おバカの里  第2回

   ひざに来て猫が上目で顔を読む (友未)


 初笑い「おバカの里 第2回」、おかげさまで 45 篇もの力作にお集り頂く事ができました。新春企画を楽しく盛り立てて頂き、ありがとうございました<(_ _)>

 さて、今回は、友未の企画がつね日ごろ疎んじてきた長編作品やラノベ作品へのせめてもの罪滅ぼしにと、文字数やジャンル制限を外してみた所、予想通り、数多の長編、ラノベ作品をお寄せ頂くことになり、友未は一時パニック状態に陥りかけました。予想通りの結果でパニックになってしまったのではまさにおバカですが、ラノベはともかく、長編については想定を遥かに凌ぐ壮絶な大盛況となり、2万字作品三作、2万3千字、8万字、9万2千字、10万字、11万6千字、22万8千字、30万字、31万6千字、33万字、果ては51万字作品各一作と、想像を絶する満員御礼状態となってしまいました。ショックのために数日間、1文字も読む気になれなくなってしまった読みの甘さを正直に懺悔させて頂きます。それでも、「完読を目指す」と宣言してしまっている以上(「目指す」にしておいて本当に良かった←心の声)できる限りは拝読させて頂かなければと覚悟を決めて読破にかかり、長編につきましても、全ての作品について、お義理に一章だけ、あるいは最初の三章だけ目を通すというのではなく、その作品の性格や物語の特徴をある程度つかめたと得心できる辺りまでは拝読させて頂けたつもりです(ただ、例によって、足跡代わりに💛やコメントを残すことは致しませんでしたのでお赦し下さい)。こうした長編や大長編を目の当りにしますと、たとえそれが自分好みの内容ではなくても、「こんな力作を無視してしまったのでは作者に対して申し訳ない」という想いが友未の中にどうしても起きて来てしまいます。そして、長短にかかわらず、これも、あれも採り上げておきたいと、収拾のつかなくなって来るのもいつもの事でした。ただ、迷った時は、「ストックブック」がコンテストでもなければ論評の場でもなく、友未好みだった作品を紹介させて頂くお楽しみガイドに過ぎないのだという初心を思い出して自分に言い聞かせるようにしています。また、読者として参加して下さった他の皆様がたが他の作品を推して下さることもきっとあるだろうと毎度お預けしていますので、助け船フォローのほど、よろしくお願い致します。という訳で、いざ、本題 ―


 いきなりの本命紹介では芸がないのですが、今回はもったいぶらずに、この二作品からズバリご案内させて頂きましょう。これぞおバカ、おバカのなかのおバカ、おバカの極みともいうべきその二作品こそ、雨月さま「真夜中の珍景」と、崇期さま「博多発、5分で3PV」でした。真性おバカ、おバカの正統とも呼ぶべき珠玉の両短篇です。笑いの仕組みや質こそ異なりますが、実は、この二つの作品にはある特筆すべき共通点がありました。それは、どちらの作品に於いても、読者が一生忘れられなくなる一つの単語に遭遇する事です。「珍景」の場合はある名詞、「博多発」の場合はある形容詞を、もう、死ぬまで決して拭い去れなくなる、そんなトラウマ化の危険を覚悟の上でお読み頂かなければなりません。さらに、この両者、文句なくイチ推し作品であるにもかかわらず、共に友未から☆☆しか与えられていないというではありませんか!☆☆☆でなかった理由を問い詰めた所「短いから」だとか … この人、大丈夫でしょうか?

 「真夜中の珍景」は、海沿いの夜道を独りでウォーキングしていた若い女主人公の身に降りかかったある事件、というか、むしろ主人公が巻き起こすことになる珍劇を描いています。作者の性別はわかりませんが、素晴らしく男前でメリハリの効いた語り口でした。副主人公のスニーカーマンが色情系おバカだとすれば、主人公の方は差し詰め根性系おバカ、負けん気おバカと呼びたくなって来ます。そして、何よりこの逆転した絵自体がありうべからざるおバカそのものでした!友未が一番吹き出したのは、並びかけられたスニーカーマンが「なんなんだよっ!おまえ……」というシーンで、自分がスニーカーマンでも絶対こう言ったに違いありません。スニーカーマンくん側から見たら、超迷惑な主人公です。今後こういう勝気な女性はますます増えて来るでしょうから、スニーカーマンくんのような人種はますますお呼びでなくなってきそうで、ちょっぴり気の毒な気さえします。ときに「でんでん太鼓」、お気に召しました?とはいえ、この雨月さま、いつぞやは「最期の贖罪」という今回とは真逆の、ど鬱なシリアス作品をお寄せ下さった作家さまなのです。

 一方、「博多発、5分で3PV」ときたら!究極にして至高のナンセンスおバカでした。崇期さま、ゲスト講評者という地位も名誉もかなぐり捨ててのご参戦です。しかも書き下ろしの家庭内プロレス ― いえ、あくまで健全なプロレスです ― で、ちょいとイチャついてみせて下さいます。パイルドライバーならぬプラスドライバーや、サブスクリプション、アガパンサスなどの奥技名???をはじめ、アイソメトリック、ルチャ・リブレなど意味不明の特殊用語の数々を検索して行きながら、友未もいつの間にかだいぶ賢くなりました。それに、博多駅の坤口ひつじさるぐちには、そこはかとなく行列ができていて、おいしいモラトリアムを売っているそうですので、それって如何なる光景なのか、ぜひ確認しておかなければと興味津々です。プロレスも、そこはかなさも、モラトリアムも何だか友未あてのプレゼントの様でうれしくなりました。可笑しいのに暖かくて小憎らしい「ダスト小説」(!?)でした。その最後の何行か、おバカのくせに詩的で爽やかで懐かし気な余韻です。とりわけとどめの一言 … 数年前の「じぇじぇじぇ」をさえはるかに凌ぐ衝撃でした。今年の流行語大賞早くも確定です。 いつか友未が安らかな最期の刻を迎える時、ふと、こう微笑むに違いありません。「めめぎろしい … 」


 爆笑系のこの二作とはかなり対照的なのですが、森緒 源さまの「菊とミココロ」は、それこそそれこそ、そこはかとない可笑しみで心をクスッと和ませてくれる川柳のようなおバカ世界でした。「家族身内が集まり、和やかに過ごす秋晴れの休日。菊花展を見に訪れたお寺で」(以上、森緒さまの紹介文より)「酔っ払って千鳥足だったサダジが石段を踏み外して」「本堂前のロウソク台ガラスケースに勢い良く頭を突っ込」(以上、本文より)み、みんなで弁償額を相談するというただそれだけの実話で、荒筋だけ見ても面白さは全然わからないかも知れません。取り立てておどけた書き方がされている訳でも、身をよじって笑い転げたくなるほどのエピソードでもないはずなのですが、さりげなくとぼけた緩いユーモアは実に捨てがたい味のあるものでした。読み終えた後、お父さんそっちのけでミココロ会議に没頭する親族たちと、忘れられたままヘラヘラ血を流しているお父さんの二つのおバカ姿がひとりでに思い出されて来てしまって、独り笑いせずにはいられませんでした。前半で紹介されるだけの人物や、風景の描写が無駄ではないのかという見方にも確かに一理あるのでしょうが、友未は隠し味として無用の用を立派に務め上げているような気がします。「森緒くんと愉快かビミョーな仲間たち」といい、「風流川柳只自己流❗」といい、本作といい、森緒さまは、何気ない現実生活の中におバカを発見する達人でいらっしゃいます。

 雰囲気は少し異なりますが、玉椿 沢さまの「無謀なガキ二人は、いかにして凶悪なハチに立ち向かったのか?」も、同様に慈しみ視線、否、こちらはいささか呆れモードの実話系笑品でした。男の子という動物の生態を扱ったシリアスおバカです。


 所で、友未には「歴史ものや時代劇を書かれる方は筆力が高い」という仮説があります。これは代々の企画にご参加下さった、四谷軒さまや濱口 佳和さま、また、古地行生さま、直近では偽教授さま方の諸作品を拝読させて頂くなかで次第に形作られて来た印象ですが、今回もこの仮説の正しさが、かなり意外な形で裏付けられてしまいました。武州人也さま「デッド柿」。何と柿のゾンビーのお話で、自主企画にご参加いただけていなかったら、多分、一生ご縁がなかっただろうB級パニックです。舞台は現代日本ですので、全然時代ものではないのですが、あまりの面白さにどんな方なのだろうと作品目録を覗かせて頂いたところ、ありました、「周王奇譚」とか、「陳萬攻防記」とか、「凶矢風塵を裂く」とか … ただし、その他はほぼB級系一色に塗りつぶされています。本作も最初、「大丈夫かな」と恐る恐る読み始めたのですが、2万字近くもあるのにあっという間に完読させられていました。何が素晴らしいと言って、その語りのスタイリッシュさときたら!200パーセント友未好みの名文、名展開でした。大好きなので堂々と白状させて頂くことができますが、B級グルメにもB級ホラーにも全く興味のない友未としては、こんなに凄い文章でよくこんなアホな作品が書けるものだと呆れかえる他ありませんでした!アホと言っても、ふざけた書き方ではなく、いかにもB級らしい真面目さで読ませてくれます。そうですね、どれか一話(一章)だけ試読するのでしたら、とりあえず第七話をお勧めしておきましょうか。このメイスン・タグチ&有島時雨はシリーズもので、他にも殺人大根のお話などがありましたので、是非。


 「戦隊モノの青にされたけど俺以外は敵に寝返った件」観音寺 和さま。30万字越えの大長編で、さすがに完読に至っていませんが、その完全にラノベ的なタイトルにもかかわらず、ラノベアレルギーの友未を心ゆくまで笑わせて下さいました。このお話もラノベと呼ぶのでしょうか?だとすれば、友未のラノベ観をかなり修正しなければなりません。前述の「デッド柿」同様、B級であろうが、ラノベであろうが、本当に面白い作品に出会ってしまうと友未の薄ぺらな先入観や偏見など吹き飛ばされてしまいます。まさにおバカの速射砲ともいうべき大作ですが、正統的?なおバカながら、ストーリーで笑わせるというより、台詞や描写のひとつひとつの可笑しさがこれでもか、これでもかという感じで勝負を挑んできます。内容的にも文章的にもラノベにありがちなすさみがなく、悪口や毒舌にも心が暖まって来るようなユーモアがありました。基本的に読者や登場人物を致命的に痛めつけることのない作品です。特に、司令官が豆腐屋のおっさんだったり、第一指令室が豆腐屋だったりする庶民性が気に入りました。K子君やマナ・B君(けいことま……)、おばばにロッキー・Dさん、AIのアイちゃんやゴンサレス君などのキャラもそれぞれにはっきりと人懐こい個性を与えられていてユニークです。それにしても、この作品、歯切れが良いくせにどこまで読んでもきりがありません。実際、爽快なテンポでどんどん読み進んで行けるのですが、はじめて敵が登場してくるのが第20話になってから。さすがに30万字越え。ですが、それだけ丁寧に描き込まれている証拠です。ちなみにこの文章のスピード感は、殆どが単文で書かれていることによるものでしょう。単文、重文、複文 … 国語や英語で習いましたよね?

 もう一つ、汐乃タツヤさまの「要らねえチート物語」116,313文字も、友未好みのズッコケおバカでした。主人公がスレていなくてハートフルタッチな所も「戦隊モノの青に … 」同様です。この両作品は、奇しくも、最初に主人公が車に轢かれて死んじゃう所から始まっていました。高校生の吉村聖也くん、轢かれそうになった女の子を助けようとして命を落してしまい、ポンコツ新米女神セレスによって復活させられたものの、「あっ!? 間違えた!!」ということで、アラレちゃんみたいなとんでもない能力を自覚のないまま与えられて生き返って来ます。このチート力、発動すると自分ではうまくコントロールできず、他人に知られる訳にも行かないので、結果、恐ろしく窮屈な生活を強いられてしまうのですが、その逆説的不自由さが見事な説得力で描かれていて、さもありなんと頷かずにはいられません。さらに特筆すべきは、相手役の三浦という変人美少女クラスメイトのキャラ設定で、彼女の存在のおかげで劇的な立体感が一挙に開けて行くようでした。


 If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive. If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.フィリップ・マーロウか、サム・スペードか、はたまたコヨーテか。つくお様の「仏頂面のララバイ」は、既述のどの作品とも異なるつう好みの苦味の利いたおバカ作品です。ドタバタのおふざけかなと思って読み始めたら、マジでハードボイルドを気取っておられました。カルト系おバカとでも言えば良いのでしょうか、某高名な政治家から依頼されたミッションが「ジョークをさがせ」という内容でさえなかったらそのままサスペンスとして通用しそうですが、それでもどこか可笑しい。パンチ力があるので、いい加減な気持ちで油断していると不意を喰らいます。友未も、本当に何人も死んじゃったのが可哀そうでした。あちこちに散りばめられたドスの効いたおバカに当てられてアザだらけです。まさにハードボイルド・パスタ(パスティーシュ)でした。このつくお様、おバカ作品ではないのですが、もし皆様が、苦く不条理な笑いを好まれるのでしたら、くれぐれも「a man with NO mission」だけは見逃されませんように。


 最後に一言ずつ。猫とホウキさまの掌編、「トマトラーメンから始まる連鎖的ショートコント」。「どんでん返しの里」の折の「謎行動のコックリさん」同様、もの凄い勢いでどんどん畳みかけて来られて、最後は何が起きたのか頭が追いつかないまま呆気にとられていました。音楽用語でいうアッチェレランドです。なお、全くの余談ですが、イクイノックス、皐月賞直行で愕然としています。

 「ラーメン屋のおかみが日本経済を回すとき」柴田 恭太朗さま。笑いと元気をごちそうさまでした。外食産業の皆さん、頑張れ!

 

 さて、ここからはいよいよ今回の企画の目玉としてお招きしたゲストコメンテーター、崇期さまのご登壇です。言わずと知れた「笑いのヒトキワ荘」の管理人さま。ただし、崇期さまがどの作品をどうおっしゃって下さるのかは、友未も知りません。事前の意見交換、すり合せなど一切なしで、書き方や選び方もご自由にということでお願いしたからです。どんな内容をお寄せ頂けたのか、ドキドキしています。


             🐾🐾🐾


  友未さんの「◯◯の里」企画もカクヨムの自主企画ではおなじみになってきましたよね。いつも拝見していて、投稿したいと思うのですが、私の小説だとテーマがドンピシャにならず、見合わせていたことが多かったわけです。今回、このような形でオファーをいただき、非常にうれしかったです。


 おバカ小説って、定義があるようでないもの、とても難しいですよね。そういう意味で、皆さんが思うおバカ作品、ぶっ飛び作品をたくさん提示していただいたと思います。その中から、私が思う「おバカ」、「理想のおバカ」をピックアップしてみました。


(敬称略です)



オンブズゥーマン、助けて~!/紫 李鳥


 これを語らないとはじまらないと思っています。私がこの作品を初読みしたとき、正直、感動もそうなのですが「おそれ」を感じました。

今の時代にこのようなテイストのお話はなかなかお目にかかれない! 金太郎ヘアにほっぺた赤いって、こういうヴィジュアルのキャラクター自体、絶滅危惧種でしょうし、金太郎みたいな男の子、でもよかったのに、なぜ女性キャラにしたんでしょう。後半に出てくるテーマソングみたいなものが、もう、たまらん笑える……。


 カクヨムにはギャグ作家さんはそれこそ「うようよ」いるんだと思います(失礼な擬声語のような副詞を使ってしまい、申し訳ない)。しかしカクヨムに名を連ねている以上、ライトノベル的なお話に挑戦する方が非常に多いのではないでしょうか。作者の年齢に関係なく、です。そこで勝負するからこそ「カクヨム」と言えるのかもしれませんし。私の脳にも浮かばなかったわけではないのですが、そのようなセンスや能力がありませんでした。そして、あちらこちらつまみ読みして、本当に久しぶりに紫さんの小説を数行読んだときに、「ああ、やっぱり、なんかほっとするわ〜」と心底感じた私がいたんですね。


 新進気鋭の笑いの作品を読破していらっしゃる方は、こういった昭和テイストの、いわばスローテンポな世界に対して「退屈」を感じるかもしれませんが、こういうお話にしか出せない空気、ノスタルジーってあると思います。


「カクヨム」にもこういう作品は必要だと思います。ぜひ増えてほしい。私には十分すぎるほどおもしろかった! この作品のような世界を求めて、過去に私主催の自主企画「笑いのヒトキワ荘」で「昔の笑いで出ています」という大会を開催したのですが、残念ながら、お目当ての作品がそこまで集まりませんでした。そうそう無いってことなんですよ。なので貴重な存在でもあるわけです、こういうテイストのギャグを書ける作家さんというのは。「◯◯なのら〜」「シュワッチ!」って、これを違和感なく登場させられる世界を創れるわけですからね。私が最初に申し上げた「おそれ」はもちろん「畏敬の念」です。私も書けるものなら書きたいですよ。





孤島の連続殺人事件(ぼっち)/尾八原ジュージ


 ものすごく狂気を感じさせるお話も多数あるのに、女性的な雰囲気でとっても「ファンシー」な感じがするから不思議でならない、というのがジュージさん作品の私のイメージ。おそらくミステリー作品の、リアルな視点から見て不自然なところを笑いに仕立てたお話だと思うのですが、「お約束の煮こごり」という親切丁寧な滑り出しの部分ですでに噴き出してしまいました。「おもしろくないわけがない」というほど見事に作ってくださいました物語です。「口数はやたらと少ないが有能な執事」がついさっきまでいたとか、孤島の館の主人がバカスカ殺人を犯したとか、シャンデリアに吊るされた死体などもあったということですから『金田一少年の事件簿』を読んだことがある私は「ごっちゃんです」と手刀を切りました。私は小説ではミステリーはほとんど読まないです……。ジュージさんの作品、非常にオシャレな都会のワンルーム的にこぢんまりと完結した世界に感じるんですが、それでいてひっそりと人知れない“奥行き”みたいなものがあるんですよね。生活空間的に完璧なワンルームなんだけど、ベランダから駐車場に停まる巨大なザリガニが見えるとか、近所に「指が落ちている」河原がある、とかでしょうか。世界の「ほころび」ではない、不思議世界に通じる有機的なトンネル。多作でいらっしゃるので全部を読めないのが残念なところ。ああ、この作品ではなくジュージさん作品について語っているみたいになってしまいましたが、こちらの御作では「ミステリー感があからさますぎ」て、ある意味「怖い」。存分においしいおバカ世界でした。





日本国新国歌/田中ざくれろ



 こちらを「パロディ」とするならば、参照先についてはなにも述べたくないような……と怖々な感じもありますが、私が僭越ながら、この御作のすばらしいところを言わせていただけることがあるとするならば、「つくりの丁寧さ」ですね。

おバカは「とことんやらなきゃダメ」と思っております。中途半端、雑さ、がいい味を出すこともままありましょうが、「バカバカしい」と誰もがやらないことを死にもの狂いで完璧にやる、あるいは「やろうとする」。だから「バカ」なんです。

「厨二病」という言葉があることを最近知りました。そういう雰囲気なのかもしれないし、作者様がとりたててそこに注目してほしかったわけでもないのかもしれない。とにかく、世に流通している歌詞的文章表現を存分に、これでもかと投入し笑いにした、その満腹感がすごいです。


  



忘年会初、2時間で15000円/焼き飯太郎


 キャプションで拙作に言及してくださり、おもしろかったと言ってくださり感謝。しかも、このタイトル!! 大変ありがとうございます。太郎さん……。

私のおバカの里参加作『博多発、5分で3PV』の友好姉妹小説と思っていいでしょうか?


 焼き飯太郎さんの小説世界は私なりに掴んでいるつもりで、大好きなんです。いわば、「こじらせサラリーマンの漫談風小説」みたいなもの? 

 元ネタが若干、世代によって「???」となる場合もあるでしょうが、サブタイトルの「MADOGIWA LAST BOY」──脳裏にあのフレーズ、気だるそうな歌声がリフレインしました。太郎さんはおそらくは私とほぼ同世代? と言っていいかも。私も主人公同様、ほとんどの人生を「憂い溢れる会社員」として過ごしたからか──めっちゃ胸を打つ。いや、ほんとに。


 意味のよくわからなさそのものよりも、「個人にそういう気持ちを強いている社会もひどいんじゃないの?」と不思議な同情心がわいてくる。それをこういう「若干の朴訥さ」「なんやこれ感」で書いていることが「おバカ」なんだけど、「愛しい」と思う。これからも読み続けたい作者様です。


  




シコ娘/三宅 蘭二朗


 こちらについては一言で許してください。こんな「うますぎる」もの、投稿しちゃダメでしょ……。ジャンルがSFになっているみたいですが、「スポーツ・ファイト」ってことかしら? それとも「スモウ・ファン」?「シコを・踏む」?(これくらいで勘弁してください)。

 物語は全然バカじゃないのですが、作者様がおそらくは意図的に投入されておられる若干の下ネタギャグが「あんたも好きやな〜」とニンマリしました。






デッド柿/武州人也


 いいですね。私の頭の中でそれなりに「おバカ小説」というカテゴリー、勝手なイメージがあるものですから、この小説、作品に対して「バカっぽい」と言っていいのだろうかと思いました。それくらい読み応えがありましたし、バカと言ったら失礼かも……と思える。もちろん内容のくだらなさは最高でした。人喰い柿が襲ってくるという、トンデモ作品。B級映画っていうんですね。


(引用)カブトムシやらクワガタやらを飼うようなプラスチックケース


 こちら、作為的なものでしょうか。もしかすると作者様はそこまで笑いを取ろうと思った箇所ではないのかもしれませんが、作為なら「てだれ」ですし、天然でも恐ろしいです。結構ツボってしまいました。


(引用)サメ・エーガ氏 

    ビー・Q・エーガ


 これ、最高ですね。そのままやん!! 


 それから、こんなこと(柿パニック)が起こっていながら中止にならないというマラソン大会ですね。こういう細部が本当に好きでした。コメディはこうでなければ、と思います。ツッコミどころはあればあるほど脳が喜ぶ。読ませていただき、ありがとうございました。





ある日ティム能力に目覚めた、あたしは・・・/せのしすい



 これも「おバカ」ノリが全開ですねー。「異能モノ」でしょうか。

カクヨムはたまに評価のとき、ふと気がつくと連続押しがオーバーしてしまい、「星3つ押したはずなのに1つになっとる!」ってことがありますよね? こちらもそうなってしまっていたので、慌てて修正しました。もし作者様のところに変な通知が行っていたら、ごめんなさい。最初から3つ押していましたので。


 まずいいな、と思ったのが、タイトルですね。どこかシリアス作品っぽく、余韻が香ります。中身がはっちゃけていますから、同じノリでカクヨム風の長タイトルでもよかったところ、落差を持たせて作品の雰囲気をレベルアップさせていると思います。自然惹かれまして、読んでみようと開かせられました。


 作品世界はものすごく目新しいとかではないのですが、小5女児の語り口がかわいいし、おもしろい。そして芸が細かい。子どもが主人公で一人称小説の場合、作者が大人で頭がいいものですから、その大人の作為的なものが匂ってくると冷めてしまうのですが、こちらは「頭いいな」と思いながらも、ある意味「一方的に攻めまくった」という感じで気持ちがよかったです。


 子どもの口から「日本政府の肝いり」とか「レート」は聞きたくなかったですが、それも見事な笑いですね。


 私が読ませていただいたのは「G」と「DOBCレーティングゲーム」の二話だけですが、ひたすら明るい「だぜ!」少女に好感を覚えました。




仏頂面のララバイ/つくお


 海外ユーモア小説好きにはたまらない作品でした。実は、コメントのやりとりでわかったのですが、私の企画用に書いてくださったものの、文字数がオーバーしていて参加を取りやめたとか。

私は非常に悔しかったです。だって、すごい私好みでしたから。文章が海外仕様ですね。おバカな物語世界のおバカな事件、おバカなクールガイ。ユーモア溢れまくり、です。



ベンザブロック/ジュン


 製品名なので大丈夫かなぁと不安になりますが、こういった作品を堂々と送りだせるジュンさんの気概が好き。まさにおバカを生きる作家さん。落語家っぽいですね。




 こちらに選ばせてもらっていない作品も目を通させていただきました。カクヨムには素敵な作品がまだまだいっぱいあるということですね。

 私も精進いたします。なんと言っても、この企画に参加された作家様方は私のライバルかもしれませんから。機会がありましたら、私の企画、笑いのヒトキワ荘にも遊びに来てくださればうれしいです。これだけ笑いを取れるなら、引っ込み思案になる必要はないでしょう!

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