第24話 終幕
「前進だ!前進っ!押せ!」
「相手に疲れが出始めている。左翼に攻撃を集中しろ」
「ダットの隊を休ませろ。代わりにニールの隊を回せ」
交戦し始めて2時間が過ぎようとしていた。両軍とも、すでに全軍を投入している。
ことのはじまりは、偵察に来ていたβ隊の隊員が、川で水を汲んでいる生徒を見つけたことからだった。
大会が始まってから数日が経過していたがなかなか戦闘する機会もなく、陣形を組む練習や雑務をこなす日々。いい加減、面白いことがないかと思っていたところに格好の獲物を見つけた。
軽くちょっかいをかけてやろうと攻撃した相手がたまたまγ隊の隊員だった。γ隊の隊員は始めこそ驚いて慌てたが対処が柔軟だった。後方に待機していた部隊に素早くコンタクトをとると反撃を仕掛けた。
ーーーβ隊本部テント
「誰が仕掛けたんだ、命令は出してないぞ」
「わかりません。すでに小隊同士の戦闘になってます。ひとまず増援をお願いします」
「経緯は後で聞かせてもらう。とりあえずキーランドの小隊を向かわせろ。こちらから仕掛けたのなら負ける訳にはいかない」
本部代わりに使っているテントの出入りが慌ただしい。命令を聞き、伝令役の生徒が走る。入れ違いに別の生徒が入ってくる。
「リンス隊が援護に向かわれました」
「待機の指示を出したはずだ。伝わってなかったのか」
情報を整理し各部隊に迅速に指示は出していた。しかし、士官候補生と言っても素人の集まり。先走る生徒や命令を聞かない生徒も多少混じっている。
一方が部隊を投入すれば相手方も黙っている訳はない。まして、手を出された側であれば怒り阻止してくる。
ーーーγ隊本部
「このまま思い通りにさせてたまるか」
「増員を確認しました。2個小隊の動きが見られます」
「こちらもあと2個小隊を出せ。ランド小隊もすぐ動けるよう準備するように伝えろ。卑怯者に思い知らせてやれ!」
戦闘から3時間を経過した頃には部隊と呼べるものはそこになかった。指揮をしていた生徒も戦場に駆り出され、各部隊はただただ目の前の敵に剣を振り倒す、それだけ。戦力は激しく削られて4分の1くらいになっていた。しかし、疲れ切った両軍に取って1番の災難がここにきて現れた。
「さあ、全軍で攻撃だ。複数の部隊が混じっているが気にしなくていい。いけっ、突撃だ!」
ルーウェンは剣を高く掲げ指示を出した。先程味方につけた小隊にメルやサラたちを編成した混成部隊で突撃を仕掛ける。相手方の戦力は倍あったが疲弊していることと指示系統が機能しない別々の部隊であったのであっさりと決着が着いた。
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