第19話 大会はじまる

「……やられた」


 草むらの陰からルーウェンはほかの小隊を偵察していた。


「数はわからないですがいっぱいです」


 ルーウェンの背中からイリアがそれを眺めている。目の前にいるのは100人以上の生徒。この合同大会に始め参加するルーウェンたちが知らない大会の真の姿である。


「一度戻って作戦を立てるです」


 ルーウェンとイリアはシェリたちのいる林に戻ることにした。


 この大会では小隊を編成した後、中隊になり戦闘を行う。わざわざ軍から視察がくる大会だけあって実戦さながらの中隊のぶつかり合いが見れる代物になっている。1年生で仕組みを知らなくても自然に勧誘されるので気づくはずだったが最初の誘いを断ったためこの様な事態になった。


「全員がその限りじゃないし、去年も大隊に参加しなかったわ。上級生とか怖いでしょ」


 本隊に戻ったルーウェンはエリスから話しを聞いた。


「これからどうしますか?」


 生徒の人数からして140人ほどの中隊が3つ出来ていると想像する。


「中隊1つくらいなら相手出来るんじゃない?」


 メルは気軽に答える。様子からして本気でそう思っているだろう。


「中隊に合流するのはどうでしょうか?」


 こういう時のケイは真っ当な意見を出してくれる。よし、その線で行こう。


「いい機会じゃない。相手してあげるわ」


 サラちゃん、ここは大人しくしていてね。


「俺はどっちでもいいぜ。ルーウェンに任せる」


 協調性のあるハルトはどちらでもいいみたいだ。これで意見も纏まったようだし適当な部隊に合流しよう。


「じゃあ……」


「待って、一戦交えてダメだったら合流にしましょ」


 ルーウェンが切り出そうとしたがシェリに割り込まれた。どうやら、やる気いっぱいのようだ。


「仮にα隊、β隊、γ隊として、α隊とβ隊が交戦している時なら邪魔されずにγ隊とやれる。エリスちゃんとナーシャちゃんは自分では言わないけど強いの、信頼してる」


 エリス先輩は嫌がると思ったがシェリにそう言われ満更では無いようだった。


「先にお昼にするわよ」


 照れながらエリスは食事の支度を始めた。肯定と受け取っていいのだろう。


「私も手伝います」


 メルがそう言うと「私も」とイリアは続いた。話しは決着したようだ。ルーウェンにもともと権限はなく、小隊長のシェリが決めたのだから決定事項である。この食事が終われば10人VS中隊の戦いが始まる。

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