第12話
ピンク頭が騒いでいた文房具のペン。
これは万年筆とは違っていて、普通の人達が安価で誰でも購入する事が出来る物。
職人の技術に魔法が加わっているけど、大量生産している事と素材に安い物を使っているから、学生や職場では普通に使われている。
前世でいう所の・・・まぁ、ボールペンね。
前世でもそうだったけど、使っている素材によっては高価な物もあったでしょ?それと同じよ。
クリスが今持っているものは、全てが最高級。
胴体は、硬度があるわりに軽い木材を使っており、表面には宝石を薄く削り貼り付けている。勿論、その宝石はアレクサンドライト。
光の加減により、色が赤や緑に変化する、使うのも恐れ多い最高級品。
それを普段使いするようにと、贈ってくれたのよ。
初めはドッキドキで使っていたけど、妙に手に馴染んでこれまた使いやすいのよね。悔しいけど。
気付けば周りからの生暖かい視線に、危機感を感じて私は顔を顰めているけど、そんな事など気にも留めずどちらかと言えば嬉々として、クリスはどんどん話を進めていく。
「このペンはね、アデリーヌ嬢がこの学園に入学する時にお祝いで、私が特別に作らせた物なのだよ」
「・・・特別?」
「そう、特別に。だから、君が持っていた物をアデリーヌ嬢が持っているという事は無い」
言い切った!言い切っちゃったよ!
さっきも「この世に二本しかない」なんて余計なこと言って勘違いされてるって言うのに!!
全てわざとよね?!もう、嫌だわ!もう、止めてよクリス!!
そんな気持ちを込めて彼を見れば、何を勘違いしたのかニッコリ微笑まれた。
そして、またも沸き上がる歓声。あぁ・・・ピンク頭がもの凄い形相で睨んでくるんですけど!
何コレ!!この会場全体がクリスに味方してる!応援してる!!ワタクシ、ヤバイ!!
国王達相手だったら平気で拒否できるけど、何か会場全体を包み込む、なんとも言えないこの雰囲気を拒否する勇気が無いのよ!出来る人がいたら、それは勇者よ!!
こういうのを『外堀を埋める』って言うの?怖い!!
それよりも、この状況よ。
一人の敵に多数の正義?所謂、連帯感?私とクリスの仲を裂こうとする令嬢を、皆で懲らしめるみたいな?
仲を裂くも何も、ただの幼馴染よ?私、平民になるつもりなのよ?
確かにピンク頭は、限りなく残念な脳内思考をしていて、ゴキ○リ並にしぶといけれど、一人対多数と言うのは好きではないわ。
ただ、彼女に婚約者を取られたり、言い掛りを付けられたりと、大なり小なり被害にあっていた人が多かったから、感覚仲間意識が強くなっているんだと思う。
元々、ピンク頭は普段の行動で評判も悪かったから、味方がというか、友人がいなかったのよ。
今日も、同伴していた取り巻き令息もさっさと離れていったし、正に自業自得。
このパーティには親達は参加していないけど、すぐに広まりそう・・・・余計な尾ひれが付いて・・・・
教科書や文房具の他にも色々と言いがかりを付けられた件も、サクッとクリスが正論でやりこめちゃってピンク頭が悔しさからか、正に憤怒の形相でぶるぶる震えながら私を睨んでくる。
怖い・・・怖い・・・元々、顔が可愛いだけに、マジ、怖い・・・・
クリスが大好きなのよね?なら、その顔は止めた方いいと思うわ・・・
貴女がクリスに媚びを売る為に訴えさえしなければ、こんな事にならなかったのよ。
嘘八百の証言なんてするから、超嫌われたんじゃない?貴女が嫌われるだけならいいわよ!
まるで流れ弾にでも当たったみたいに、私にまで被害が及んでるんですけど!!
生暖かい眼差しが、ものすごく刺さるんですけど!!
生徒達から親へと、貴族社会から市井へと。
噂なんて光の速さの如く、あっという間に広がっていくのよ!
会場内を取り巻く雰囲気を否定する為の、私が発言する機会がほとんど・・・いえ、全くなかった事を後々後悔するけど、時遅く。
―――その怖さを数日後、身を持って体験する事になろうとは・・・・
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