第5話 印象

「メイミアとシオンっていつから一緒なんだ?」


 帰り道にそう言った質問や「面白そうとか、物静かとか、会ってすぐ意気投合したとか。やっぱ長い付き合いになる人ってそういうのあるか気になってさ」と続く。


「余り、いや、特には」


「そうか。俺はシオンに会った時は確か」


「行って来たら?」


「えっと…シオンは天才って言われてたじゃん?」


 口数が流れるように進むミグサは気が動転しているかもしれず「結果これだけど、天才は聞いたことないよ?」と寄り添うが、それで気になった俺を見た印象が驚きだそう、確かに入学した頃は声を掛けられる言葉が決まってその白い羽根は何?だった。

 白い羽根は俺の周りで宙を舞っていたメイミアで、当時はまだメイミアの席がなく俺の周りを浮遊していた。


「人気だったよな、確かその数日後にメイミアが入学したん」


「アイツがベラベラと喋らなければ…」


「なんて言われたんだ?」


「ほっといてくれ…たく、豚に真珠で悪かったな…」


「は? 豚に真珠が、何?」


 蘇る過信、油断、慢心。

 片や「羨ましいと思ってた」と聞こえる。


「どこが?」


「だっていつでも一緒だし、シオンとメイミア。廊下ですれ違う姿が印象に残ってる。ずっと神秘なまでに感動したから」


 想像したら「…便所に行った時か」と零れる。

 便所の寄り道の出来事で感動した事になるから下校にしてくれと催促され「毎日補習だったからみんなと同じ時間に帰ってないよ」と重ねていたら「じゃ、じゃあ中途入学は凄いだろ。絵に描いた天才だ」と、温かさを感じる。


「まあな。かげで天才と謳われた期待も簡単に裏切ったからな、凄いだろ」


「…やさぐれてないか」


 静けさが物語る程後ろにいるミグサ、きっと友達の評価を踏みにじったが続ける。


「首席に合う友達は沢山いる。進級して話し掛けられるのはミグサくらいだし、印象悪くなるから」


「喋らない方がいいって言いたいのか?」


 紡がれるは「そういうの毎日学校に来る奴の台詞だろ」だった。


「…」


「明日からちゃんと来いよ、一日一回笑うまで喋り続けるからな!」


 笑顔で姿を消すミグサ。

 そのやりとりを部屋のベッドに転がって思い出した。


「来い、か」


 腕の隙間から窓が映る。

 雲が月に被さる頃。

 玄関に飾る貝殻に紅い羽根と青い羽根のピアスを入れ、外に出る。

 殺風景な場所にポツンとる鳥居をくぐり、石段を上り漸く着いた。


「これが神社…」


 両膝を付いて見渡すその注連縄しめなわにある紙垂しでの真下、お賽銭さいせんの前にある本を発見する。

 開くと白いページが続いているのを確認していたら空へ突き抜けるかの光が体から発せられ。


「ぷっわぁ」


 ふざけた声で胸から飛び出す生物を掴んでにらんだ。


「ようシイナ、よくもまあ抜け抜けと出て来れたな…」


 液体なのか個体なのかはっきりさせるため締め上げるとぶるぶるするシイナ。


「あぁ…あれは仕方な痛たたた痛いですよ‼︎ 原形無くなりますって!」


 個体が「転移のために来られたのでは?」と脱した。


「その前に気になるから調べてる」


「御言葉ですが。封繋つなぎを調べミグサ様と屍人しびとの関係性は不明かと」


「ミグサを知ってるの?」


「はい。シオン様から見ていたので、屍人が離れた辺りですが」


「変態」


「んな⁉︎」


 空気を弾くシイナ。


「僕はシオン様を純粋じゅんすいに知ろうとしたまで。ですから汚物を見る様な目で後退あとずさりしないで欲しいです」


「…。屍人って何?」


「亡くなった人です」


封繋つなぎって何?」


「屍人を現世にとどめて置ける本です。またすでに使用済みです」


「分かりやすくお願い」


「では、本は魂のドーピングです。ミグサ様が開いたといた事で一緒に居られたのではないでしょうか」


 難しい。

 けどシイナの話とメイミアに共通点があった。


「本人は取り憑かれてたって言ってたよ。魔力吸われてたし」


「逆です。解放者は生命力をいちじるしく消耗致しょうもういたしますし、そうしなければ屍人は消えてしまいます」


 消える、そうか。


「遅かったのか」


 肩が落ちる。

 こうやって行動していたのが久しぶりで心の支えになっていたかもしれない。


「いえ、そこに」


 シイナの声に向く暗闇から人影が近づいてくる。

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