おしえてあげる
晴れ時々雨
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瀕死の男の子を拾ってきた。希死念慮か何か知らないけど、わざとらしくゴミ捨て場の横なんかでぐちゃぐちゃになって倒れていて、汚らしいのと怖いので爪先で生死を確認すると目蓋が一瞬震えた。
ほっとしたのも束の間、もしかしてもの凄くめんどくさい事に首を突っ込んじゃったような気がしたけど、このまま置いといたら本当に死ぬし、あたしが殺したみたいで寝覚めが悪くなるのも嫌だから、しょうがなく背負って帰った。
乾いていたけど、その子は遺跡の石レンガみたいに重くて冷たくて、触れ合ってるところからあたしの体温をどんどん奪う。持ち上げるとき意識があるのかないのか、一応自力で立ったけど有り得ないくらい足ががくがく震えていた。
しかし大きいなあ。腕を引っぱりあげて背中に背負ってもこの子の足は地べたを引きずっている。家に着くまでに足がすり減ってなくなっているかも。そしたらさらに七面倒臭いことになるだろう。
やっと着いてまずお風呂にしてあげる。体を少しでも温めればきっと震えぐらいは止まるんじゃないかな。よおくよおく身体中を擦る。まだ少し震えてるけど目を開けるようになった。
その子は何か言おうとした弾みで咳き込んだ。耳が熱い。取っておいた水を少しずつ飲ませると、ごめんなさいと呟いた。
いいよ。あたしちょうど一人暮らしだし結構生活に自信あるんだ。それに前は誰かと一緒に暮らしてたこともあるんだ、そこまで言うと彼はその場でぐたりと柱に凭れた。
さあおいで。あたしは彼を寝床に引っぱり上げぎゅうと抱いた。さっきと打って変わって夏の地面みたいにかっかする男の子はあたしの冷えきった体をあっためる。すーこ、すーこと浅く熱い寝息があたしのおヒゲに当たる。足が削れてなくてよかった。あたしは彼の足を舐めたあと、おでこを丹念に何度も舐めた。
君には飼い主がいたの?彼の首に首輪のあとがくっきり残っている。ゴミ捨て場でぼろ屑みたいに丸まっていた彼を思い出し、野良って今は大変なんだよ自由だけど、とぶつくさ言いながら、彼の首を舌でしつこく撫でつけた。
おしえてあげる 晴れ時々雨 @rio11ruiagent
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