第16話 メンバー

「あいつだろ。見た目は普通だな」


「俺でも倒せるんじゃねぇ」


 今日は知らない生徒とよく目が合う。ひそひそと話してい内容もどうやら自分のことを言われているようだ。しかし、ルーウェンに心当たりは無かった。


「なにか俺はやらかしたのか?」


 教室に入り隣りの席のサラに開口一番に文句言う。


「あら、おはよう。知らないわ」


 サラは相手をせずあっさり流す。


「今日はなにかと噂されているような視線を感じる」


「地味なルーウェンが?ふふ、気のせいよ」


 普通、地味、だからどうした。ルーウェンの機嫌はすこぶる悪い。


「ルー様は素敵ですよ。気づいてないだけです」


 横にいたメルがフォローする。メルはルーウェンのことを贔屓目で見ているので当てにはならない。


「今日は一段と機嫌が悪いな」


「ふん、地味で普通で悪かったな」


 ハルトにも八つ当たりで返す。言われたハルトには意味がわかって無かったが笑って流した。始業の鐘が鳴りマリーが教室に入ってきた。


「1ヶ月後に全学年合同の大会が開かれる。それまでに各自小隊を編成し、この紙を教師に提出するように。軍の上層部も視察に来る。ベストを尽くせ」


 マリーはそう説明すると用紙を配った。話しが終わり空き時間になるとルーウェンの席に人だかりが出来た。


「ルーウェン、俺を入れてくれ」


「待ってよ。僕だって入りたい」


 入学以来、話しをしたことのない連中もこぞってアピールしてきた。メルやサラがルーウェンの小隊に入ると思い1番頼みやすそうなルーウェンの所に来ているのはわかっている。そう、俺目的ではない。


「よっ、人気者」


 ハルトは面白がってルーウェンをからかう。


「今朝の視線はこれが理由だったんだな」


「で、親友殿は誰を入れるんだ?」


「やけに下からだな。ハルトなら自分で集めてもいい小隊が組めるだろ?」


「上級生もいるし誰だって勝ち船に乗りたいだろ」


「うんうん。ようやく俺の力に気づいてくれたんだな。嬉しいよ」


 ハルトは自分のために媚びを売る男ではない。多分ケイのためなんだろう。さて、だれをいれたものか。


 ルーウェンの性格からして最初に頼むのはこの人だろう。そうハールだ。


「ハール、俺と組んでくれないか?」


 驚いた顔でこっちを見る。


「俺でいいのか?ほかにもっといるだろ」


 入学当初はもっと偉そうなやつだと思っていたが話しをしてみると謙虚な男だ。貴族の息子とルーウェンが色眼鏡で見ていたのだろう。


「ハー殿、俺とお前の仲じゃないか」


「よくわからんがルーウェンがいいなら喜んで入れてもらう」


 1位指名は無事獲得出来た。


「私が最初じゃないのですね」


 不満そうにしていたのはメル。自分が最初に誘われると期待していた。


「メルは入ってくれないのか?」


「ルー様以外のどの小隊に入ると言うのです」


「ありがとう。期待してるよ」


 これでメルとハールは確定か。ハルトとケイも話しの流れからして大丈夫だろう。


「私はどうするのです」


「可愛い妹を入れない訳がない」


「妹じゃないですがお願いします」


 妹になるのは断られたがイリアも決まった。これで7人だ。あとはシェリ先輩を誘って上級生のお力を借りるとしよう。こうして、概ね小隊の人員は決まった。

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