✳︎✳︎

手紙を読み終わったきみは、泣いていた。

「ぼくの手を握って」

そうすれば、きみは泣き止んでくれる。またあの笑顔を見せてくれると思った。

「……ありがとう」

ぼくの手を握るきみ。手は震えていた。


「勘違いしないでほしいんだ。ぼくはきみのおかげで本当にたのしい日々を過ごせたし、最後にきみと──死ぬことだって、ぼくは幸せだと思っているんだよ。心のそこから。なにより、ぼくには」

ごめんね。

「ぼくにはきみが必要なんだ」

ぼくには、きみを抱きしめる力もない。


「大好きだよ」



せかいの片隅、破裂音が二度、鳴り響いた。

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きみとぼくのせかい 月乃 @tsuki__

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