第15話 シェリ
ルーウェンはシェリを尾行していた。シェリとは昼食を食べるとき以外接する機会がなく、以前買い物を付き合ってもらったことはあるが謎の大き女性だ。
ケイのことや最近ルーウェンは女性をよく追っかけているなと思いながらも好奇心を抑えられない。メルに見つかったらまた「やっぱり年上好きですね」とからかわれる姿が目に浮かぶ。
「ルーウェンさん何をしているのです?」
ルーウェンは驚いて後ろを振り返る。
「イリアか」
「イリアかじゃないです。何をしているのです」
「シェリ先輩の生態を探ってるんだ」
「ルーウェンさん、見ていてとても怪しいです。捕まって知らないです」
イリアはそんなことをいいながらも興味があるようで付いてきた。
「普通に帰宅しているようです」
「そうだな。まだ油断は許されない」
イリアはルーウェンのいっている意味は分からなかったが「長丁場になるです」と乗っかった。
「ショーウィンドウを眺めているです」
実況をイリアがする。ぬいぐるみが興味があるのか。見た目通りだな。少し眺めたあとガラスに映って姿を見て髪を直していた。
「本屋に入ったです」
なにか買ったようだ。タイトルが確認出来なかったことが悔やまれる。
今度は公園のベンチに座り先程買った本を読みだした。実はシェリはルーウェンたちが付けていることに気づいていた。本を読むふりをして2人の様子を逆に観察する。
「イリア、もっと右に寄ってくれ」
「嫌です。」
植樹帯の木に隠れなからルーウェンとイリアははみ出さないようお互いを押し出す。シェリはあれで気づかれないと本気で思ってそうな2人が可笑しくて本で顔を隠しながら笑う。
「あっ、シェリ先輩がいないです」
「お前が邪魔するからだ」
「ルーウェンさんのせいです」
言い争う2人の後ろから「バレてますよ」と突然声が聞こえた。
ルーウェンとイリアはシェリに謝りつつ「イリアが……」「ルーウェンさんが……」と責任を押し付けてあっていた。
そんな2人を見かねてシェリは「家に来ますか?」と誘った。
シェリママに会釈をして家を上がる。シェリママはお姉さんかと思うほど若く見え綺麗な人だった。
部屋を案内され落ち着かない様子でルーウェンとイリアが座っているとシェリは紅茶を持って戻ってきた。ドアからシェリママが覗こうとしていたがシェリは細い腕で必死にシェリママを追い返した。シェリが友人を連れて来ることは珍しく、しかも男の子もいるものだからシェリママは気になって仕方がなかった。
「お父さんに報告ね」
シェリママは一言告げ諦めて去っていった。シェリは「母がすみません」と頬を赤らめて謝る。
出会った当初声が小さくてシェリの声が聞き取れ無かったが気がついてみたら普通に話せていた。だいぶ仲良くなれたな。
「それでどうだったのですか?」
シェリは尋ねた。
「ぬいぐるみと本が好きなことがわかったよ。これだけあるなら最初から部屋に連れて来てもらえば早かったけど」
開き直るルーウェンにシェリは「ばか」と怒っていたが可愛らしかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます