第9話 2日目

「ひぃ、プリンスキラー……」


 救護テントにいる生徒はルーウェンを除き同じく人物にやられたようだ。うなされる生徒たちはみな同じ言葉を口にする。メルは一体なにをしたんだ。


 午後になり身体も動かせるようになったので外に出た。所々痛い箇所もあるが数十キロあるリュックを背負っていた昨日と比べると身体が軽い。


「ルーウェン、大丈夫か」


 そこにいたハルトに声をかけられた。


「だれのせいだよ。戦況はどうなってる?」


「ほとんどの隊は戻って来てるよ。後はハールとイリアの隊だけだ」


 活動出来る範囲が昨日より狭くなった今日は戦闘が加速していた。10人の小隊となると個人の力が戦闘に占める割合が大きい。


 2部隊になった今、メルとサラのどちらが強いかその1点である。サラの念願もようやく叶う機会が出来たんだなとルーウェンは微笑ましかった。稽古で何度もやられてきたルーウェンはメルには悪いがサラに期待している。


「ハルトなら2人に勝てるのか?」


 ふと疑問に思いハルトに聞いてみた。


「どうだろな。腕自慢でここに入学したが世界は広いな」


 要するに2人のが強いと言うことか。


「ハルトも十分強いよ。ほら」


 身体に巻かれている包帯を見せる。ハルトは「ありがとな」と言って笑っていた。


 最後の2部隊が帰って来て訓練は終了した。帰り道ハール小隊の一員であるルーウェンはサラの横になった。どうなったか知りたかったが不機嫌そうなサラに聞きづらかったのでよしよしと頭を撫でて諦めた。


 宿屋に戻り風呂に入っているとメルが後からやって来た。


「私も汗を流したかったのよ。痛そうね」


 最近メルは遠慮が無くなってきた気がする。王子とも男とも見られて無いのだろう。


「サラとはどうだったんだ?」


 気になっていた質問をぶつける。


「最後2部隊になってイリアちゃんの作戦通り真っ先にハールを倒したのよ。それだけ」


 サラの念願は叶わなかったのか。通りで不機嫌なはず。イリアもサラの気持ちを知っているのになかなかの選択をするんだな。私情は入れないということか。


 冷酷冷徹指揮官イリアを想像をする。雪原が似合いそう。あと背丈があれば様になるな。

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