第27話 休日2
ルーウェンは早起きをしていた。いつもは目を覚ますとメルが先に起きているが今日は違う。着替えを済ませ椅子に座り、本を読んでメルが起きるのを待つ。
「今日は早いですね」
メルは体を起こしボーっとしている。メルに朝食はどうするか聞いたが「ちょっと待って下さい」と言い、目を擦り、まだうとうとしている。10分くらいしてようやく立ち上がると支度をし始めた。
初めて見るメルの寝起きの様子はルーウェンには新鮮で新しい発見をしたと満足していた。ふむふむ、メルは朝が弱い。
準備が出来ると2人は1Fの食堂に降りた。メルは「ふふふ」と笑い、何も言わなかったが機嫌がいいのが見て取れた。
「この後、本屋に行かない?」
ルーウェンがそう話すとメルの眉毛がピクッと上がった。メルはルーウェンがあまり本を読まないことを知っている。
そう今朝、本を読んでいたのはメルの真似だ。いつもルーウェンが目を覚まし起きていくとメルは本を読んで待っている。今日はルーウェンがメルになり、メルをメルがルーウェンにしていることをしようと決めている。
「ルー様は読みたい本があるのですか」
「行ってから探すよ」
玩具屋の前の立ち止まりショーウィンドウのガラスに映る姿を見てメルは髪を直す。以前にも見た覚えのある光景。髪直しスポットなんだろう。
本屋に到着したルーウェンは困っていた。読みたい本がある訳でもなく、とりあえず今は新書コーナーを眺めている。横でどんな本を選ぶのか興味深そうに見ているメルの視線がルーウェンの状況をさらに悪くしていた。
もちろん、ルーウェンの様子にはメルは朝から気づいている。せっかくの機会なので触れずに泳がして楽しんでいた。もうしばらく楽しみたいメルは少し助け舟を出す。
「ルー様の好きなこのファンタジーの本はどうですか?私はこの王子様がドラゴンに食べられる話しが好きです」
ガオーと両手を上にあげ、メルはドラゴンの真似をして見せる。
「食べられるのはちょっと……」
メルの選んだ本を買い店を後にする。露店で足を止めアクセサリーを眺める。「なにか買おうか」とルーウェンは聞いてみたが胸につけているブローチを触り「大丈夫です」と断られた。
コーヒーを2つ買い、公園のベンチで休憩をする。
「メルはしたいことはない?」
「今、してもらってます」
まだ時間があるのでルーウェンは具体的なことを返して欲しかった。なかなか、上手くいかない。武器屋で剣を見るプランも考えたが、国有数の商家が剣術を好きな愛娘のために用意した剣を超えるものは買える気がしない。
小一時間ほど話しをして宿屋に帰ることにした。
部屋に戻り、ルーウェンは疲れたので風呂に入ることにした。髪を洗っているとメルが入って来た。
「私も入りますね」
ルーウェンは鍵を開け、途中だった泡のついた髪を流す。体を洗おうとスポンジを探していたらメルが先に持っていた。
「今日はありがとうございました」
メルはお礼をいい、ルーウェンの背中を洗う。
「たまにはいいだろ。今日は新しい発見もあったし俺としても満足してる。実は朝は弱いんだな。知らなかったよ」
「もう」と言って背中をパチパチと叩かれる。メルさん、手加減をして下さい。
「今度は俺がやるよ」
そう言って、体を洗い終わったルーウェンはメルの背中をゴシゴシと洗う。確か、前にケンカした以来だなと思い出していた。今日は満足出来たかな。こちらこそ、いつもありがとうございます。ルーウェンは口に出さなかったが心の中でいいながらメルの背中を流した。
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