第31話 女子会

 三人でお茶を啜る。熱いお茶。

「うさぎはなにか食べなくていいんですか?」ナズナは尋ねる。

「大丈夫よ。なにか勝手にたべるわ。必要ならね。ああ見えて生きる術をわきまえてるのよ。」

うさぎだけでも聞きたいことがたくさん。でも言葉が浮かばない。

「いろいろ本当にありがとうございます。」

「いいのよ。」

三人お茶を啜る。

「寒いですね。」

しばらく間を置いて、ナズナは立ち上がりストーブを点火。

「もう、ストーブの季節ですね。」

「そうね。」

三人お茶を少し飲む。お茶も少し冷めてきた。

「レイ、静かだね。」

ナズナはレイに声をかける

家に入ってからレイの声を聞いていない。

「あっ、うん。」

レイは湯呑みを持ったまま、少しうつむいている。

「頭が追いつかない。うさぎってこんな風に使うんだったの?あんな穴は初めて見たんだけど。お母さん、こんなことはよくあるの?」

沙絵は少し上を見上げ、息をゆっくり吐いてから応える。

「ないよ。これで2回目。影探すのはね。この先の事はわからないけど。」

「リンは知ってるの?」

「なにを?」

「えっと、この先の事。」

ナズナは黙って二人のやりとりを聞いている。

「知らないと思うわ。」

「そっか。1 回目は誰の影を探したの?」

「んっ、エリカさんって人。」

沙絵は言い淀むが「ナズナちゃんの叔母さん。」と付け加える。

「リンにも話したし、やっぱり言っておいたほうがいいか。」

そう言って過去の出来事の話をする。

 

 影をなくして、影を探して、穴を見つけエリカ一人で穴に行ったこと、そして、帰ってこなかった事を。沙絵の話を聞き終え、ナズナは話しだす。

「わたし、エリカ叔母ちゃんのことはしっかり覚えています。ちっちゃい頃はよく遊んでくれて、いろんな所に連れて行ってくれたんで。」

少しうつむいた姿勢で話を続ける。

「けど、お母さんが死んでから、叔母ちゃん良く来てくれてたんですけど、急に会うことが少なくなって、あるときお葬式があったんです。叔母ちゃんの。なんで亡くなったのかなって思って。その時は、誰にもなんにも聞けなくて、聞ける人もいなくて。そういう事だったんですね。お父さんも知ってたんだ。」最後は独り言のように話す。

「ナズナちゃんのお父さんも隠してた訳ではないと思うんだけどね。」

沈黙のあと沙絵は言葉を続ける。

「これから先のことはわたしの言葉では伝わらないし、わたしじゃ伝えられないから。兄さん来るのを待ちますか。」

「はい。」ナズナは返事をし、レイは少し頷く。

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