第10話 魔王事情

王座でグラスを回し頬杖をつく魔王と。静寂の間にシュタラさんの声が通い出した。


「招集した理由は他でもない、この短期間で我々の軍事力が大幅に失った事から各軍の戦力を再構築する。とりわけ三と六。この数字を持つに相応しい魔物を決める場として、意義のある者は挙手して欲しい」


一通り目をやるシュタラさん。

そこで手を上げる者が現れる。

優しい目元に紫の翼を持つ魔物が立ち上がり、総勢の関心を集めていった。


「進言致します。私は三.六に対し現状の軍からの選抜に危惧しています。現に二名は勇者侵攻に打ち倒されてしまった…新たに適任した場合、危険視され、それこそ戦力を失います。現状に耐えながら相応しい魔物が現れるまで、私は反対です」


恐る恐ると説く魔物に一人、更に一人と拍手が連鎖した。

これが暫く──そして鳴り止み。

頷いてシュタラさんが応える。


「その通り、ギルドの懸賞金が増すだろう…では、空席のまま我々の戦力低下を敵に知らしめる事はどうだろうか? 攻めこむ隙を与えない為に、力を誇示こじする必要性は今も昔も変わらない。強い魔物の誕生を待っている時間、敵はそれを許しはしない。魔王軍を招集したのは、同胞を危険に晒す訳にはいかない重要な決断だからだ。意義のある者は」


演説に対し、紫の翼を持つ魔物は首を振って座る他、挙手する者は出てこない。

 総勢の同意した時間が過ぎていった。


「これより羅列られつの審議に移るとする」


シュタラさんが言い席を外す。

次第に和みを取り戻す広間で、俺は演説の言葉が気になった。


「羅列って何?」


アメジストに聞いてみる。

すると俊敏しゅんびんな反応を示して。


「それはだな──」


目をバチっと光らせ腕を組む。

壮大に溜める様子に見入っていたらアメジストから汗が流れていた。


「知らん。それよりこの肉旨いぞ、食ってみろよ?」


笑いだすアメジストが隣の席から肉をさらう。

その剛鉄と呼ぶに相応しい腕が震える視界に黒い液体が流れ込んだ。


「何で、隠すんだよ」


青い魔力が身勝手に湧き出し髪が揺らぐ感覚があった。

また体から湧き出す魔力がアメジストのあごに向かってなぞっていく。

あごから頭へ、そして首に到達していく。


「ちょいちょいちょいちょいたんま‼︎ 何が合ったか知らねえが凄え怖いぞ、アレか? 羅列か! 戦力を指数で表して……それで、悪かったよ!」


ほぼ視界に溶けた真っ暗の光景で、きしんだり食器の音が響き出してくる俺は分厚い胸に利き手で触れる時だった。


「うぐっ」


無理やり入るものを飲み込みながら鮮明な視界に戻る。

見れば俺の口にフォークを突っ込んでいるアメジストに。


「美味し…じゃないごめん」


引っ込める利き手を左手で抑えた。

アメジストは料理を宥めフォークをゆっくり置く。


「だろ? まあ、悪いと反省する。次から気を付けるから」


視線を泳がせつつも硬直の俺と目を合わせようとするアメジスト。

その視線が合わさった時、息を飲む様に紡がれる。


「殺気だけは辞めてくれよ、成り行きはどうであれ魔王城に居るって事は家族みたいなもんなんだから」


言って震えていた。

実際に体が震えているのかどうかで言えば違うけれど、目線の瞳が微かに。それでも見ようとする姿に魔力が薄らいでくる。


「家族」


口にし水面に雫の落ちる描写が過ぎる。

まるではっとした束の間のことだった。


「おっ! 総括軍隊長」


アメジストが向き直っている所、真横から腰を曲げた姿勢で覗くシュタラさんに俺は仰け反っていた。


「シオン殿、腕前について聞いておきたいんだが」


どんどん接近するシュタラさん。

その重要だとばかりの態勢に対応する。


「腕前というのは?」


変な質問に戸惑うが、シュタラさんの指を差す方向に合わせ補足される。


「あそこで実力を披露して貰う。得意な戦術で構わないが、相手が必要なら俺が立ち合うつもりだ。攻撃か守備か、どれだ?」


それはアメジストが言っていたステージを指し、


「得意な戦術は……。守」


「それと守備なら魔王自ら立ち合うと仰っていた」


「攻撃で!」


「そうか。なら俺が防壁役になろう、名を呼ばれたらステージに上がってくれ」


端的に告げていくシュタラさんを眺め、視野が暗くなった。

攻撃って何だよ…。

そもそも魔術なんて使えないし…。

でも魔王の攻撃なんてもっと嫌だ、嫌だから旅立とうと立ち上がった。


「ッ⁉︎」


しかしアメジストが俊敏に腕を掴みかかって身動きが拘束される。

気付けば魔力の余波と影掛かる岩の顔が鼻に付く。


「どこへ行く?」


「お花を摘んでくる」


「ついさっき便所まで突っ走ってたよな。腹の調子が悪ければ上機嫌にメシ食えねえはずだ…さてはビビってんじゃねえだろうな?」


「いや…美味すぎて…。」


思わず下を向くと「おうおう」と顔を迫られる。


「なあ俺らは血よりも濃い家族だろう?」


「…でもまだホクロの数も知らないよ」


「一つ屋根の下で同じもんつつき合ったんだ。な?」


一度は感動を覚えたが話を聞いてると勘違いだったらしい。

俺は縮こまった背を向けて歩いて言った。


「じゃあすいませんがご縁がなかったと言うことで」


ある意味清々しく出ていける。

心残りは情報収集が乏しい事だが新しい地に新しい生活が堪能できると思うと嬉々していた矢先。


「昔の魔王軍はしょっちゅう裏切り者を抹殺してたな。魔王が」


しおらしい声が掛かる。

俺は動きずらい首をアメジストに向ける。


「…そういうの下っ端の仕事じゃないの?」


一応聞く。

でも脅しに決まってる。

でも仲間が欲しい身としてはそれは困る。


「魔王は愛情深いから自ら引導を渡してくれる、そいつの親兄弟と一緒にな…」


見ると記憶を懐かしんでいるかの声や身体の安らぎが伺える。

マジ?


「因みに今までの生存率は…」


俺は苦いものでも食べていたかの様に頬が強張った。

一方アメジストはバチバチッと眼を光らせていた。


「いないぞ…」


◇◇◇


宴の夜を連想する暗がりの広間で人相悪く声を荒げている人達。そんな光景を座ったテーブルから見飽きてうつ伏せていた。


「思えばそこまで変わってもなかったわ」


愚痴が零れた。

一体何がこうさせるのか、日頃の行いなのか、反省しうる可能性に耽ていると大層機嫌のいいアメジストが…。


「しかしアレだ、お前が選ばれてるとは…。皆を癒す系だと早とちりしてしまった。うん、いびったらヤバかったな! ハッハー!」


かれこれずっとはげましてくる。威圧感が、威圧感が良いと俺の長所はそこしかないらしく、そもそも。


「こんな沢山の前で披露とか嫌だ…」


本気で駄々をこねている間に周囲はざわめいていた。

それら興奮宛らの発声と共に言われる。


「選ばれちまったんだから腹くくれよ。ほら最初の奴の出番だ。うずくまってないで見ておけよ!」


揺さぶられる。

それも根気よく揺さぶられるから渋々顔を上げていた。

瞬間だった。

頬に冷気が流れ込む。


ひりゅゅゆ──

 ふぅぅうぅ──


不意に戦がれた気がした。


「何?」


振り向くと誰もいない。

でも室内に風が吹くはずはなく、隣はアメジストだし、無人の方から流れてきたけれど。

後ろを通り過ぎていく何かが冷たくて冷気の風が当たった様にも感じる。

ひりゅゅゆっと。

振り返ると飲み物や氷を運ぶ人達がいるし偶々かもしれない。

けど二度目は横に誰かが居た気配がした。

はずが誰もいないし勘違いだと、そう思いながらステージに立つ魔物に目を配ると寝ぼけていた脳が覚醒した。

理由はステージに立つ魔物の上に魔法陣が発現を起こし、魔力が声に作用している過程だった。


「女神に抗い翼を仰ぐ 吐息で沈めた大地に捧げて 地獄を統べた氷の化身」


言霊。

それが干渉不能の法則で魔法陣を完成させた。

掘り下げると魔力を操る技術は意志や支配の具現化とする魔術に対しこの場合、魔力自体を言葉で呼び起こしていた様に感じる。


ゅっひゅっひゅっ──

 ふぅぅうぅふっフッ──


「…見つけた」


俺はさっきの正体を確信する。

今まさに冷酷な表情が読み取れる生命が魔法陣に映った瞬間があった。

まるで一目で美と認知する冷たい視線が脳裏にまだ残って、半分女性に半分獣の妖怪がうめいていた。

最もその妖怪が憎悪を増幅するかの如く俺の脳裏で表情を作り変えた。


「第四魔法陣 秘めた息吹アペルティオー フローリス


魔物の声が上がる。

橙色の瞳が紫に変色を遂げ魔力の拡大するステージに魔法陣から氷柱が発現し、ステージを囲う透明防壁に氷が飛び交う。

氷雪の様に地が埋まりそれら冷気が魔物に集まる。

冷気は結晶の様に収縮し透き通った六角形となって水色の魔力を帯びている。

魔物はそれを剣で刺し立体の六角形が急速に白く発光し、弾け散って爆発した。

輝く水色がステージに蔓延する霧の飛沫が薄まり、魔物が立つ地につやのある爆発痕が出来ている。

それは爆発の威力を表すより、粉塵よりも細かいナノクラスの冷気はへんによる脅威きょういだと思うそこで辞める合図が魔物に送られた。


「これを以って魔王軍の六の称号に相応しいか。皆の意向を示して欲しい」


指揮をとるシュタラさん。ここで賞賛が巻き起こりアメジストが言った。


「ああやって魅せるんだ。総括軍隊長が防壁してくれるから全力で振えばいい」


アメジストが料理を頬張り、俺は軽く頷いていた。

ステージに立つ魔物に皆の意向を汲むシュタラさんが六の称号を与える中、またシュタラさん自身も二の称号を担っていると演説した。

その演説が頭から抜けていく程記憶に没頭していた矢先、魔物達が席を立って野次を飛ばした。


「何故シュタラ様が三位に降格するんだ」


「一位がシンク様。二位にシュタラ様。絶対的羅列に何故?」


「羅列を決めるんだろ、だったら誰が二位を受け持つんだよ⁉︎」


興奮する魔物達が暴れ出した。

聞くと魔王軍のNo.ニから三に移籍するとシュタラさんが口頭し軋轢を生んだそうで、思わずシュタラさんの演説に注目した。


「俺の一存で決めた。意義は認めん。次に移る。シオン殿、ステージへ上がってくれ」


シュタラさんがこちらに目を配り暴れる魔物達の動きが鈍る。

途端に総勢の注目を集める、俺。

沈黙と血走った視線達に送られながらステージに立つ俺は最悪の絶景に顔が引き攣った。


「この者をNo.二に推薦する。この中で彼を知る者はいないだろうが知るものぞ知る手練れであり俺自身未だ想像できぬ原石だ。ここで我々に真の力を証明してくれるだろう。ではシオン殿」


言われ披露の合図が掛かる。

と同時に皿が割れ出し罵声の嵐が起こる中。


「………クスっ」


「シオン‼︎‼︎」


ものを震わせる声が響く、そのアメジストがいい顔で繋げる。


「負けんなよ」


沈黙。この場に伝い大勢の魔物がアメジストに鎮圧された。

また全員が睨みに見えていた視野は期待の表情を映し込む様になり、目を瞑った。


考える事は攻撃、攻撃、攻撃。


探りながら青い魔力が宙を泳いでいく。

この頃の魔力は死に物狂いで戦ったことがあるが、再現性のない攻撃が浮かぶ。

一方で魔術を習得していればと後悔するが過去を頼りに思い出そうとすると、辛い。

よって新しいものへ挑戦することにした。

俺は天を這うかの魔法陣を思い出し言霊する。


──鬼神化身し与える──大気を熾し妖艶惑わし唸れ──


言い切って魔力が作用する感触がした、刹那。

魔物達の動転の表情を最後に意識が乗っ取られていった。


フゥゥ──

 ビリュルル──


脳裏に瞳を光らせる存在が語り掛ける。

だめだと。

魔力量然り全く足りないという。

俺は突然の事態に恐れながら話を伺った。

すると力を貸す見返りの魔力が足りなければ発現出来ないと続いた。


「だがお前の教師から魔力を献上させると見込めるなら力を貸していいが?」


力を、貸す?

俺は総じて言葉の意図が分からなかった。

ただ雰囲気から言霊と魔力で発現するものでない事は悟った。


「どうする?」


問われる。

内容は力を貸す分の魔力量を先生に肩代わりしてもらい、力を発現させるという説明の末即答した。


「嫌」


「何故だ?」


「肩代わりが承諾できない」


「いいや、アイツにとってお前は生命の活力になっている。別の世界で窮地だったとゆすればいい」


言われ魔力が好物であると主張される。

ひとえに魔力の取引に俺を利用したいらしい。

俺が断ると了承するまで取り憑くと聞かず、一点張りのやり取りから方向性が変わる。


「なら野望は何だ?」


「聞いてどうすんの?」


「力無くして成り立つ野望はない」


「なにも先生に肩代わりしてくれてまで叶えたいと思えない」


「お前一人で大成出来るものなのか?」


「一人じゃなきゃいけない」


「言ってみろ」


追い込んでくるかの話がある記憶を呼び覚ます。

俺は妖麗に咲う姿を鮮明に思い出して言った。


「倒したい奴はいる」


「誰だ?」


「悪魔」


そう言わされた気分がした。

しかし野望という本質に絡んでいるだけで今となっては優先順位が低い。

新しい地に来て思い出すきっかけ自体少なくなるはずだ。

ならそれでよかった。

ただそれだけだ。

だがこいつは耳を閉ざせない脳裏で笑い狂っていた。


「何がおかしい…テメェ」


「ふっ。よりにもよって魔力位が悪魔。そんな下剋上から何を得る?」


「お前に話す必要はない」


「ふむ…まあいい。こちらとしては久しく笑えた。契約者が俺を呼んだ事象も含め。足して訂正するが取り憑く気は毛頭ない、だが悪魔を討つなら契約相手と上手くやっておけ」


「シイナを知ってるのか?」


「ほう。そのシイナとやらに聞いておけ。だが今回だけは俺からの前祝いだ」


言われ彷彿する紅い魔力が胴長に暗闇を照らす。

その光が地を這い存在感と共に薄まっていく。


「…シイ…ナ。シイ…ん。ガキの頃にそんな名前聞いた様な…何だっけか…んー歳は取りたくねえもんだ…」


独り言かの余韻が脳裏から消えて、俺は意識を取り戻した。

そして視界が切り替わる広間で魔王の愕然たる姿が映る。

合わせて体中に紅く駆ける魔力を感じ、頭上を見ると完成された魔法陣から紅い魔力が発生していた。


「そこまで」


魔王の声が室内を通る。

俺はその時理解した。

最後の言霊を唱えてはいけないという事に。

少なくともシュタラさんが琥珀色の剣を構えている事実がこの判断を後押しさせる。


「はい」


俺は自然消滅まで時間を要した。

魔法陣が空気に消えるまで剣を収めずにいたシュタラさんや総勢の動揺が渦巻いて止まない。

そんな中魔王が隣に赴き俺の肩を引き寄せて言う。


「私の一存で此の者を推薦した、そして皆を招集した名目は我々の勝利と守護。二の称号とは私を脅かす存在として皆に告示するため。尚今まで通りシュタラには総括軍隊長をやってもらう。以上だ」


古参らしき魔物から伝説と歴戦の言葉が届く舞台で、魔王はひるがえし、俺はニの称号を担う事になった。


◇◇◇


あれから朝起きた部屋に案内された。

また、勇者から守る護衛になって欲しいと魔王に依頼され、俺は腕を枕代わりにし絨毯の上でついその出来事を振り返っていた。


「何か、変」


俺は護衛を承諾したが肝心な所は分からず終いで、駆け引きだったのだろうか。

元々魔王城に行く事自体はシイナの提案だし、運が良いのか、魔力に満たされいい気分でいる。

のに腑に落ちない。まるでこうなる事が決まっていたみたいに、変。

でも考えてももどかしいだけで何も分からない。

きっと聞いても答えてくれないだろうけど、シイナはどこで何をして…。

違う。

話が飛んで沼にハマってる。

俺は自分のすべき事に集中すればいいだけだ!


「ん…」


そう意気込んで体を起こしたら宙に落ちる白い羽が見えた気がした。

しかし左右を見ても何もなく、バンと寝たら真上にいた。


「ふーん」


「いや…。近くね?」


両手で床を押さえてムッとした顔を突き出すメイミアだった。

俺は髪が肌に掛かって痒く、そう伝えると圧迫が加速し出す。


「寝心地良さそうなベッドで羨ましい限りだね…シ。オ。ン」


「だから近い…なんでここに来れるんだよ⁉︎」


驚いて距離を取っていたら横目で睨まれる。


「時間を掛ければどこに居ても分かる。悪魔舐めないでね?」


「置いてくるんじゃなかった…で何?」


咄嗟に耳を触っても無い俺は細い目で注視した。

ただ既に視界から消えていたメイミアが楽しそうに話し込む。


「いやね、ミグサが連れ戻して来てくれーって。代わりにケーキご馳走になったからね、半殺しにしてでも連れて帰るって約束したんだ、あとね」


後ろから熱を感じる。

首周りは熱いし、こないだの出来事が懐かしくなる前に遮った。


「寄るな。こっちだって約束したんだから帰る気もない」


「じゃあ寝る時は気を付けないとね?」


言葉を残していく様に、俺は部屋から去ろうとするメイミアを引き留めた。


「睡眠不足になるわ。てか…色々良くして貰ったし、守るって約束をしたからには」


自分に言い聞かせるために言っていたが、メイミアは重たそうな目で「うん」と。


「知ってる。だから?」


ジトーっと浴びせてきた。


「だからって、知ってるなら尚更分かる」


「訳ないよ。シオンのせいで飯なし野宿だったんだよ、手足の二三本落としてもお釣りが出るよ」


知らねえよ…。

俺は心で思った。

ただ聞く限りあくまで興味は無いようで、ポッケから鍵を取り出した。


「なら俺の家で好きにしてくれ、ミグサには悪いけど」


睡眠不足は困るって言うつもりが、眉を細められるメイミアに気付かされた。


「鍵は。持ってて損はないんだけど、まいっか!」


「でしょうね、渡して直ぐ思い出したわ。いつも普通に家に居た奴が野宿ね?」


弄ばれている事に気付いて、俺はベッドに転がった。

すると追い掛ける様にメイミアがこちらに来て。


「ある二人が手紙のやり取りをしています。さて誰でしょうか?」


「知らない」


俺は謎々っぽい話しに背を向けた。


「一人はここを治めている人、もう一人は歴戦の勇者……。」


体温が近付いてくる。

進まなくなる話しより背にした行いに後悔する。


「はいお終い!」


「…。ここを治めてるってシンクさんじゃないの?」


言いながら振り返ると微笑みが送られた。


「ハイ正解! ならどうして勇者と手紙のやり取りをしているのでしょうか?」


更に服を摘まれニヤニヤと問われる。

けど凄く簡単な問題だった俺は「宣戦布告」と伝え答え合わせに望む。


「………」


まだ?


「………」


まだなのか?


「じゃあここで。ロマンの欠片もないシオンにヒントだよ!」


「……。もう帰って下さい」


「折角面白い話を教えてあげようと思ったのに、つれないな!」


「なら簡潔に教えて欲しい」


「んー要は、魔王とヒビキ先生がお知り合いってオチでしたとさ。めでたしめでたし」

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