第21話 合言葉は正面突破!

 数日後、待ちに待った戦端がついに開かれた。γ隊の小隊が川で水を汲んでいるところ襲撃に合う。最初はここ数日でもあった小さなものだったが、援軍の到着で少し広がり、互いに負けずに戦力を投入するに連れて両軍は総動員するハメになり現在に至る。


「β隊とγ隊が交戦を始めました。シェリ先輩、どうしますか?」


「決まってるの。α隊に向かうわ」


 シェリ先輩の可愛い声にルーウェンはちゃちゃを入れたかったが状況を考え大人しく準備をする。α隊が相手という事はイリアの正面突破作戦の出番だ。


 荷物は戦闘に必要なもの以外はテントに残した。野戦糧食だけは色んな意味で得意分野であるケイに運んでもらう。片手には大会に間に合うように拵えた大剣が持たれ、よく平気な顔で歩けるなとルーウェンは感心していた。ぜったい重い。


「イリア、先陣は任せたよ。正面からレッツゴー!」


 α隊の待つ平地を案内するためルーウェンとイリアは先頭を歩く。


「あれはルーウェンさんに乗っただけです」


 サラは前を歩く2人の緊張感の無さに呆れていた。大会に参加して数日、ルーウェンはイリアの相手ばかりしていりる。じっと見ていたサラにルーウェンは気付く。


「穴が開くだろ」


「なによ。もうすぐ、そうなるわ」


「縁起でもない。こっち来なよ」


「遠慮するわ」


「サラちゃんは私のよ」


 素直じゃないサラに堪らずメルが抱きつく。こういう時のメルの察知能力は高い。


 この小隊で1番緊張しているのはハールだった。ハー殿とおだてられ作戦参謀にもなった。これから行う作戦は正面突破。作戦もへったくれもない。しかし、問題なのは強くないハールが前線に出なきゃいけないことだ。


 ハールだって弱くない。1対1ならある程度はやれる。この小隊は一騎当千の集まりで基準がおかしい。分散するとそこに1人割かなければならないので、守りながら戦う方がいいとなりハールも行くことになった。恐怖なのか緊張なのかわからない震えが襲う。イリアだって前線でやるんだ落ち着けハール。自分に言い聞かす。


 あっという間にα隊の待つ平地に着いた。α隊は普通に生活していたがこちらの姿に気がつくと直ぐに隊列を組んだ。横一線に並び10人は歩く。目の前には140人ほどの中隊が待ち構える。ハールは震えが止まっていることに気づいた。


「ハリス小隊突撃!」


 その合図と共にメルとサラは走り出した。

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