第29話 穴確認
ナズナは家に入ると部屋を見渡し、昨日から着ていた服を脱ぎ洗濯機に投げ入れ、動きやすい服に着替える。だいたい片付いている。昨日掃除して家を出たんだった。「よし、きれい。」と言って外にでる。ドアを開けると三人はそのまま待っていた。リンは少し見上げるような格好でどこか遠くをみている。
「どうぞ。」ナズナは声をかける。
「着替えたんだね。」
「うん。」ナズナは笑って応える。
「行くよ。」レイは遠くを見ているリンの背中を軽くたたく。
三人を家に招き入れ、玄関を上がり居間へ。居間に入り左に台所と正面に引き戸が二つ。
ナズナが台所に行こうとすると、沙絵が制止する。
「構わないでナズナちゃん。まず穴の確認していい。こっちは?」
向かって右の部屋を指す。
「寝てる部屋です。」
向かって左を指し。
「こっちは?」
「今、使ってない部屋です。」
「みていい?」
「はい。」ナズナは寝室から案内する。
ガラガラと引き戸を開ける。正面と右側に窓、青いカーテン。ベージュのカーペット。陽当たりが良い部屋。右の壁からちょっと離した状態でベッドが置かれ、左に机とタンス。押し入れのような収納もある。レイとリンは部屋の外からみている。沙絵は部屋を見渡す。
「隣も見ていい?」沙絵は次を促す。
隣の部屋の前に立つ。
「ここは父が使っていた部屋です。」
沙絵は『知ってるよ』といったふうに頷く。戸を開ける。正面に窓、レースのカーテン越しにゆるく日がさしこむ。畳の部屋。左にタンスと押し入れ。右に文机と黄色の座布団が置いてあり、座布団の上に何かうずくまっている。沙絵とナズナはそれに近づく。
「ここにいたよ。勝手にお邪魔しててゴメンね。」
うさぎは眠っているようだ。レイとリンも声を聞いて部屋に入ってきて、少しさがった所から見ている。
沙絵がうさぎの背中を撫でるとうさぎは目を開く。うさぎは体を起こし座布団から跳ねおりて、体をひねって座布団にむきなおる。座布団の上に円が浮かび上がる。どこからみても円形。球体なのだろうか。夜明けのような色をしている。
「穴、確認できたね。」
沙絵はしゃがみこみ穴をみている。うさぎもずっと穴をみている。
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