新たなる何か

趣味

私は教室の机で両肘を付いて上を向いて考え事をしていた。

その姿を見た優姫が私に声をかけた。

ねえ萌恋、どうしたの?何か悩みあるの?もしかして恋する乙女の悩みとか?

違うよ。そもそも優姫に好きな人がいてねって話してないでしよ。もしいるならもう言っているよ。

じゃあそんな深刻な顔をしてどうしたの?

優姫にはアイドルやアニメ、マンガそしてスポーツ観戦、音楽鑑賞、カフェ巡りと趣味が豊富だから私も何か趣味を増やしたいなと思っていてさ。

そういう事ね。萌恋にも趣味あるじゃん。

私の趣味?ねえ優姫、私の趣味って何?

まずは鎌谷商店街のコロッケにラドールのシュークリーム、それにスイーツ好きって事かな。

ちょっと優姫、それじゃあまるで私が食いしん坊みたいじゃん。優姫から見たら私はそう見えてたのか……。

うん、そうだよ。この前も私の家に来てお寿司を美味しいって沢山食べていて幸せそうな顔をしていたからホントに食べることが好きだろうなって思って見ていたよ。私も食べること好きだし別に嫌味で言っている訳ではないよ。

だから代名詞、とまでいえなくても趣味を増やそうと考えている感じでさ。

萌恋に合いそうな趣味でしょ?あ、いいのあった。

えっ、どんな趣味?

商店街巡りっていうのはどうかな?鎌谷商店街だけでなく他の商店街に行って第2のラドール、第2の名物グルメを探せるいいチャンスだと思うけどどう?

私はあ、それいいかも。でも第2のラドールや名物グルメを探せるって結局食いしん坊だって言っているのと変わらないと思うけど。

あれ、違った?商店街巡りは食べるだけでなくそれぞれの商店街によって個性があって宝探しするみたいで楽しいと思うよ。

商店街巡り、候補の1つにしようかな。

優姫も一緒に趣味について考えてくれた。そして1つ提案してくれた。

ねえ萌恋、ラジオを聴くっていうのはどう?最近のトレンドも知れるし、教養も身につくしいいと思うよ。

ラジオか……。小難しい感じがするな。

優姫はそんな難しく考えなくても芸能人のやっているラジオだったら聴きやすくて面白いよ。私も勉強している時にラジオ聴いてするけれど結構勉強が捗るよ。優姫は私にラジオをスゴく推してきた。

優姫がそこまで言うのならば1回ラジオ聴いてみるよ。面白かったらまた聴いたり、他のやつも聴いたり出来るし1度試してみるよ。

萌恋、新しいことをする時は何事も不安や自分に合うのかと気にして中々ならない人がいるけれどまずは1歩目のとっかかりが大事だからね。明日どうだったかまた教えてね。

私はどんなラジオを聴こうか楽しみにしていた。

授業後、私は優姫と別れてラドールに寄っていつもはシュークリームを買うがいつもとは違うのを買おうとキャラメルプリンを買って家に帰った。

家に帰るとこの日はパパが有給でママはせっかくなら早めに晩御飯を食べようと近くのファミレスに向かった。3人で軽く食べて家に帰ると時間は午後7時になっていた。

私は自分の部屋に籠ってスマホでラジオのアプリを入れてイヤホンを挿した。どんなラジオを聴こうとスクロールとプロ野球中継がやっていた。

そういえば優姫、野球好きだし親戚の木村小次郎さんも元プロ野球選手だから野球を覚えたら優姫との会話の幅も広がる。よし、プロ野球中継を聴くことにした。

しかしプロ野球中継を聴く上で問題が1つあった。

私はプロ野球おろか野球のことを一切知らなかった。この状態で中継を聴いても何がどうなっているのか全然分からない。せめてルールぐらい分かっておかないとダメだと思い、中継を聴きつつスマホで調べた。すると「初心者でも分かる簡単野球のルール」というサイトにいきついてそれを見てラジオを聴いていた。この試合の対戦している選手ぐらいとパソコンで調べていた。

午後9時、試合中継が終わって先に明日の用意を済ませて仮に寝落ちしても大丈夫なように予め備えておいた。

さて、次はなんのラジオを聴こうかなとスクロールしているとストロベリーカーニバルというアイドルのラジオが流れてきた。正直、初めて聞いたアイドルで私がアイドルに対して無頓着でホントは有名なのか、実はめちゃめちゃ有名だが知らないだけなのか、どちらにせよ聴いて損はないだろうと聴くことにした。

この日は城河紗帆しろかわさほという女の子がパーソナリティとしてやっていた。かわいい声の子だなと思って聴いていたが聴くのならば紗帆ちゃんって子も調べなくてはと思いパソコンで調べた。

ストロベリーカーニバルのホームページで調べると城河紗帆15歳と記載されていて声色が大人っぽくて写真も美少女で私以上にしっかりしている子だなというのが第1印象だった。

私はラジオって面白い、アイドルが流行っているものを知れたり番組によっては教養や雑学を言うものもある。学校にいる時はラジオなんて、と思っていたが実際にラジオを聴いて思っていた以上に堅苦しいイメージとは程遠くてとっかかりが大事だなと改めて感じた。

窓の外を見ると月やお星様が輝いていたのに気がついたらお日様がいる。ん?どういうこと?徹夜したってことなのかな?状況を把握出来ず朝ごはんを食べて学校に向かった。

教室に入り自分の椅子に座ると優姫がやって来た。

どうしたのそのクマ?大丈夫?

昨日、帰りにラドールでキャラメルプリンを買ってプロ野球中継を聴きつつスマホで「初心者でも分かる野球のルール」というサイトを見つけてそれを見たり、中継でやっていた選手のことをパソコンで調べていてね。その後、ストロベリーカーニバルっていうアイドルで城河紗帆ちゃんって子のラジオがやっていて声色がかわいくてそれを聴きつつまたパソコンでその子について調べたり色々していたよ。

優姫はラジオが楽しかったのは充分伝わった。昨日ちゃんと寝た?

窓の外を見たら月やお星様が輝いていたのに気がついたらお日様が昇ってきてイリュージョンなのか、それとも夢なのか何だかよく分からない感じさ。

優姫は私にそれはただの寝不足だから休み時間は寝てな。そうじゃないと貧血で倒れるよ。

優姫、心配してくれてありがとう。じゃあそうするね。

朝のホームルームが終わり、1時間目の科学は視聴覚室に移動しなくてはならず私は優姫と共に移動している途中、私は倒れた。

優姫はクラスメイトを呼び、2人で私を保健室に連れて行ってくれて私はベッドに横になって保健室の先生は2人に授業に戻るように伝えた。

そして私は目が覚めた。保健室の先生から何度か起こしたけれど起きなくて如月さんが早乙女さんの事がよほど心配だったのか授業後に大丈夫ですかって尋ねに来てたよ。話はある程度聞いたけれど友達と仲良くなる為に趣味を合わせようとすることは大事だけど自分の身体をもう少し大切にしないとダメだよと注意を受けた。

授業後、優姫は保健室にやって来た。あ、萌恋やっと起きた。まさか寝不足だからって1時間目から6時間目までずっと寝ているとは思わなかったよ。カバン持ってきてあげたから一緒に帰ろう。

優姫、先生ご迷惑をかけてすみませんでした。ちゃんと歩いて帰れるのであまりムリをしない様に気をつけようと思います。

私は優姫と共に学校を出た。優姫、迷惑かけてゴメンね。今日の授業のノート写させて欲しいからノート貸してもらえないかな?

ノートなら私がもう写しておいたよ。萌恋、お昼も食べてないでしょ。商店街のコロッケ食べてから帰ろう。

優姫、ありがとう。私も何か困ったことがあったら助けるね。今日はずっと心配かけたからせめてコロッケ買わせて。優姫が欲しいというのなら他のものも買うよ。

そうだね。コロッケとラドールのシュークリーム、そして萌恋が食べたっていうキャラメルプリンが食べたいかな。

まず、商店街に行って私はえびクリームコロッケと優姫はコーンクリームコロッケを買っていつものように互いに食べあいこした。

私はシュークリームとキャラメルプリンは明日持っていくねと伝えると明日じゃなくて今日食べたい。だから近くのスーパーに佐藤に来てもらっているからそれでラドールまで送ってあげるよ。

私は優姫に何から何までホントにありがとう。近くのスーパーに行って車に乗ってラドールに向かった。

車の中で私は前に優姫が食べることが好きって話になったじゃん。その時、コロッケ食べてラドールのシュークリーム、キャラメルプリンが食べたいって優姫も食いしん坊だよと話していた。

すると優姫はクスッと笑ってたしかにそうだね。じゃあ私たちは食いしん坊姉妹だねと話していた。

そしてラドールに着いて佐藤さんにちょっと待つように伝えた。私はシュークリームとキャラメルプリンを2つずつ買って優姫に渡して運転席の窓を開けるようにトントンと叩いた。

佐藤は運転席のパワーウィンドウを開けて萌恋さん、どうされましたかと尋ねられた。

今日は優姫さんにも佐藤さんにもホントにご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。

萌恋さん、お身体を大事になさってください。是非また家に遊びに来てください。私も優姫さん、家にいるもの全員萌恋さんをおもてなしいたします。

こんなにも自分のことを大事にしてくれている友達がいるって有難い事だなと思い、優姫には感謝しても感謝しきれない思いだった。


試し

私はラジオで野球中継を聴いて以降、テレビで野球の試合がやっている時は観るようにしていた。まだ野球を知って日にちが経っていないからかなのか、中々ルールや選手を覚えることが出来ないが試合を観ていて面白いなと感じていた。テレビやラジオで試合を見聞きするのもいいが実際に野球場に行ったらこの臨場感を楽しめるのではないかと考えた。

よし、明日優姫に聞いてみようと布団に入った。

翌日、学校に行って私は優姫に話しかけた。ねえ優姫、ちょっと話があって聞いてもらってもいい?

うん、いいよ。話って何?

優姫って野球場で試合を観に行ったことってある?

うん、あるよ。伯父さんが元プロ野球選手っていうこともあって小さい頃に実際に球場で応援に行ったこともあるよ。

さすが優姫、ラジオやテレビで野球を観ていて実際に野球場に行けばもっと臨場感を味わえるのかなって思ってさ。それでチケットってどうやって取るの?

そういう事ね。私が行ったのも小学生時代でその時は伯父さんがチケットを家に郵送してくれた感じだからね。ちょっと待ってね、スマホで調べるね。

えっと……チケットは球団のホームページやコンビニでも買える。支払いはクレジットでも現金でもいいって書いてあるね。萌恋、一緒に観に行く?

優姫、一緒に行こうよ。私1人だと心細いしルールや選手がパッと分からないから是非観に行くなら優姫と一緒に行けたらなと思っているけれどどうかな?

優姫はうん、いいよ。じゃあ帰りにコンビニでチケットあるか観てみようよ。

ありがとう。何も分からないから優姫に一任するね。1人で行ったらお姉ちゃん、ファンの人にこんな有名な選手も知らないのか。そんなルールも知らないのかって怒られちゃうのかなって……。

優姫はクスッと笑った。萌恋のイメージがスゴいね。たまにそんなこと言ってくる人いるけれど大概の人はルールを教えてくれるし、これから覚えていけばいいよって言う人もいれば選手のウンチクを言う人とか色々いて面白いよ。

それより萌恋、いつ試合行くの?

私はいつでもいいよ。優姫の予定もあるだろうし、多分その試合によって空いてる席数とかも変わってくるからそれ次第かな。

優姫は提案した。じゃあ今日の帰りにコンビニに寄って決めようか。席によっても値段が変わってくるからさ。

私はそういう感じなんだと話を聞いていた。

優姫の話を聞いて野球場に行くのが楽しみで仕方がなかった。

授業後、近くにあるコンビニに寄ってチケットを確認していた。優姫は始めてチケットを買うとは思えないほど手慣れた手つきで機械をいじっていた。

ねえ萌恋、鎌谷ロビンソンズっていうチームが近所で鎌谷スタジアムもここから電車で10分とかだけどこのチームの試合でいいかな?

私はうん、いいよ。1つ気になるのが同じチーム同士が3試合あるけれどそういうものなの?

同じチーム同士が戦う事をカードっていって3試合のうち2試合勝ったらカード勝ち越しって言うよ。

じゃあ3試合全部勝ったらなんて言うの?

優姫はその場合は3タテって言うよ。

じゃあ3試合全部負けたら?

それもまた3タテって言うよ。

私は思わず3連勝しても3連敗しても3タテっていうのはどうして?単純に3タテだけ聞いたら分からなくない?

優姫は黙ってしまった。たしかに萌恋のいう通りだね。なんで両方とも3タテっていうのか実は私も分からなくてね。それでどの日にする?

そうだったね。話を脱線しちゃってゴメンね。どの日が空いてそう?

そうだね……。直近だと火曜日、水曜日、木曜日どの日も内野も外野も空いているよ。萌恋が始めて野球を観るのなら安い内野席の方がいいかな。

私はじゃあそれでお願い。

優姫は水曜日に行われる鎌谷ロビンソンズ対尾道シーレックスの試合を発券してレジに持っていき私と優姫はそれぞれ3000円を支払った。

家に帰り鎌谷ロビンソンズの選手、成績、ルールをいま1度確認して翌日の試合を観ようと考えた。

火曜日、鎌谷ロビンソンズ対尾道ロビンソンズの試合が始まり観ているとピッチャーは150キロを超えるボールを投げてそのボールをいとも簡単に打って、選手によってはフェンスオーバーのホームランを放つ選手がいた。

カードの初戦となる第1戦は5対3でロビンソンズに負けた。私は勝った負けたというよりもこの近い距離で人間があんな速いボールを投げてそれを打つ、完全にヒットだと思われる打球をケガを恐れずダイビングキャッチをしていた。野球についてはズブの素人だがその1つ1つのプレーに感動した。明日の試合、どんな試合になるのかと前日からワクワクしていた。

迎えた翌日、私は学校に行って優姫に昨日の試合惜しかったね。今日はどんな試合になるのか楽しみだねと話しかけた。

そうだね。友達と野球を観に行くのが始めてだからそれが萌恋でよかった。今日は2人でロビンソンズを一生懸命応援しようね。分からないことがあれば私や周りの人に聞けば大丈夫だよ。

この日、私は授業の合間の時間は机に張り付いて寝て少しでも体力を温存しようと考えていた。帰りのホームルームも早く終わらないかなと心の中で唱えていた。終わったのと同時に優姫の手を掴み早く行くよと急かすように学校を出ようとした。

ちょっと萌恋、そんな強く引っ張らないでよ。痛いよ。チケット買ってあるからそんなに急いで行かなくても大丈夫だよ。今からでもゆっくり選手の練習見られるから落ち着いて。

あ、優姫ゴメンね。つい気持ちが昂って……。

それくらい野球を観たいと思ってくれたのは私も選手、そして伯父も嬉しいから一旦落ち着こう。

私は深呼吸して気持ちを1度落ち着かせた。それで鎌谷スタジアムはどうやって行ったらいいの?

萌恋、私に着いてきて。

私は優姫と電車に乗ってスタジアムに向かった。

これが鎌谷スタジアムか……。大きいね。

ねえ萌恋、せっかく応援するならばユニフォームやメガホンを買って応援しない?

私は優姫に促されるがままスタジアムにあるグッズショップに入った。ユニフォームだけでも何種類もあった。えっ、ピンクや水色のユニフォームがあるってかわいい〜。どれにしよう〜。

私は水色、優姫はピンクのユニフォームを購入して中に入った。練習姿を見ているだけでやはりプロは違うなと思っていた。

試合開始30分前、2人で少し早い晩御飯を買いに行って再び戻った。そしてスタメンが発表された。

ロビンソンズの先発木南と発表されるとスタジアムが響めいた。私はえ?木南っていう選手ってそんなにスゴイの?優姫に小声で話していた。

隣にいた会社員が私に話しかけてきた。木南選手は高卒で今日プロ初登板の選手でロビンソンズ期待のルーキーだよ。とりあえず勝ち投手の権利になる5回ぐらいまで投げてくれたらいいかな。

その話を聞いて初めての試合が高卒の初登板の選手ってスゴい巡り合わせだなと思っていた。

試合が始まり、淡々と試合が進んだ。始まって30分で会社員の言っていた5回が終了した。両チームとも点が入るおろか誰も塁に出ていない。

周りがどちらが先に点を取って抑えるのかとざわつき始めた。前に座っている中学生くらいの男の子がここまでパーフェクトじゃない?生でパーフェクトを拝めるってなったらもう2度とお目にかかれない。

私には試合が動かない単調な試合に思っていたが前の男の子曰くこの試合はスゴいことは雰囲気が伝わってきた。

木南は9回まで投げきって投球数89球、奪三振12と高卒ルーキーの初登板とは思えないほど投球を魅せた。その裏、7番打者からで凡退し8番打者がスリーベースヒットを放ち9番に代打かと思われたがそのまま木南が打席に立った。

初球、木南は来たボールにフルスイングをするとボテボテの内野ゴロで1塁セーフとなり完全試合と初安打、初打点のオマケ付きの成績でそのままヒーローインタビューに答えた。

「完全試合は偶然だと思います。それよりもボテボテの内野ゴロだったのでヒットを打てるように頑張ります」

試合後、私は優姫と共にスタジアムを後にした。

優姫は近くにある公園に行くよとついて行くと佐藤さんが待っていた。萌恋さん、優姫さんお乗りください。

私はそんないつもどこか行く度に送ってもらっていたら悪いから私は電車で帰るよ。気持ちだけ受け取っておくよ。

優姫は何遠慮しているのと私を早く乗るように言われていつも申し訳ない気持ちで車に乗った。

私は今日の試合はスゴかったね。前に座っていた中学生くらいの男の子がこの試合はもう2度と見られないって言っていたから今日の試合を見られてよかったよ。優姫、ありがとう。

こちらこそ萌恋、私をスタジアムに誘ってくれてありがとう。今度は野球の試合だけでなくてアイドルのコンサートとかも観に行こうよ。

私はその時はまたお願いしますといつものラドールで降りて家に帰った。


優姫からの注意、優姫の過去

翌朝、テレビで昨日の試合について報道されていてスポーツキャスターも興奮して話している様子を見て昨日の試合はホントにスゴかった。始めての観戦でそんなスゴい試合に立ち会えたのは奇跡に近いと朝ごはんを食べつつテレビを観ていた。

学校に向かい優姫にテレビで報道されていたことを伝えた。

昨日の試合スゴかったね。テレビやラジオで野球を観るのもいいけれどやっぱり生で観るのが1番だね。ねぇ、今日も試合に行かない?

萌恋、今日は辞めておくよ。それよりも帰りに商店街に行くぐらいならいいけれど野球観戦とかはまた後日にしよう。

私は思わずえ、なんで?商店街がよくて野球観戦がダメなの?

あのねぇ〜萌恋、後2週間したら期末テストだよ。ちゃんと勉強しているの?

私は笑顔で親指を立てた。うん、勿論やってないよ。

そんな笑顔で言うことじゃないでしょ。ちゃんと勉強してちゃんと遊ぶようにしないと。萌恋が1つでも赤点取るまたは中間よりも順位下がったらペナルティーだからね。

「え〜、優姫のイジワル」

萌恋、口を膨らませてかわいい顔をしてもダメだよ。ペナルティーが嫌ならちゃんとテスト勉強してください。

ちなみにペナルティーって何するの?

そうだね……。私の家にある全部屋を掃除してもらおうかな。勿論飲食もなしだからね。

それでも優姫の家に行けるならペナルティー受けます。全部屋掃除させてもらいます。

コラっ、ちゃんと予習と復習しないとダメでしょと軽く注意を受けた。

たしかに期末テストまで残り2週間、テスト勉強しなきゃいけないなと思った。よし、期末テストが終わったら商店街よコロッケそしてラドールのシュークリームやプリンを思う存分食べようと自分に言いかせた。やはり自分は食いしん坊だと自覚した。

そして2週間が経ち、期末テストが始まった。

中間テストよりも科目が多く、日にちも長くて食いしん坊の私としては好きな物を何も食べないっていうのはつらくて禁断症状が出ていたが何とか全日程を乗り切って後は返却を待つのみとなっていた。

帰りに優姫が声をかけてきた。

萌恋、帰りに商店街寄って行かない?

今日は辞めておくよ。

え?どうしたの?いつもなら萌恋が私に商店街行こうよ、ラドール行こうよって誘うのに。どこか調子悪いの?

いや、そういう訳じゃなくてテストの順位が出るまで商店街やラドールも行くの辞めていてさ。

それって私が萌恋にペナルティー与えるって言ったからなのと因果関係ある?

ないよ。中間テストよりもいい順位取ったご褒美に商店街のコロッケやラドールのシュークリーム、プリンを食べようと我慢していてさ。途中、あまりにも食べなさすぎて食べたいっていう禁断症状出て欲を抑えるのに大変だったねと笑っていた。

萌恋、ホント極端だね。そこまでしなくていいのに。早く順位が出るといいね。

1週間後、掲示板に点数と順位が張り出された。

この期間、欲を我慢した結果が表れて欲しいと掲示板で自分の名前を探していた。

45位 早乙女萌恋 750点

やった〜、中間テストよりも順位が上がっている。みんなが掲示板で自分の順位を探しているのに優姫がいない。どうしてだろう?もう自分の順位知っているのかな?それとも見なくても分かっているのかな?とりあえず如月優姫の名前を探すことにした。

えっと……如月。如月優姫どこだ……。あっ、優姫の名前を見つけた。私は掲示板を見て驚いて腰を抜かした。

1位 如月優姫 900点

また満点!?そんなことある?友達を疑いたくはないが裏金で先にどんな問題が出るのか教えてもらっているのだろうか、カンニングしたとか?いや、優姫とずっといる私が親友を疑うなんてことはしてはいけない。そう言えばどうして優姫ってこの高校を選んだのか、この成績ならもっといい高校に行けたのではないのかなと思いつつ私は優姫にカフェに行こうと誘った。

優姫はいいよ。商店街近くのカフェに行こうかと校門を出て2人でカフェに向かった。

優姫は抹茶プリン、私はイチゴプリンをそれぞれ注文した。私は優姫に聞こうか聞くべきではないか悩んでいた。

それで萌恋、順位はどうだった?

私は750点で45位だったよ。優姫、また1位、満点でスゴいね、尊敬するよ。

珍しく優姫はため息をついた。

私は優姫、どうしたの?話があれば聞くよ。

1位、満点って見た時どう思った?

どうって言われても……。優姫、スゴいなって。

やっぱり萌恋は優しいね。私がどうしてこの学校に入った理由って話、萌恋に話したっけ?

たしか優姫が令嬢やお嬢様が言われるのがイヤでこの学校に来たって話を聞いた覚えがあるけれど違ったっけ?

間違ってないよ。間違ってないけれど実はそれだけじゃないの。中間テストやそして今回のテストで1位取ってカンニングしたとか裏金使ったとか思わなかった?

全く思わなかった訳ではないと言ったらウソになるけれど優姫の勉強している姿勢、ノート、そして家で勉強する環境を見てそんなことしない。いや、そんなことしてまで満点を取ろうと思わないしする必要はないってずっと一緒にいる私が保証するよ。

優姫は目から涙を流した。萌恋……ホントにありがとう。今までそこまて言ってくれる人がいなくて今の言葉、身に沁みたよ。

私は友達を信じるのは当たり前だよ。

小学生の時や中学生の時も勉強が出来てこんなこと言ったら偉そうに言うなって思われるかも知れないけれど小学生の時から満点でオール5でさ。それで私が錦城の1等地に住んでいることを知っている子も多くてそれによく思わない子たちが裏金だとかカンニングしたとかありもしないことを言われてさ。

してないのにしたってイジメじゃん。それに根も葉もないウワサを広めるって酷いね。

これは萌恋に言っていなかった事だけど私ね、中学生の時に同級生の男の子から好きって言われて付き合うことになったけれど普通、中学生同士だからそんな贅沢なデートとかしないけれどその男の子は高いレストランやテーマパークにばかり行こうって誘って来てしばらくは2人で支払っていたけれどある日を境に財布を忘れたっていうことで私を支払うことが多くなってなんかおかしいなって思うようになって男の子同士である話を聞いて涙が溢れてさ。

その男の子たちはなんて言っていたの?

「如月といれば自分が財布を忘れたって言えばお金を出してくれる」

私がお金をずっと出し続けたのも悪いけれどその男の子が好きなのは私じゃなくてお金だったとその時に知って帰りに新しく好きな人が出来たってウソをついて別れるようになってさ……。

優姫、つらかったね。私は何があっても優姫を裏切らないし何があっても優姫の味方だよ。これから先、前みたいに変なウワサが流れるかも知れないけれど私が優姫はそんな子じゃないって言うよ。何の取り柄もなくて趣味のない私を見出してくれたのは他でもない優姫でしょ。

萌恋、最後に1つ聞いてもいい?

うん、いいよ。何でも聞いて。

もし私が錦城に住んでいたり、令嬢じゃなくても仲良くしてくれた?

今さら何言っているの。私の家に来たことあるでしよ?ペロちゃんの部屋と同じくらいの広さ、いやそれよりも狭い家に住んでいる感じだよ。

ねぇ優姫、私に入学式に言ってくれた言葉覚えている?

いや、覚えてない。そんな変なこと言った?

勉強が出来なきゃ友達になれないの?運動が出来なきゃ友達になれないの?住んでいる所なんてそれぞれ人によって違うよって言ってくれたのは優姫だよ。それは私もそうだなって思うよ。

中学生の先生からも如月ならもっといい高校に行けるから受験するべきだと勧められたけれど頑なに断って私は逃げるように誰も知らないこの高校に入学したっていう経緯だよ。そして入学式に萌恋と出会えてここならそんな思いしなくてもいいし、きっとこの子なら何かがあれば助けてくれるって思って。

優姫、もう喋らなくてもいいよ。落ち着いて。

私は優姫が落ち着くまでしばらく待っていた。

30分経って優姫から萌恋、もう大丈夫だよ。気持ちが落ち着いたよ。

私はそれならよかった。ねぇ優姫、「しんゆう」ってどういう字を書くか分かる?

そりゃあ親に友と書いて親友に決まっているよ。

そうだよね。普通に書いたらそう書くし何を聞いているのか思われるよね。でもね、私はしんゆうって別の字を充ててもいいのかなって思うよ。

優姫はどんな字を充てるの?

私は心の友って書いて「心友」って書いてもいいのかなって思っていてさ。理由としては互いの苦楽を共に分かち合うのがホントの友達なのかなって。

たしかに萌恋の言う通りだね。これからの座右の銘にさせてもらうよ。ここは私が払うよ。

ありがとう。じゃあこの後、一緒に商店街のコロッケを食べて帰ろうよと伝えた。

2人でコロッケを食べてそれぞれ帰っていった。

私は優姫にそんな悲しい過去があったのか、せめて一緒にいる時くらいは共に笑っていられるような関係でいたいなと改めて感じた。

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