第43話 円に触れる
倫弥は立ち上がり、またコートを羽織る。レイとナズナも立ち上がる。
「さあ、行くか。」
レイとナズナはコクリと頷く。今度は沙絵とリンも立ち上がる。
「気をつけて。」
リンは小さく手を振る。ナズナも小さく手を振り返す。沙絵は黙って見送る。うさぎの部屋に入ると倫弥は戸とカーテンを閉める。沙絵とリンは閉まった戸を見守る。すぐにまた、戸が開きレイとナズナが出てきた。
「上着忘れちゃって。」レイはそう言って、ナズナはペコリと頭を下げ、二人はコートをとり羽織る。ナズナはコートのポケットから鍵を取り出し沙絵に渡す。
「これ家の鍵です。遅くなったらお願いします。」
そう言ってまたうさぎの部屋に入る。
「リン、何かあったらお母さん頼むよ。行ってくるね。」
レイは沙絵とリンに手を振って、部屋に入り戸を閉める。
「何かあったらって…姉ちゃん。僕も行っていい?」
リンは沙絵に尋ねる。
「やめときなさい。」
沙絵はリンを見ないで応える。
三人はうさぎを囲むように座る。
「ナズナちゃん、うさぎをここに移して。」
倫弥は自分とナズナの間の畳をポンポンと叩く。ナズナは座ったまま座布団からうさぎを抱え、脇に移す。うさぎは目を開き、躰を少し動かし座布団の上をみる。またあの円が映し出される。三人に同じように円が見える。球のような円。三人の顔をほの暗く照らす。
「さあ行こう。手を出して。僕の手を掴んで。」
倫弥は円に触れ、その指先をナズナとレイは掴む。あたりはゆらぎ始める。
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