第20話 ナーシャ
食事が終わるとルーウェンは再度偵察に行くこととなった。シェリ先輩は腹を括ってくれた。ルーウェンはそれに応えなければいけない。
山を登り、辺りを見回す。大隊規模の人が集まっているので見つけるのは簡単だった。ルーウェンが想像した通り3つの大隊が確認出来る。
平地にテントを張り堂々と構えている仮にα隊。見通しが良いので奇襲するのは難しそうだ。
林の中で川を背にテントを張る仮にβ隊。水深はどのくらいなのだろうか。それによって攻め方が変わる。
洞窟から何人もの人が出入りをしている。こちらが仮にγ隊と踏んでよいだろう。
この中からどこかの陣営と交えることになる。シェリ先輩の作戦だとこちらで選ぶのではなく戦端が開いたとき空いている部隊になる。こちらの人数を悟られたくないので平地の部隊とはやりたくないものだ。
「イリアならどこがいい?」
「林の部隊なら島国で昔使われていた戦法が試せるのです」
「釣り野伏せだろ。人員不足だし自軍の被害も凄かったって話しだけど」
「提案しただけです」
苦笑いをしてイリアは首を横に振る。
「平地の部隊に正面から挑むです」
「それカッコいいな。一番槍はイリアに譲るよ」
「任せるです。ルーウェンさんは昼寝でもしてるです」
張った胸に拳をポンと当て勇ましくイリアは言った。ルーウェンは「任せた」とイリアの頭を撫でる。本当にそんなことは出来ない。あくまで冗談だ。
偵察が終わりテントに戻るとナーシャ先輩が待っていた。
「おかえり。具合はどうだった?」
「まだ交戦している部隊はありませんでした。初日ということもあり、どこも様子を伺っているのでしょう」
100人を超える人員を動かすのは上級生といっても機会が少ないこともあり、まだまだ経験が足りない。この分だと明日以降になりそうだ。
「気楽に参加したけどこんな事になるなんてね。面白そうだからいいけどね」
シェリ先輩はナーシャ先輩も強いと言っていたがどれほどのものなんだろう。
「先輩はエリス先輩と違って楽しそうですね」
「私はエリスと違って楽天的だから。それにあなたたち強いんでしょ」
「僕たち以外っていうのが正しいですが」
イリアも横で頷いている。
「なにいってるの。シェリがあれだけやる気なのは初めて見たわ。だから頑張りなさい、後輩くん」
ナーシャはルーウェンの背中をポンポンと叩く。結成以来、ナーシャ先輩とまともに会話するのは初めてだったがルーウェンの思う先輩像はこれだと感じた。
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