3-13

13 ポーラ


 眠っている間、たくさんの涙を流したような気がする。

 わたしのこころは虚ろで、からっぽだ。

 生まれたときから、すべてが与えられていた。

 名前も、地位も、名誉も、役目も。

 そして能力も。

 それらはわたしが勝ち取ったものではなくて、最初からそこにあったもの。

 わたしの意思とは無関係にそこにあったもの。

 この人生すべてが、わたしと無関係に進んでいく。

 大海の真ん中でどれだけもがいても、潮の動きを変えられぬように。

 わたしがなにをしようと、この世界は変わりようがない。


 ほんとうにそう?


 今でも思いは変わらない。虚ろだったものは埋まらない。

 無力なわたしは無力ななままだ。

 でも……今は寂しくない。

 その無力な自分の内側にも、あの星空の美しさを映し出すことはできると知ったから。

 どんなに世界が手強くても、少なくとも向き合い方はわかったから。

 わたしは自分の無力さから、目を背けない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る