第13話 ケイ

 授業を受けながらルーウェンはケイに目がいっていた。先日から気になっていたケイの特技についてハルトの言う様に観察していた。


「ルー様、思春期ちゃんですね。ケイの胸に目がいっちゃって。知ってるんですよ。ルー様は年上好きなんでしょ」


 いつものようにメルから突っ込みが入る。濡れ衣だよ。先輩と買い物に行った一件からルーウェンは年上好きと決めてかかっている。


「メルも年上だな」


 話しを逸らすためにメルにいい返す。「私は姉だから」とあたふたしながら照れている。お互いに恋愛のような感情はないけれど少しは男として見てくれていることにルーウェンは嬉しかった。


「こないだケイの得意なことをハルトに聞いたら見てたら分かると言われて」


「なるほど。見てたら分かりますよ」


「だから見てたんだ」


 そうしてルーウェンはメルとケイを観察する日とした。


「いつもと変わらないな」


 授業後に資料を運ぶケイ。備品の防具を整理するケイ。ゴミ箱のゴミを焼却炉に捨てに行くケイ。あれじゃ雑用係だ。それにしてもよく働く。


「そうですよ。優しいケイはいつもみんなのためにこうやって準備や片付けをしてくれているんですよ」


 そうか。優しさを人一倍持った女性なんだな。いや、そうじゃない。確かに素晴らしいことだけど。納得するところだった。


 情報を整理する。「大食い、眼鏡、巨乳、年上、優しい。ルー様好みですね」メルの邪魔が入った。カンの鈍いルーウェンでもようやく気づいたようだ。


 ルーウェンが観察している間、1度も息を切らす様子もなく涼し顔で作業していた。よく考えたらあの量の物をいっぺんに運べない。力と体力が半端ない。


 関係あるかはわからないが大食いなのはやたらと普段使っているカロリーを補うためなのかもしれない。


 剣術はあまり得意そうに見えなかったが大剣とか軽々と振り回したり出来たらヤバいな。実は素手の方が強いとか。ケイの未知の力にルーウェンは寒気がした。


「わかったろ」


 1日ケイを観察していたルーウェンにハルトは声を掛けた。


「実はハルトより強いんじゃないか?」


「今は俺の方が強いな」


 嬉しそうに笑うハルトを見てケイと仲がいいんだなと改めて感じた。

 

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