第10話 先輩
ルーウェンは昼食を食べに食堂に来ていた。向かいに座るメルとイリアの他に隣りには1つ学年が上の先輩の名前はまだ知らないが座って食事を共にしている。最近はこのメンバーだ。というのも先日とあることをきっかけに仲良く?なった。
ルーウェンは決まって日替わり定食を注文する。券売機に並び順番を待っていると前に選んでいた生徒が困っていることに気づいた。水色のショートカットの少女。バッジに線が2つ入っているので先輩なんだろう。
手に持っている食券を覗いて見ると激辛で有名な麻婆飯と書かれていた。勇敢な生徒がいるものだと納得しようとも思ったが困っているのに最初から気づいているのでルーウェンは声をかけることにした。
「よかったら交換しましょうか?」
「……」
券売機のボタンを差し少女にどれがいいか尋ねた。
「……」
A定食を選ぶ。1つ上のやつね。押し間違えたのだろう。
「あ……」
たぶんお礼を言われたんだな。「どういたしまして」とルーウェンは答える。
麻婆飯を受け取りメルたちの待つテーブルに向かった。
「ルー様、後ろの女性はどなたですか?」
券売機の少女はついてきたようだ。うつむきルーウェンが座るのを待っていた。奥ゆかしい子だ。とりあえず席に座ると少女も横に座った。
「さっき券売機で一緒になった」
「ルー様が違うのを選ぶなんてめずらしいですね」
テーブルに置いた麻婆飯を見てメルが言った。
「少々理由があってな」
「まぁいいですけど」
「……」
少女は何かフォローをしてくれようとしたのかな。早速噂の麻婆飯に箸を伸ばす。
「辛っ!!!」
噂通りの辛さだった。耳の奥や毛穴が痛い。
「……」
少女は水の入ったコップを渡してくれた。なるほど、そういう訳か。心配してついてきてくれたんだな。
「ありがとうございます」とルーウェンはいい、少女からコップを受け取る。
「あら、妬けるわね」
メルがなんか言っているがそれどころではない。水を飲み干しルーウェンは半ばヤケになりもう一口。意外と悪くない。癖になる味だ。
途中で水が欲しくなり箸を止めると横からすうっと水が出てきた。用意してくれたんだね先輩。ルーウェンの食事が終わるのを待ち少女は食堂を離れた。
そして現在にいたる。ずいぶんと懐かれたものだ。名前くらい聞けるといいのにな。ルーウェンは麻婆飯を食べながら少女を見ていた。視線に気づいた少女は水の入ったコップをこちらに近づけた。
「ありがとうございます、先輩」
ルーウェンは水が欲しかったわけではなかったが喜んでコップを受け取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます