第13話

怒涛の卒業パーティーから三日経ちましたよ。

今、私は自宅の庭でお茶をしているの。クリスと一緒にね(怒)!


あの後、ピンク頭がどうなったかと言うと、私を冤罪で陥れようとしたこと。高位貴族に対しての不敬罪。あと、王族に対しての偽証罪。

王子が私に送ったペンを自分の物だと偽った事も重く見られたみたいね。

これまでに、色んな男性を手玉に取っていた事を、結構な数の貴族から訴えられていたみたいだから、それも考慮されたわ。

私としてはコロッと靡く男も男だと思うんだけど。

で、ピンク頭は北にある修道院へ送られる事になったらしい。

重犯罪を犯した人とか、更生は難しいだろうと言う人達が送られる所で、入所したら最後。二度と出てこられないと言われているわ。

其処は一年通して寒い事で有名な所で、断崖絶壁のすぐそばに建てられていているの。

だから絶対に逃げる事は出来ないんだって。

修道院に続く道は一本しかなくて、周りには草木一本生えてないらしい。

極寒の地だけれどちゃんと町もあって、修道院からは十日かかるらしいわ。周りには何も無いから逃走しても、町にたどり着く前に死んじゃうらしい。

らしい・・というか、死ぬみたいね。これまでに逃走して道半ばで死んだ人が何人もいたみたいだから。

そうい事例があっても自由を夢見るおバカさんは後を絶たず、その所為かどれだけ人を受け入れても満杯になることはない・・・と言う噂。

彼女の実家でもあるトルワ伯爵家にも勿論、御咎めはあったわ。

いくら人が良いと評判でも、娘の奇行を止める事が出来なかったんだから。

他貴族から何度も苦情は行っているはずなんだもの。

娘が北の修道院に送られる事を考慮して、伯爵の爵位はそのままだけど私に対する慰謝料と領地の三分の一を王家が没収。

中々の内容よね・・・・娘一人のやらかしで家が傾きかけるんだから。

でも、トルワ伯爵次期当主がかなり優秀でしっかり者みたいだから、時間はかかるけれどきっと立て直せると思うわ。うん。


そして、そして!あの会場で意の一番に私を助けてくれたエミリー・ウェイバー伯爵令嬢!

何故私を助けてくれたのか分からなかったけれど、DNA鑑定で救われた一人だったみたいなのよ。

彼女の場合、カッコウ公爵が相手ではなかったんだけど、実母が亡くなって暫くしてから女が伯爵に『貴方の子を妊娠したのよ!』と押しかけてきてまんまと後妻に納まったらしい。

伯爵も身に覚えがあったらしく、渋々迎えたらしいの。

そしてよくある話で、妻に納まったとたん贅沢三昧の先妻の娘でもあるエミリー様に辛く当たっていたんだって。

伯爵も何度も注意するけれど埒があかず、別邸に追いやったらしい。

そして生まれた子供は全く誰にも似てなくて、大問題に。

そんな時、DNA鑑定が話題になっていて、早速、手続きをして調べてもらったら、予想通り赤の他人の子供だったんだって。

当然、女は離縁。これまで贅沢三昧で使った金と、エミリー様に対しての虐待等々に対する賠償金を請求。

払えないなら働いて返せという事で、娼館へ売られていったわ。生まれたばかりの子供は孤児院へ。

娼館といってもただの娼館じゃないのよ。

送られたのは、犯罪島の娼館。

犯罪島と言うのは、男女問わず極悪非道を尽くした罪人が収監される所で、孤島にある収容所の事を言うの。

本当は死刑にしてしまえば楽なんだろうけど、『楽に死なせるな』と言う被害者家族、世論の声に応え造られた施設。

孤島という事もあるけど、何十にも魔法結界が張られ、罪人には隷属の首輪を着けられているの。

その首輪は死ぬまで外れない物で、それで管理されているらしいわ。

あと、収容所内で犯罪を犯さないよう監視の役割もはたしていて、万が一騒ぎを起こした場合、首輪が締まっていくらしい。

『西遊記』の孫悟空が頭に付けている輪っか、確か・・・・緊箍児きんこじだったかな?みたいな働きをするみたい。

首絞められたら死んじゃうもんね。怖い怖い・・・

あぁ、話が逸れちゃったけど、その孤島の娼館に売られたのよ。

罪人相手だから休む間もなくヤラレまくりみたいね。だから稼ぎが良いのよ。人数こなすから。

因みに、其処には男娼館もあるらしい。

そう言う話を聞くと、つくづく悪い事はしちゃだめねって思うわ。


そんなこんなの報告をする為に、王子であるクリスがわざわざ当家までやって来たというわけ。

「王子なのに、暇なの?」

卒業パーティーでは助けて貰った事には感謝しているけど、それ以上に不本意な噂が国中に広がっていて、原因を作ったクリスにイライラしまくりなのよ。

「暇なわけないだろ?アディが一番よく知ってるじゃないか」

そう言いながら優雅にお茶を飲むクリスにイラッときて『知るかよっ!』と思いっきりテーブルを叩いた。

「あぁ、そんなことしたら手を痛めるじゃないか」

テーブルを叩いた握りこぶしを、意外とごつごつした手で包み込み、労わる様に撫でてきた。

「あ・・ありがとう。―――じゃなくて!!噂よ!う・わ・さ!!」

絶対にこうなる事を望んでピンク頭をやりこめていたのよ!

私に口出しさせないように。巧妙に。

「アディの耳にも届いたの?いつもは右から左で気にも留めないのに。珍しいね」

「珍しいね、じゃないわよ!こうなる事を狙っていたくせに」

「狙っていたわけじゃないよ。ただ、結果的に国民が私の想いを知り、味方に付いてくれた事は嬉しい誤算だったよ」

 

―――・・・何て、白々しい・・・・・


呆れて言葉もでない私にクリスは「実は朗報もあってね」と、私の手を握ったままイイ笑顔を向けてきた。

「朗報?」


「そう。レオンが婚約する事になったんだ」

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