第44話 閃光のあと

 隙間から漏れた光は一直線に円に向かう。その勢いにレイとナズナは体を反らす。

「手、放さないようにね。」

倫弥は声を掛ける。二人共しっかりと倫弥の指を掴んでいる。円は光を集め続けているのに、不思議と眩しくない。集まる光たちは流星群。

「きれいだね。こんなの見たことない。」

レイは戸の隙間から吸い寄せられる光たちに目を向ける。この状況に怖さを感じなかった。円の光は密度を増す。倫弥は円の様子をずっとうかがっている。円の中では光のゆらぎ。

「すごいね。」

ナズナもうさぎも円を凝視している。まばたきもせずに。円はその大きさと形を留めたままで、混じりけのない光のかたまりになっていく。その凝縮された粒子のかたまりに三人の指先は見えなくなっていく。円は容量の限界に近づく。三人とうさぎにもその限界は見てとれる。

「そろそろだな。行くよ。」

倫弥は合図する。倫弥の指を掴むレイとナズナの手の力が強まる。うさぎは目を一度見開いて、まばたきした。円の中の光は針の穴ほどの一点に凝縮され、暫しの闇、そのあと一瞬の閃光。すべての視界は奪われた。そして、穴のむこうへ。


 閃光のあとはうさぎが佇む。しばらくして部屋の戸が開き、沙絵とリンが部屋に入ってくる。カーテンは開けられ、部屋はやわらかい光に満たされる。うさぎは抱き上げられ、座布団の上に戻される。何度も繰り返された儀式のように。

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