ、運悪く父に見つかってサラは叱られたそうだ。サラには非がなかったが写真にはにっこり笑う2人がしっかり写っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます