夏休み

何をしよう

「キーンコーンカーンコーン」

通知表や宿題等を渡されて1学期が終了した。

私は優姫に声をかけて今日、高校野球の試合あるみたいだけど一緒に観に行かない?

優姫はうん、いいよ。東京都大会の試合を観に行くの?それとも神奈川県大会の試合を観に行くの?

私はウチの高校、いつ出るのかな?

優姫はねぇ、萌恋周りを見渡してごらん。

分かった。私は周りを見ていつもと同じ光景だよ、

じゃあウチの学校の名前は?

「鎌谷女子高校」今さら何言ってるのと笑いながら答えた。

その通りだよ。萌恋、この学校のどこに男の子がいるの。女子校に男の子がいるわけないでしょ。

私はまぁまぁそんなに興奮しないで。それで東京都大会行く?神奈川県大会行く?

「ふぅー」とため息をついてホント萌恋といると飽きないよ。東京都大会に行くからやっているこの近くにある球場に探しておいて。

私はスマホで「高校野球 東京都夏の大会」と検索をすると谷丘球場で試合が行われることが分かり、早速2人で向かった。

電車とバスを乗り継いで最後の第4試合が始まる前に球場に着いた。都立谷丘北高校対私立谷丘実業高校の試合が行われることになっている。

谷丘実業高校は常に都大会ベスト8と成績を残している強豪校で下馬評では谷丘実業高校が勝つと思われている。

私たちはそうとは知らず、球場の上段にある日陰で試合を観ていた。観客数は全然違った。

谷丘北高校は高校の生徒、吹奏楽部、親御さんが来ている一方、谷丘実業高校は違った。

吹奏楽部、チアリーダー、席が埋まる程の人が座っていて何も知らない私たちでも谷丘実業高校は強豪校なのかなと思い、試合時間まで待っていた。

試合開始のサイレンが鳴り、どのような試合になるのか楽しみにしていた。試合開始から2時間、試合が終わった。

3対1で谷丘北高校が勝利した。谷丘実業高校の方を見ると選手だけでなくチアリーダーたちが泣いている姿を見て選手たちがこの試合に向けてどれだけ頑張ってきたのかと思うと私は涙が出てきた。

萌恋、泣いている?谷丘実業のファンだったの?

いや、そういう訳ではなくて同い年の子たちが1つの白球を追いかけて試合に勝つ。そのためにこの3年間どれだけの厳しい練習をして頑張ってきたのかなと考えたら何だか涙が出てきてさ……。

萌恋ってすぐに感情移入する所あるよね……。

じゃあ優姫はこの試合を観て感動しなかった?

そりゃあ、私も試合観て感動したしいい試合だったなって思うよ。でもね、シーズン通して戦うプロ野球と違って高校野球はトーナメントで負けたらそこで終わり。そうやって地区大会を勝ち抜いて優勝したチームが全国大会の土を踏むことが出来るからね。だからこそ高校野球は面白い。強いチームが勝つわけじゃなくて勝ったチームが強いっていう人がいるからね。

私は優姫の言葉を聞いてトーナメントだからこそその1試合しかないからこそ感動するのかなと感じた。

優姫は私にそう伝えて球場を後にした。

「ぐぅ〜」優姫は顔を赤くして萌恋、何か食べたいからどこかよってもいい?

私は優姫、顔を赤くしてかわいい、お昼ご飯食べずにそのまま球場に来たからね。何か食べに行こうか。優姫は何が食べたい?

しばらく歩いて美味しそうなものがあれば食べよう。この辺り始めて来るし散策しようよ。

2人でしばらく歩いていると谷丘商店街を見つけた。

私は谷丘商店街か……。ねぇ優姫、商店街で食べ歩きするっていうのはどうかな?

萌恋はホント商店街が好きだね。何かここだけの名物があるかもしれないね。

そこが商店街の魅力だよ。チェーン店がありつつもその商店街に行かなきゃ食べられないものや雑貨屋等探すのがまるで宝探しみたいでさ。私もお腹空いているし何か食べようよ。

優姫はある看板を見つけた。

「谷丘商店街名物カツカレー」

私はスマホを見た。午後3時、カツカレーを食べるには少しお腹に重い。ねぇ、優姫どうする?

優姫はカレー屋の看板を見つめて何を食べようかと悩んでいた。萌恋、なにカレーにする?

この時私は悟った。午後3時でも関係ない。名物な物があれば時間を気にせず食べるのは完全に私のせいかな。優姫に何か悪影響を与えてしまったのか考えていた。

萌恋、固まってどうしたの?

私は今、午後3時だけど重たくないかなって。

優姫はお昼ご飯食べてないからカレー食べようよ。メニューはとりあえず後で決めよう。優姫は有無言わずにお店に入った。

優姫 は名物カツカレー食べるけれど萌恋は何頼む?

そうだね……。じゃあ海鮮カレーにしようかな。いつものようにシェアしてもらってもいい?

勿論だよ。そうするためにいつも2人で違うもの頼むようにしているじゃん。これからも色々な商店街巡って沢山名物グルメ食べようね。商店街の面白さを教えてくれたのは萌恋だよ。ありがとう。

それってなんか褒められているのか貶されているのか、どっちなのかなって思うけれど……。

商店街の魅力について2人について話しているとカレーが運ばれてきて私は取り皿を2つもらって互いのカレーを入れた。お昼ご飯を食べていなかったからより一層お腹がいっぱいになったような気がして会計をしてお店を出た。

優姫は商店街にどハマりしてしまい、今日は谷丘商店街を発掘しようとテンション高めで私に言ってきた。

私は鎌谷商店街と谷丘商店街の2つ、優姫も行った商店街が同じはずなのに熱量は既に教えた私よりも優姫の方が上回っているのではないかと感じていた。

それから1時間、かわいい雑貨屋やゲームセンターでプリクラを撮ってエアホッケー等で楽し尽くした。

私は優姫に夏休みだから商店街を含め、色々な所に行って思い出を作ろうねと言って駅に向かった。


豪華な買い物

夏休みに入って私は早めに宿題を終わらせて外に出て商店街巡りをしたり、カフェ巡りしたりするだけでなくたまには家で自堕落な生活をしようと考えていた。

ある日、優姫から電話がかかってきた。

もしもし萌恋、今時間ある?

うん、夏休みの宿題をやっていたよ。どうしたの?

早めに宿題をやるなんて萌恋にしては珍しいね。

人を何だと思っているの。優姫、用事がないなら電話を切るよ。

ゴメンゴメン。今日電話をかけたのは萌恋にある物を見せたくて電話をかけた感じだよ。

私に見せたいもの?それって何?

それはナイショ。今週末明けておいてね。お時間があるならお父さんやお母さんにも来て欲しいから声をかけてみて。空いてないなら別の日にするからさ。

私はその話を聞いて優姫か何を言っているのか分からなかった。見せたいものってなんだろう……。

私は相手いるからとりあえずパパとママに今週末空いているか聞いてみるね。確認でき次第ラインするねと電話を切った。

晩御飯の時に聞いてみよう。それまで宿題を1つでも終わるように進めようとしていた。

ママが私の部屋にやって来た。「萌恋、晩御飯出来たよ〜」その言葉を聞いてリビングに向かった。

晩御飯を食べている時に私はパパ、ママ今週末って何か予定ってある?

2人は特に予定ないけれど何かあった?

なんかね、優姫が見せたいものがあるからお父さんやお母さんにも声をかけておいてって。

ママは優姫ちゃんってあのご令嬢の子だよね?

優姫、才色兼備とかご令嬢とか言われるの好きじゃないみたいだからパパもママもなるべく本人の前で言わないようにしてね。

パパはうん、分かった。それより見せたいものってなんだろうね。1度家にお邪魔させてもらったけれどもう何が出てきても驚かない感じがするよね。もしかして海外にある別荘を建てたから自家用ジェット機でみんなで乗って行くなんてね……。

他人の家のことについて話していた。

3人で口を揃えて有り得る。ナイショって言っていたから無きにしも非ずな所が何とも言えない。いや、それ以上に驚くことがあるかも知れない。

とりあえず私は優姫に3人とも大丈夫だと送信すると数分後返信が来た。

「土曜日の午前9時にラドールに来てください。シュークリーム10個、各プリンを1種類ずつ買ってきてもらえると嬉しいです」

私はパパとママに届いたラインを見せるとこっちが支払う額よりもスゴい額の物をもらうから何か申し訳ない気持ちだよね。

土曜日、私はどこに行ってもいいように水色ワンピースを着て麦わら帽子を被り、3人で家を出た。

パパはシュークリーム10個に各プリンを1種類ずつ買ってお店の前で待っていた。

リムジンがやって来て優姫は窓を開けて萌恋、おはよう。早く乗って。

私たちは急かされるようにリムジンに乗ると萌恋、その水色のワンピースかわいいね。麦わら帽子に似合っているよ。

私はありがとう。優姫のレモン色のミニスカートもかわいいよ。

パパは優姫に質問した。

優姫さん、萌恋とどこか行かれるのは分かりますがなぜ親の私たちまで招待してくれたの?というか今からどこに向かっているの?

優姫は笑顔でそれはナイショです。現地に着いたらきっと皆さん驚かれると思うので楽しみにしていてください。

私は行き先を聞き出そうとするものの頑なに教えてくれず着いてからの一辺倒で何も教えてはくれなかった。

しばらくするとリムジンは止まった。

リムジン専用駐車場に車を止めて優姫は降りるように促されて歩いていくと海でここは港にいることを私たちは認識をした。どうしてここに来たのか、決してキレイとはいえないこの海を見せるためにわざわざ呼んだ。如月家一同はそれはないと悟った。

「ブーン」一体この音はなんだ?どこから来ているのか、私は音の方をする方向に目を向けると衝撃を受けた。

なにこの船?見るからに豪華客船だよね?その豪華客船がどうしてこの港にいるのだろうか……。

そして優姫の次の一言にも驚いた。

船が止まり皆さん、乗ってください。

パパは乗船料いくらですか?

優姫は笑ってウチの所有している客船なので乗船料はいただきませんよ。はぁ……分かりましたと船に乗りつつ船を買うってどういう事なのか、この客船でどこに向かうのか訳が分からなかった。

私は優姫に尋ねた。

客船を買ったってことは新しく誰か客船出来る人を雇ったの?

前に客船の展覧会があって家族で見に行ってこれいいねって感じで買ったよ。でも買ったはいいものの家族や執事の佐藤も含めて誰も船を運転出来る人がいなくて困っていてさ。その翌日、その時にあるフェリー会社で人員整理することになったニュースでやっていてフェリー会社に電話して家の近くに住んでいる人を紹介してもらって雇うことにしたみたい。

私は相変わらずスケールが大きいね。

船は買ったけれど運転の出来ない私たちと仕事を失ったけれど再び船に携わることの出来る人、これはお互いにとってメリットしかないと思っていいかなってパパが言っていたよ。

私たちは顔をポカーンとしてそうなんだ……という一言しか出てこなかった。

そうだ、目的地に着くまでしばらく時間がかかるのでコンビニ、パチンコ、シアタールーム、ゲームセンター、ボーリング等娯楽施設もあるので是非とも使用してください。

ご飯は寿司職人や中華料理、割烹、フランス料理、イタリア料理の他に沢山のシェフも乗車しているのでいつでも好きな時に食事を取ってもらって構いません。

私たちはどこか知らない目的地に着くにはどうやら相当時間がかかることに違いないと感じた。

「ぐぅ〜」私はお腹が鳴った。

優姫にお腹空いたから何か食べたいとお願いすると付いてくるように言われた。今日は何が食べられるのか、楽しみで仕方がなかった。

萌恋ちゃん、久しぶり僕のこと覚えている?

一瞬、私は誰だろうと思ったが前に中華料理を出してくれた本田さんも乗船していて小チャーハンと唐揚げをお願いをした。ところで優姫、目的地には後どれぐらいで着きそうなの?

そうだね……。ざっと5時間くらいかな。

そんなにかかるの?だから私たちに娯楽施設があるって言っていたのはそういう事だったのか。

萌恋ちゃんお待たせ。小チャハーンと唐揚げだよ。本田さん、ありがとうございます。唐揚げの香りが漂っていてもうニオイだけで美味しさが伝わる感じがして食べると想像以上の味でもうテイクアウトして家でも食べたいくらいですと伝えた。

萌恋ちゃんお世辞上手いね。そうやって言ってもらえる人が1人でもいてくれると料理人やっていてよかったなって思うよ。優姫ちゃんからも聞いているかも知れないけれど中華料理以外にもシェフが乗船しているから色々食べていくといいよ。1周してまた来てくれたら嬉しいなと本田さんは笑いながら話していた。

残り5時間、することもないからパパとママそして優姫の4人でシアタールームに行って映画を観ることにした。2時間の恋愛映画を鑑賞した後に客船を散策して回った。

パパとママは周りを見渡してどこもスゴいね。ママはまさか豪華客船にのせてもらえるなんて思いもしなかったよ。パパは優姫に質問した。

「優姫ちゃんってファミレスって知っている?」

はい、知っていますよ。単品で注文しても美味しいですがそれにメインメニューにサラダやスープ付けられるあのセットっていうのめっちゃコスパいいですよね。特にランチメニューなんて安いのに美味しくて大丈夫なのかなって思ったりします。

たしかにファミレス美味しいよね……。とはいいつつもホントにファミレスに行ったことがあるのかと半信半疑だが喋っている感じは本当なんだろうと思っていた。

私、萌恋さんに感謝していることがあります。

パパとママは声を揃って「それは何?」

まだ2つしか行っていませんが商店街巡りです。萌恋さんに商店街の面白さを教えてもらいました。チェーン店や普段見かけるようなお店もありますがそこの商店街にしかない名物があってそれぞれ個性が出ていて商店街を歩くのにハマりました。

パパは賑わっている商店街もあれば今はなき商店街みたいな所はシャッター街みたいな感じな所もあるよ。この機会に少し遠目の商店街巡りしても面白そうだね。その時はちゃんと調べていくといいよ。

パパ、ナイスアイデア。優姫、今度そうしよう。

今から行く目的地にも着いていないのに次の予定決まってスゴいねと笑っていた。

優姫の携帯が鳴り、佐藤からもうすぐ目的地に着きますと連絡が入った。

皆さんもうすぐ到着します。長旅お疲れ様でした。

この豪華客船に降りるのが何だか名残惜しい気もするがホントに優姫が私たちに見せたいものが何なのか、やっと分かるのかと複雑な気持ちでいた。

豪華客船が辿り着いたのは大きな島だった。

佐藤は全員を降ろし、優姫は私たちに島に案内した。「ようこそ如月島きらさぎじまへ」

私たちは優姫に如月島……どういうこと?

ここは元々無人島だったけれど私のパパが島を買ってついでに命名権も買ったみたい。

島を買った?ついでに命名権を買って名前を付けた。ついでに買うっていうスケールが違うな……。

私たちならスーパーやコンビニでレジ前にあるからじゃあついでに買おうとなるがそれとはえらい違いだなと感じていた。

私は優姫にどうしてこの島に来たの?

いいからこっち来て。優姫は私をある所に連れて行こうとして暗闇の島で見失わないようにパパとママも私たちを追いかけるように走った。

10分後、山の頂上について優姫は私に上を見て。

私は優姫に言われるがまま空を見上げた。すると星が燦然と輝いていた。キレイ〜、優姫この景色を見せたくてわざわざ呼んでくれたの?

うん、そうだよ。萌恋の喜ぶ顔を見たくてさ。

後を追うようにパパとママもやって来て空を見上げた。キレイだね〜、優姫ちゃん私たちにもこんな素晴らしい景色を見させてくれてありがとう。

ママ、下から2人と星が写るように写真撮ってあげて。友達同士とはいえパパが撮るのは抵抗あると思うからさ。

私と優姫は星をバックにピースをして夜でもキレイに写るアプリを入れて写真を撮った。嬉しさのあまり私は優姫に抱きしめ、ホントに優姫が友達でよかった。何の取り柄もない私だけどこれからも宜しくね。

萌恋は誰よりも優しくてかわいい女の子だよ。それは私が誰よりも分かっているよ。もう暗いから1回船に戻って1度寝ましょう。翌日、改めてまた島の探検をしようと提案した。

午後11時、何かと疲れた早乙女家はそれぞれの部屋で1泊した。午前7時、私たちは起きてすぐ軽めの朝食を済ませて優姫と合流して2時間、如月島を探検した後に再び豪華客船の10時間の旅に出た。

行きはどこに行くか分からずどう過ごせばいいのか分からなかったが帰りはどこに帰るのか分かっていたので私はありとあらゆる食べられる物を食べて映画観て豪華客船を楽しむことにした。その後港に着いて私たちはリムジンに乗ってラドールに帰った。

家に着いたのは午後10時、優姫が週末を空けておいて欲しいってこういうことだったのか。楽しさと感動のあまり、家に帰りパジャマに着替えて3人ともすぐに寝床について熟睡した。


ライブ

8月に入って私は夏休みの宿題を終えた。よし、これで後1ヶ月は好きなこと、家で自堕落する事が出来るとベッドに飛び込んだ。これから商店街巡りするだけでは何か勿体ない気がしていた。

特にする事ないしラジオでも聴こうとアプリでラジオを聴いていた。あるラジオのゲストでストロベリーカーニバルの本宮皆実ちゃんが出演していてラジオを聴いていた。最後に告知として双葉緑地公園でライブを午前10時からするので是非ともお時間のある方はお越しくださいとラジオは終了した。

私はこれで明日の予定が決まり優姫に電話した。

もしもし優姫、今時間ある?

うん、大丈夫だよ。

優姫は夏休みの宿題終わった?

勿論終わったよ。えっ、そのために電話したの?

違うよ。明日って何か予定あるのかなって。

明日は特に予定ないけれど萌恋、どこか行くの?

え、聞きたい?聞きたい?

萌恋、聞きたい?じゃなくて聞いて欲しいって素直に言いなよ。それでどこに行くの?

明日、双葉緑地公園ふたばりょくちこうえんでストロベリーカーニバルのライブがあるけれど一緒に行かない?

そういう事ね。いいよ一緒に行こう。何時にどこで集まる?

そうだね……。午前9時に緑地駅前に集合しよう。優姫、遅れないでよ。

そう言って萌恋も遅れないようにね。そして電話を切った。

翌日、私は制服を着て緑地駅前に向かった。

萌恋おはよう。あれ?制服で着たの?

何を着ていこうか悩んでいたけれどこの制服かわいいしいいかなって思っていてさ。優姫、今日の服装かわいいね。赤色のセットアップ似合っているよ。

萌恋、ありがとう。とりあえず会場に行こうよ。

私たちは緑地公園内にあるステージを探していた。少し早めに来たことがよかったのかライブに来ている人が少なかった。

優姫、前の方が空いているからなるべく前の方で見ようよ。昨日ラジオで本宮皆実もとみやみなみちゃんがやっていてその本人を観られるなんて楽しみだな〜。

萌恋、その本宮皆実ちゃんってそんなにかわいい子なの?

「人に聞く前に自分で調べるように」と調べるように伝えた。

優姫は素直にすみません、スマホで調べますと調べるとかわいい子だね。実際はどんな子なのかねと2人で盛り上がっていた。

私はアイドルってキラキラと輝いているよね。

萌恋、そう思うでしょ?でもね、アイドルの規模が大きくなればなるほど競争率も高くてね、センターになるのも楽曲ごとに選ばれる選抜に入るのも大変になってくるよ。

それに最初から正規メンバーになれる訳ではなくて研究生から始まって劇場を持つくらいにもなると普段自分が踊っている所だけでなくて正規メンバーの人が他の仕事で出られなくなった場合はアンダーって言ってその人の穴を埋めたり、テレビに出演するってなったらその時のポジションが違ったりするから一通りのポジションを覚えておく必要があったりと裏では大変だったりするよ。

優姫、アイドル事情に詳しいね。昔アイドルしていたり周りの子でアイドルしていた子とかいたの?

いや、そういう訳ではないけれど前にアイドルを辞めた人のラジオを聴いて華やかな世界の中に見えても実は厳しい世界だなと思って聴いていたからさ。

なるほどね〜。今から出てくる子たちもかわいくて楽しそうに踊っているけれど裏ではそういうことがあるのかなって見るね。

さっき言ったのは一部の事例だから全てのアイドルがそれに当てはまるかというとそうとは限らないよ。人数が少なくみんなが出ているかもよ。ストロベリーカーニバルはどうかは分からなくて……。

優姫、せっかく来たからライブ楽しもうね。

次第にお客さんも沢山入ってきてライブが始まった。メンバーが表に出てきた。

「今日はお集まりいただきありがとうございます。短い時間ですが皆さんが今日のライブに来てよかったと思えるようにメンバーが歌って踊ります」

私はかわいい女の子がかわいい衣装を着て歌って踊る姿に心を打たれた。ラジオやテレビで観るのもいいが生で見るとダンスのキレや歌唱力がよく分かるな。私にアイドル……ムリだな。ルックス、ダンス、歌唱力どれを取ってもこの中に入って一緒にステージに立つっていうことは到底難しい。いや、そんなことを思う方が烏滸がましい。

1時間後、ライブが終わり握手会が開催されるということで私と優姫はその場でしばらく待っていた。

しばらくするとメンバー8人いて1人1分ですとスタッフからアナウンスがあり、優姫と誰に行くか喋っていた。

萌恋は誰に行くの?

そうだね……。私は本宮皆実ちゃんかな。優姫は誰に行く?

私は城河紗帆ちゃんに行こうかな。萌恋、後でお互いに行った。メンバーがなんて言っていたのか喋ろうよとそれぞれのレーン話し合おうと別れた。

私は本宮皆実ちゃんのレーンに並んでいた。

「はじめまして、早乙女萌恋です。昨日ラジオを聴いて今日来ました。」

「萌恋ちゃんってかわいい名前だね。ラジオ聴いて来てくれてありがとう。萌恋ちゃんかわいいから一緒にステージに立てたらいいな」

「お世辞ありがとうございます。同じステージに立てるようにルックスやダンス、歌唱力を磨きます」

1分喋り終わりですと私は皆実ちゃんに手を振って別れた。

あれ?優姫はまだ来てないからこの辺り始めてだし何があるのかをスマホで調べていた。すると緑地駅前の反対側に双葉緑地商店街があることが分かった。これを見て私は行かなかければという思いに駆られた。

しばらくして優姫がやって来た。萌恋、お待たせ。紗帆ちゃんがね……。

優姫それは後で話そう。駅の反対側に双葉緑地商店街っていうのがあるみたいだからそこで話そうよ。

ホント萌恋、商店街好きだね。じゃあ商店街でゆっくり喋ろうか。

2人で双葉緑地商店街に向かった。

時刻は正午になり、優姫はお昼ご飯食べる?それとも食べ歩きする?

私はお昼ご飯を軽めに食べて名物グルメを食べるようにしようよ。それが商店街の醍醐味だからさ。

商店街入ってすぐのファミレスに入ってワンコインを注文した。

それで萌恋、皆実ちゃんどうだった?

皆実ちゃん生で見て顔が小さくてかわいかったよ。ラジオ聴いて来ましたって言ったら萌恋ちゃんかわいいから一緒のステージに立てたらいいなって。

それで萌恋はなんて答えたの?

お世辞ありがとうございます。一緒のステージに立てるようにルックスやダンス、歌唱力を磨きますって答えたよ。

優姫は萌恋かわいいからアイドルしたら?

ねえ優姫、それホントに思っている?私がアイドルなんてなれないよ。優姫こそ才色兼備だしアイドルに向いていると思うよ。

萌恋、ありがとう。お世辞でも嬉しいよ。

お世辞じゃあないよ。それで紗帆ちゃんはどうだった?

ショートカットで目がぱっちりしていてアイドルになる女の子ってこういう子だなって思ったよ。それに自分にはファンが少ないから友達に紹介してもらえると嬉しいって言っていたよ。だから私は友達から紗帆ちゃんのこと聞きましたって伝えたらスゴく嬉しそうにしていてその友達に今度は紗帆の所にも来て欲しいって伝えておいてって言われたよ。

私はなるほどね。紗帆ちゃん、そんなファン少ない感じしないと思うけどな〜。メディアにも出ているしブログも積極的に書いていてコメントも結構多いよ。

萌恋はそう思っていても紗帆ちゃんは自分が思っているようにファンがついているって感じていないのかもしれないよ。紗帆ちゃんが謙虚でそう言っているだけかも。

私は優姫も相当謙虚だと思うけどな。

だって広い家に住んでいるだけでご令嬢って思われて偉そうな態度していたり他人を蔑むような発言をしたら萌恋はどう思う?

あ、やっぱりな。お嬢様は違うなって思うかな。

でしょ?そう思われたくないし自分の力でそこまで登りつめたっていうならともかくスゴいのは私じゃなくてパパやママだからね。それをいい事に他の人にそんな態度取るのも違うしされたらイヤかなって。

もし、優姫がアイドルになって成功しても今まで通り私と仲良くしてくれる?

勿論だよ。私にとって萌恋は心友だし、萌恋がいなくなったら私に1人も友達がいなくなるといっても過言じゃないよ。

優姫……。そこまで言ってくれる友達始めてだよ。

ちょっと萌恋、泣かないでよ。嬉しくて泣いているの?それとも届いた商品の湯気で泣いているの?

嬉しくて泣いているに決まっているじゃん。湯気で泣いているって聞いた事ある?それを言うなら目にゴミが入って泣いているのって聞くでしょ。

こうやってアホなことを言い合えるのも友達の証だと私は思うけどな。

2人でランチを食べ終えてお店を出た。

さて、お昼ご飯も食べた事だし双葉緑地商店街の名物グルメ食べに行こう。

2人で歩いていると優姫は足を止めた。

ねえ萌恋あの看板見て。スゴい人が並んでいるよ。

「双葉緑地商店街名物イチゴクレープ」

ク、クレープって私クレープ好きだから嬉しい。さぁ優姫、長蛇の列だけど並ぶよ。

優姫は小声でやっぱりなと呟いた。

1時間並んだ末、私たちの番が来た。優姫、何にする?

私はバナナチョコにクレープするけれど萌恋は何する?

そりゃあやっぱり名物のイチゴクレープかな。ストロベリーカーニバルのライブを観た後だから余計にそう思うのかなと微笑んだ。

バナナチョコクレープとイチゴクレープを互いに食べ合ってしばらく双葉緑地商店街を巡って気がついたら陽が落ちていて家に帰っていった。


応募

私は皆実ちゃんに言われてからアイドルを目指そうと思うようになったが近い時期にファイヤーフェアリーのオーディションがあるがストロベリーカーニバルのオーディションが行われていなかった。

夏休み明けに私は優姫に声をかけた。

「優姫、一緒にファイヤーフェアリーのオーディション受けない?」

受けない事にはアイドルにはなれないからね。1人で受けるなら不安だけど萌恋が一緒なら心強いよ。

優姫、どっちかが受かってどっちかが落ちても恨みっこなしだよ。後でお互いにネチネチ言わないようにね。

私と優姫はスマホから応募した。

2人とも無事に書類審査を通り1次面接は歌唱力審査と決まった。

1次面接を受けて私は通過とはならなかったが優姫は通過した。こればかりは自分の実力不足だ、後は優姫が合格してファイヤーフェアリーのメンバーになることを1番の友達として応援することにした。

優姫は2次審査、3次審査を通過して最終審査まで進むことになった。

その話を聞いて私は最終審査まで残るって優姫スゴいね。当日応援には行けないけれど合格になることを祈っているよ。

ありがとう。自分のため、萌恋のためにも最終審査を絶対に通過してアイドルになるよ。

いつもなら優姫にどこかに行こうと誘う所だが、1人で歌唱やダンスの練習もしたいと考え授業後はスっと帰るようにしていた。

最終審査の前日、私は神社に行って優姫の合格しますようにとお願いをして社務所で勝と刻まれた御守りを探して最終審査を勝ち取りますようという意味で購入した。

金曜日の帰り、私は優姫に御守りを渡した。明日の最終審査に勝ちますようにとこの御守りを買ってきたよ。こんなこと言ったら矛盾するかもしれないけれど自分の力を出し切ってきてね。あくまでもこの御守りは気休め程度くらいに持っていてくれたら嬉しいな。

結果はそこで発表されるからすぐに連絡するね。萌恋、ありがとうと抱きついた。

もう私に出来ることは祈るしかないと家に帰った。

翌日、私は家で自堕落している中で優姫からの連絡を待っていた、スマホを持っていつ連絡来るのかとまるで自分のことかのように待っていた。

「プルル、プルルとスマホが鳴った」

もしもし萌恋、優姫だけど今大丈夫?

うん、大丈夫だよ。それで結果はどうだった?

優姫は泣いていた。萌恋……ゴメンね。私、ダメだった。せっかく御守りまでもらったのにホントにゴメンね。

私はそんな事ないよ。優姫がここまで頑張ってきた事は決してムダじゃないよ。私もそうだけどアイドルのオーディションは今回だけじゃないよ。また2人で別のオーディション受けようね。

そうだよね。仮に合格していても私、断っていたと思うよ。

え、なんで?合格したのに断るなんて他の受けた子たちに失礼だよ。

うん、私もそう思った。でもね、仮にファイヤーフェアリーの一員になれたとしても隣に萌恋がいないのならアイドルをしてもなって。アイドルをするなら私と萌恋2人でアイドルになりたい。

私はその言葉を聞いて嬉しかった。優姫、ありがとう。また2人でアイドルを目指そうね。

こうして私と優姫は再びアイドルのオーディションを受けることを決めた。

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