第26話 休日
信頼口座の預入れが大事だと誰かが言っていた。大会でのルーウェンの働きは預入れを増やした相手もいるが、だいぶ使ってしまったようだ。
仲間、友人の要望にこれから応えていくため、しばらく忙しくなりそうだ。
ルーウェンは例のごとく公園で人を待っている。理由はないが待ち合わせ場所は決まってここを利用する。来る途中で買ったコーヒーを飲みながら待っているとエリスとナーシャがやって来た。
「お待たせ。後輩くん、今日はよろしくね」
ルーウェンを後輩くんと呼ぶのはエリスだ。顔合わせ以来そう呼ばれる。
「まずは靴を見に行きましょう」
そう言って歩き始めたがルーウェンには女の子が靴を買う場所を知らない。エリスに案内してもらい、目的の靴を買うお店に向かった。
「これエリスに似合いそうよ。ほら、履いてみて」
テンションの高いナーシャは次々と靴を選んで持ってくる。靴を履いては、これはここがどうだとか、色がどうのと1つ1つ慎重に選んでいる。いつも、メルの買ってくる靴を履いているルーウェンには不思議な光景だ。待っている間、ルーウェンは特にすることはなかったが楽しそうに選んでいる2人を見ていると自然と時間は気にならなかった。
「よかったら、2、3足くらいなら買いますよ」
なかなか決まらないエリスにルーウェンは助け舟を出してみた。以前のような、ルーウェンとお金の問題はすでに解決していて今ではある程度のお金をメルから持たされている。
「そういう問題じゃないのよ。気に入ったものを1つ買うからいいんじゃない」
粋なことを言う。実際、どうしても全部欲しければ自身で買うことだって出来る。
「じゃあ、このオレンジのものにするわ。お会計よろしくね」
珍しくエリスは、ルーウェンに笑顔を向け靴を渡す。世の中のプレゼントを贈る男性の気持ちが少しわかった気がした。
続いてやって来たのはファンシーな小物ショップ。可愛らしいものやキラキラなものが置かれていた。わちゃわちゃと2人でリボンを選んでいる。正直、ナーシャ先輩には店の雰囲気が合わないと思ったが、こないだの失神の件もあるので余計なことは言わない。
今度はすぐに決まったようだ。ナーシャ先輩も1つ選んでいて一緒に会計を済ませた。
最後に、ナーシャが選んだスイーツの店はいつものビュッフェの店だった。女性の店員さんは「いらっしゃいませ」の挨拶とルーウェンに対して会釈をした。顔を覚えられているようだ。
「今日はありがとね。あ、ちなみに約束を破ったことは最初から気にしてないから」
エリスとナーシャはそう言って顔を見合わせて笑っていた。後輩くんと遊ぶ口実が欲しかっただけでなんでも良かったみたいだ。楽しそうに話しながら帰る2人を見送ってルーウェンは宿屋に帰った。
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