第42話 覚悟

 テーブルの上はカップ麺が数個とペットボトルが残っている。ゴミはビニール袋にひとまとめ。お腹は満たされた。倫弥はペットボトルに残っていたお茶を飲み干す。

「行く前に聞きたいことは?」

倫弥はナズナに尋ねる。ちょっと考えてナズナは質問する。

「いまさらですが、影は必要ですか?」

その質問に倫弥は微かに笑ったように見えた。その後、うつむいたまま空のペットボトルに蓋をして、テーブルに置く。

「影はね。あるもんなんだな。」

倫弥は左手で頬杖をつき言葉を探す。倫弥の部屋で会った時と同じように。

「それがないってことは、どうなる?」

倫弥は質問に質問で返す。ナズナは返事できずに考え込む。

「前にも話したけど、影がないのはこの世に生がないものなんだ。ナズナちゃんはどうだい?」倫弥はまた質問する。

「わたしは生きています。たぶん。」

ナズナは戸惑いながらも応える。沙絵もリンもどこか一点をじっと見ながら、レイは目を瞑り、二人のやりとりを聞いている。

「そうだよね。」

倫弥は応える。沙絵は倫弥を一瞥する。ナズナは倫弥をじっと見ている。

「だったら影は必要だと思う。」それが倫弥の答え。

「あとは、やっぱり行ったほうがいいね。向こうに。」と付け足す。

「行く覚悟はできてる?」

倫弥の問いにナズナは迷わず頷く。

「とっくにできてるよね。じゃあ生きる覚悟はできてる?」

さらに倫弥は質問する。

「できてます。」ナズナはようやく応える。目には薄っすらと涙。

「じゃあ行こう。」倫弥は微かに笑う。

「レイもいいか?」倫弥はレイに聞く。レイは目を開き、顔を上げ頷く。レイは穏やかな表情だ。


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