第25話 後日談と日常
先日の大会での成績で昇進が決まった。士官候補生は卒業と同士に准尉になる。今回は准尉になったのち、同日に少尉に昇進という少しややこし話し。大会に一緒に参加した10人全員に約束された。
隊長のシェリ先輩には、さらに同日に中尉に昇進と勲章の授与があった。授与式にはシェリの両親が来ていたがシェリママは喜んでいたが、こういうこと疎いようで「あらあら」とあまりピンと来ていない様子だった。お母さん、娘さんの将来の出世は固く約束されたんですよ。
中でも、1番喜んだのがハール。正確にいうとハールの父。息子の昇進に鼻が高いらしくノートブルク領で本人不在のパーティーを開いたほどだ。いっても、士官学校に入学初年度で少尉昇進はなかなかある事ではない。噂を聞きつけ来客も普段の倍あり、婚姻話しも多数来たらしい。
ハールは今回の大会で俺はなにもしていないからと誇った様子はなく最初は不満げだったが、父を喜ばすことが出来たことは嬉しかったようで皆に感謝の言葉を伝えていた。
もちろん、現状はただの士官候補生なのでほかの生徒と同列に扱われる。
「シェリ先輩、そのバッチカッコいいですね」
「いいでしょ。あげないよ」
シェリの制服の胸あたりには獅子をモチーフにした勲章が付いている。
「あの時のシェリ先輩の決断は震えました」
「私はみんなを信じただけですよ。ルーウェンも頑張ってて素敵でした」
顔合わせの時に使った空き教室は今ではルーウェンたちのたまり場になっている。2人が話していると、そこに腕組みをしてサラが割って入ってきた。
「ルーウェン、忘れたとは言わせないわ」
メデューサのような瞳でルーウェンを見ている。サラが不機嫌なのはあれだ。2個小隊と交戦したとき、ルーウェンはメルとサラに部隊を被せた。身に覚えがしっかりとある。
「サラちゃん、肩をお揉みしましょうか?」
ご機嫌を伺いながら、ルーウェンはサラの小さな肩を揉む。あれだけの剣が使えるというのに体は柔らかく筋肉がついているように感じない。どこにそんなパワーが隠されているのか。
「うふぇっ、あんたどこ揉んでるのよ!」
「考え事をしていて、つい……」
考えながら揉んでいるうちに肩甲骨の下辺り、広背筋に手を置き背骨周りを押していた。やった本人が言うのもあれだがセクハラだ。
「ついって何よ!」
「誤解なんだ。シェリ先輩ならともかく、サラにそんなことする訳ないじゃないか」
口は災いの元とはよく言ったものでサラとシェリ先輩が真っ赤な顔をしてこっちを見ている。ヤバい。
次の瞬間、ルーウェンの視界がボヤけた。シェリ先輩が3人いる。チラッと映ったサラの表情は笑っているように見えた。サラっ、何をしたんだ。次第にルーウェンの意識は薄れていった。
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