第28話 休日3
モルヴェンの都市ハーネルにルーウェンとサラは来ていた。水の都と言われるだけあって道の至るところに水路が引かれている。中央にある噴水は装飾も凝り観光名所になっていて大勢の人で賑わっていた。
領主の娘のサラはここでは有名人で、すれ違う度に挨拶や声を掛けてくる人が多い。ルーウェンに取る態度と違い、領民には笑顔で話し掛け聖女のような振る舞いをしている。
「ずいぶんと違うんだな」
「なによ、変わらないわ」
ほら、いつものサラだ。領民に慕われて愛されてるようだが俺は騙されない。
「もうすぐで着くから我慢しなさい」
2人会話はいつもこんな感じで、ルーウェンにも悪いところがあるがお互いに気づいていない。約束したとはいえわざわざモルヴェンまで来るのだから仲が良いのは間違いない。でなければ、サラだって誘わないだろう。
「今日は妹に付き合ってくれてありがとう」
屋敷に着くと紳士な男性が出迎えてくれた。もちろん髪色は金色で領主名代のサラの兄だ。中に入るとまずは食事で、もてなしてくれた。やはり魚が多く採れるようで魚料理が沢山並んでいる。どれも絶品で中でも揚げたやつが特に気に入った。
「以前も来てくれたそうで、そのときは挨拶出来なくてすまない。それで2人はいつ式を挙げるんだ」
「お兄さん、突然なにを言い出すのですか? あ、このお兄さんと言うのは深い意味はなくてサラのお兄さんと言う意味です」
慌ててルーウェンは否定したが自分でも何を言っているのか分からなかった。
「兄様、この男はただの友人で私に埋め合わせの為、連れて来ただけです」
怒ってるのか照れてるのか区別がつかないが、いつもより早口だった。
「それでも、サラが友人を連れてくるのはルーウェンくん以外見た事がないからな」
「たまたまです」
「式がしばらく先なのは残念だけど楽しみにしてるよ」
そう言ってサラの兄は笑っていた。単に、サラをからかっていただけなんだろう。
「まったく兄様は。ルーウェンもちゃんと否定しなさい」
「兄様、サラを幸せにしてみせます」
からかっていると分かればルーウェンも乗ってみせる。サラは顔を真っ赤にしてぶつぶつとなにか呟いている。
「ルーウェンくん、分かってくれたか。そしたら式はどうする?」
「はい、明日にでも挙げましょう」
「わかった。すぐ用意させる」
手を叩き執事を呼ぶと式の準備を急ぐように伝えた。しまった、悪ノリが過ぎた。しかも、お兄さんの方が上手だ。ルーウェンはもう横に座るサラの顔が見れなかった。殺気がすごい。
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