その魔法使いたち

宮野コガラシ

第1話 その町は

 世界のどこかにある1つの街。

 その名は「サハル街」と言う。

 サハル街には世界でたった1人しか存在しないと言われる「魔法使いが住んでいる街」だった。

 魔法使いの使う魔法のおかげで街の人々は豊かに暮らせている。

 そんなことを聞けば、サハラ街に移り住みたく向かう者も現れるが、移り住むことができなかった。

 何故か。

 サラハ街がどこにあるのかわからなくなってしまったからだ。

 昔は地図があり、知っている者もいた。なんならい観光で行ったことがある者もいた。

 だが、いつの間にか街ごと姿が消えていたのだった・・・



 むかし むかしのお話。

 ある町には災いが起きていた。

 いくら水を飲んでも喉が渇く、熱もあり下がらない、体には湿疹ができ痒みを伴う、全身の痛み。

 こんな病は初めてだった。しかもこの病はどんどん広がっていく。そしてついには1人目の死人が出た。すると次々に病にかかった者が死んでいった。

 「この町にいたら病で死んでしまう!」と恐れた5人家族の一家がいた。その一家は町を飛び出し、他の町へ向かい旅立った。が、血だらけの父親と父親に抱えられた末娘だけが町に戻って来た。「この子だけでも助けてくれ」とだけ言い残し父親は亡くなった。しかしその末娘もすでに亡くなっていた。

 町の外で何があったのか。母親と子供はどうしたのか。助けるべく若い青年5人が武器を持って町を飛び出した。

 数日後・・・助けに行った青年の1人が帰って来た。

「何があった!」「仲間はどうした!?」「獣は退治できたのか!?」っと青年に聞く。

 青年は怯えながらこう言った。

 「みんな死んだ。子供のおもちゃのように遊ばれ、つまみのようにポンっと食われた・・・あれは獣なんかじゃない。あれは見たこともない化け物だ!!」

 化け物の事を聞き出そうとしたが、ぶつぶつと何かを言っているだけで、青年はまともに話が出来なくなってしまった。

 人々はどうしようもできなくなった。

 町にいれば病にかかり死んでしまう。町の外に出ようとすれば化け物に殺される。

 人々は病んでいた。

 病への恐怖だけだったのが、いつ化け物が町を襲ってくるかわからない恐怖。恐怖に耐えられず自殺するもの、一家心中するもの、殺人を犯すものが現れ、助けに出て帰還したあの青年も自室で亡くなっているのを家族が見つけた。自殺だった。町はもう終わりだと誰もが思った。


 1人の少年が外に出て地面に絵を書いて遊んでいた。すると地面に1つの影がすーっと横から現れた。雲ではない。雲が横切るスピードとは明らかに違う。またその影は不規則に動き回っていた。少年は影に興味を持ち追いかける。影は早く追いつかない。少年は影を見失ってしまった。影を見つけられず帰ろうとしたとき、影が現れた。少年は影がこっちに来いと言っているような気がした。

 影を追いかけると、町の中央広場に付いた。その中央広場には大きな噴水があるが、その噴水からは水は出ていなく干からびており、ボロボロであった。影はその噴水の真上で止まった。

 少年が噴水を見つめていると噴水から液体のようなものが出たように見えた。少年は何だろうと思い手を伸ばすと、噴水から勢いよく水が出て来た。少年は驚き後ろに倒れそうになった時、誰かに腕を掴まれ引っ張られた。

 噴水から水が勢いよく出たとき、町中に大きな音と揺れがあった。大きな音が聞こえる中央広場に人々が集まって来た。

 枯れていた噴水から水が出ていることにも驚いたが、その噴水の上に先ほどの少年を抱えて立っている男がいる事にも驚いた。

 いや、立っているのではなかった。その男は浮いていた。

 その男は白いとんがり帽子を深くかぶっており顔が見えない。白い長いローブを着ていた。全身真っ白の印象だった。

 その浮いている男は、周りを見渡し、噴水から降りて来た。人々は何がなんだかわからず、その男から距離を取った。

 「お、お、お前は何者だ!町を襲いに来た化け物か?」

 「化け物?失礼ですね。そんなんじゃありませんよ。」

 「もう止めて!これ以上何も起こらないで!」

 「怖いよ。」

 「この町も終わった。」

 「やめてくれ!殺さないでくれ!!」

 町の人々はその男を怖がっていた、もしかしたら外から来た化け物なんじゃないか。私たちを殺す者なのではないかと。

 「落ち着いてください。私はあなた達を、この町を助けに来た魔法使いです。」

 そういうと聞いたことのない言葉を唱え始めた。すると魔法使いが抱えていた少年が光り出した。人々はその光景に驚いた。少年の光は1つの玉となり空高く上がっていき見えなくなってしまった。何が起きたんだと考えていると、上空で爆発する音が聞こえた。すると空からキラキラと光る金色の粉が町中に降り注いだ。

 「その光の粉を浴びてください。病も災いも去っていきます。」

 そんな言葉信じられなかった。だが、泣く力もなかった赤ん坊が元気に泣き出した。咳が止まらなかった者は咳が止まり、熱が下がる者、痒みが収まる者、それだけでない。怪我をしている者は怪我が治った者もいた。

 人々は驚いた。そして喜んだ。まだ生きれる。この町は復活できると。

 「これは私だけの力だけではないよ。この少年の助けがあったからこそできた魔法さ。ありがとう。」っと少年の額にキスをした。


 そして魔法使いはこの町で暮らすようになった。

 光をまとった少年の一家は、町を救った者として町の英雄として掲げられた。

 この町は、魔法使いに救われたのだ。

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