第14話
「え?レオンが?」
一瞬、何を言われているのか分からなくて、目を瞬いた。
え?あのレオンが、婚約?え?相手いたの?
いつも国王夫妻に会うたび「どちらかと~」と言われていたけど、レオンにその気が無い事は、昔から分かっていた。
三つも年上だけど、私の事を親分か何かの様に見ていたから。まぁ、私の方も精神年齢が上過ぎて異性に見れないというのもあったんだけど。
ほら、幼い頃に髪を切った事を内緒にしていたのを、王子二人の所為でばれた事があったでしょ?
本当は王子二人ではなくレオンの所為だったのよ。
その時、容赦なくボコボコにしちゃったのよね。レオンを。
前世を思い出す前までは意外と従順だったから、何をしても大丈夫みたいな感覚だったんだと思う。
所がどっこい、大人しいどころか暴力的になっているし容赦はないしで、レオンの中での私の立ち位置が何故か『ボス』になってしまったらしいのよ。
まぁ、ちょうど前世で職場の近くで不審者が出没していて、警察でも警戒はしてくれてたんだけど、いざとなれば自分の身は自分で守らなくてはいけないからと、護身術を会社の方で講習会という形で週二回ほど開いてくれてたの。
それが非常に役に立ちました!
曲がりなりにも王族をボコった事に対しての御咎めは、どういうわけか無かったのよ。
その当時、既にパン屋で働いていたから、死刑でない限りは何でも『こいやー!』って感じだったんだけど・・・・
今思えば、DNA鑑定の事もあったけど、クリスが何らかの口添えをしてくれてたのかもしれない。
そんなこんなで、まぁ、良い関係(親分子分)を築いていたんだよね。
なのに酷いわ!内緒にしているなんて!
「レオンってば!何で教えてくれなかったのよ!」
「秘密にしていた訳じゃないよ。急に決まったんだ」
「え?そうなの?」
「そう。ボスであるアディに秘密にするわけないだろ?」
「じゃあ、本当に急に決まったの?」
「あぁ。この間の卒業パーティーで、レオンが一目惚れしたんだよ」
「はぁ?レオン、来てたの?」
「よく、トルワ伯爵令嬢の愚痴を言っていただろ?だから、アディの事が心配で裏からこっそり見ていたんだ」
「あらやだ、レオンてば。可愛い!」
「アディにボコられてから人間やめて、忠犬だからね」
ふふふっ、と笑うクリスの笑顔は少し呆れを含んでいた。
「で、レオンは誰と婚約するの?」
「アディの事を守ろうとしていた、エミリー・ウェイバー伯爵令嬢だよ」
「・・・・・えっ!エミリー様?」
驚きだわ!勇敢にも私を守ってくれた令嬢。
その姿は凛々しくて、同性でも思わず見惚れてしまうくらい素敵なのよ!
「レオン!見る目があるわっ!!エミリー様は強くて優しい方よ!」
「あの場で僕も見ていたけど、とても素晴らしい令嬢だね。レオンは身体を張ってアディを守ろうとした彼女に一目惚れしたらしいんだ」
「まぁ・・・確かにエミリー様は美しい容姿だから、分かるけど」
「うん、確かにね。でも、容姿と言うより強さに惹かれたんじゃないかな?」
「強さ?」
「だって、アディの強さに憧れて下僕となり果てた男だよ?王子なのに」
「げ・・下僕って・・・」
忠犬から下僕・・・実の兄が弟の事そんな風に呼んでいいのかしら?
「年上で王子でもある僕達を呼び捨てにし、顎で使う令嬢はこの世に一人しかいないだろ?そんな令嬢を崇拝しているんだ。レオンの理想の根底にアディがいてもおかしくないだろ?」
―――・・いや、おかしいです・・・・・
大体なんで私が崇拝されているわけ?ボコったのだって一度きりよ?
確かに前世の技を使ってやっちゃったけど、あの頃はお互い子供だったし、私の方がすばしこかったから勝てた様なものなのよ。
あの後、年上なのに妙に懐きてきた時は正直ギョッとしたけど、前世年齢を合わせれば私はおばさんだから、すんなり受け入れてしまったのよね。
思わず昔を振り返って『あんなに小さかったのに・・・大人になったのね』と、親戚のおばちゃんの心境だわ。
「婚約が成立するという事は、レオンはどういう立場になるの?」
王太子はいまだに決まっていないのが現状。
確かエミリー様は一人っ子で、彼女が家を継ぐはず。となれば、レオンは婿入りになると思うんだけど・・・
「王太子は恐らく僕がなるだろうね。レオンは陛下に臣下として僕を支えていくと宣言していたから」
「そう、なんだ・・・」
まぁ、お互い王太子を譲り合っていたから、どちらがなってもおかしくはなかったけど。
「伯爵家に婿入りする事になるだろうから、それを機に伯爵から侯爵へと陞爵するだろう。ただ、王位継承権はそのまま持ってもらう事になっている」
婚約成立までに、色々調整が必要なのだそうだ。
「レオンが婚約してしまうと、僕の周りも今以上に煩くなると思うんだ」
「ん?そうなの?」
「レオンがアディ以外の女性と婚約するからね。僕もそう思われてしまうだろ?」
いや元々、私以外と婚約してもらうつもりだったんだけど・・・・
私が何を考えているかなんてお見通しのクリスは、未だに握られている手を指を絡める様に繋ぎ直した。
「ねぇ、アディ。僕と結婚して?」
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