第22話
私の言葉に虚を突かれた様に目を見開くクリスだったけれど、次の瞬間、正に大輪の花が咲いたかのように笑った。
「それなら心配はいらない。僕の初めては全てアディのモノなのだから」
「え?まさか・・・だって閨の勉強があったんじゃ?」
「あったよ」
「じゃあ、先生様とあーんな事や、こーんな事しまくったんでしょ!!」
男の人はそう言う事に興味津々で、チャンスがあれば食い散らかしちゃうでしょ!
ましてや、クリスは美形だし、女の方が放っておかないでしょ!
「あぁ、それはない。僕とレオンは座学で習ったから」
「座学?実地じゃなくて?」
疑いの
「じゃあ、別に無理して話さなくていいわよ」
「いや、アディの憂いが晴れるんなら喜んで!」
と言いながらも、恥ずかしさを隠すかのように淡々と語られたそれは、正に黒歴史・・・・
クリスが十五才の時にレオンと共に閨教育が始まったそうだ。
そしてその初日に、彼等は黒歴史を刻む事となる。
内容が内容な為に、夜に王子二人と教師役の男女、お目付け役で何人か室内にいた。
流れ的には、女性の身体の事や、何処をどうすれば気持ち良くなるかなどのレクチャーの後に、実際の交わりを見てそれに参加・・・と言う流れだったようなのだが。
「教師役の女性が裸になって色々説明し始めて、局部を見せられた瞬間・・・吐いちゃったんだよね・・・・」
・・・・・確かに、喜んで話すような事ではないわね・・・・・・・
元々、性的な事には興味が薄く、知識的には習う前から王宮内での噂話や下ネタなどから自然と理解していたらしい。
でも、興味がそれほど無いから余り深くは考えていなかった。
そんな中での閨教育。
教師役に選ばれるのは、大概、高級娼婦の中でも一番人気の女性だ。
高級娼婦とは知性と教養は勿論の事、口が堅い事が最も重要とされている。
彼女等の馴染には、高級官僚などが多いから。
また、王子達の性の指南役として指名される事は、彼女等にとっても店にとっても名誉な事でもあり、箔がつく。
此処で疑問になるのが、口が堅いのに何処から洩れるのか・・・・
―――持ちつ持たれつ・・・・世の中、そんなものである。
彼等の教師も例外なく、今話題の高級娼婦が選ばれたのだが、何故かクリスとレオンには恐怖に似た感情しか抱けなかったようだ。
「多分・・・彼女の目が怖かったんだと思う」
「目?」
「あの薄暗い中でも、ギラギラしていて、まるで捕食者みたいだった」
訳の分からない恐怖心を抱きながらの特別で怪しい授業。
緊張も最高潮な中での、局部の御開帳。
夕食後だった所為もあり、盛大にゲロったクリス。
それを見て貰いゲロしたレオン。
色んな意味で、阿鼻叫喚の様相を呈したらしい。
そんな事があって、座学へと変更になったそうだ。
「教師役の方、ショックだったでしょうね・・・」
その教師役の女性はきっと、若くて美しく将来は最高地位に就くであろう少年達の初めてを、自分だけが独占できると興奮していたのかもしれない。
プロなら顔に出しちゃダメよね。怖がられる位、ギラついてたなんて・・・ないわぁ・・・
「僕はアディが好きだったから、他の女性の裸を見ても興味も湧かないし気持ち悪いだけだから」
これはお礼を言っておくべきなのかしら・・・
取り敢えず「ありがとう?」と疑問形で返せば「どういたしまして」と返してきた。
「でも、閨教育以外での付き合いはあったんじゃないの?恋人とかさ」
「あるわけないだろ?アディが一番よく知っていると思うけど」
確かに・・・時間があればうちに入り浸っていた王子二人。女の影は一切なし。
「だから、アディも他の男と付き合う必要はない。すぐに僕と結婚しよう」
嬉しそうに幸せそうに微笑みながら、今度は唇を重ねてきた。
「求婚を受け入れてくれたんだから、いいよね?もう、遠慮はしないよ」
そう言いながら、何度も何度も口付けられ、彼の想いを深く深く刻み込まれたような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます