うんちく と よもやま話の里 第1回

 皆様、昨年末は「うんちくとよもやま話の里」へのご参加ありがとうございました。今回は8篇の楽しいよもやま語りにお集り頂くことができました。一年の納めに、友未の知らない様々な世界やご高見を楽しませて頂こうと、いつもの半分以下の期間で急遽、開催させて頂いたお試し企画だったにもかかわらず、作品数こそ少な目でしたが、それぞれに愉快なお話をお聞かせ頂き、ありがとうございました。深く感謝申し上げます。

さて、今回は折角ですので、簡単ですがご寄稿順に全8篇をご紹介いたします!それぞれにユニークですよ~


1.矢向 亜紀さま、「世界のどこかで音を買う 〜海外旅行CD屋さん巡りのススメ」

は、タイトル通り、これから海外旅行をする音楽好きの方必見のガイドブックです。ご自身の経験に基き、未経験者にも分りやすく、まさに痒い所に手の届く至れり尽くせりの内容で、近況ノートにリンクされた旅先の写真も交えて楽しく案内して下さいます。音楽ファイルも貼れるといいのにな、と、ふと思いました。今回の8篇の中で最も実際的、というか、一番、現場で役立ちそうな手引書でした。

”穏やかそうなお兄さんが店番をしていたので、さっそく話しかけてみました。「この国の伝統的な音楽を、家族へのお土産にしたい」というのと、「自分用にロックのCDが欲しい」と伝えたところ、店員さん自身がバンドをやっていて、自分のCDを勧めてくれました。”(以上、「2.出かける前の準備」より)

皆様も、楽しいご旅行と音楽を ―


2.柚緒駆さま、「続・虫の日記」

圧巻の大労作でした!日記風の私記で、多岐のジャンルにわたる(とりわけ社会問題や政治にまつわる話題が多く取り上げられています)その日の出来事(複数)についてのコメントが綴られて行くのですが、何と、2019/10/15から本日只今に至るまで、一日も欠かさず、何千文字もの文章が進行形で書き進められつつあります。話題に対しても、単に書き留めたまま素通りするのではなく、必ず立ち止って人間的考察を加えて行くコンセプトです。アイデアの枯れた書き手さまは是非ご一読下さい。

”だいたい異性カップルを「夫婦」、同性カップルを「ふうふ」と表記するのなら、トランスジェンダー同士の異性カップルはどうするのだ。そこに「夫」や「妻」という立場があるかどうかは家族ごとに異なるのに「夫婦」でいいのか。こういう意識高い系の表記変更は中途半端だし、すぐ限界が来る。「私たちは性差別についてちゃんと考えています」と主張したいのなら、もう少しちゃんと決めた方がいいと思うのだけれど。”(以上、2022/1/1より)全篇に散見される「疲れた」とか「今日はあまり書けなかった」とか、「何千字書けた」というつぶやきに、思わず「ご苦労様」とお答えしたくなってきます。


3.イチカさま、「風俗嬢を始めてみたら天職ではと思った話」

ぶっ飛んでいる、というか、これまで友未が出会って来たエッセイの中でも特に衝撃的、かつ刺激的な内容のお話でした。現役風俗嬢の語る可笑しな風俗事情なのですが、風俗嬢という言葉の持つ負のイメージをあっけらかんと脱ぎ捨てた率直な内容です。面接担当者にレイプされるなどディープな話題にもこと欠きませんが、ご本人のおっしゃる通り、風俗嬢としては間違いなく例外的な独自の存在ではないかと思いました。実は男性が書いているのではないかという疑念もちらりと脳裏をかすめましたが、このさばさばしたユーモアは、やはり本物の女性でしょう。

”業界に飛び込んでみて、私のこの「お客様に喜んでいただきたい、お互い楽しいプレイにしたい」と思う気持ちは風俗嬢向きではないかと思いましたし、これまで私が悪いことだと思って隠してきた、男の人やセックスが好きな気持ち、性への関心が強いことなどは、強みになる。隠さなきゃいけないどころか、逆に喜ばれる! というのを感じてとてもうれしかったんです。さらに、入店したその月からお店のランキングに入ることができたため、「これは天職では!?」と強く思いました。

 これらは私が根っから真面目な性格をしている故だと思います。きっと、真面目な人間が風俗嬢をするとこうなる、という顕著な例です。”(以上、「第4話 天職では!?」より)


4.七沢ゆきの様(&朝樹さま)、「七沢ゆきの&朝樹のなんちゃって医療エッセイ~またまた三途の川ツアーしてきました~」

衝撃の問題作、という点では風俗嬢と共に今回の双璧です。もの凄いインパクトでした。自称、シルベスター・スタローンに憧れる普通の女の子、七沢ゆきの様の想像を絶する幾多の壮絶な負傷及び治療体験に、救急外来看護師・朝樹さまが見事なツッコミとフォローを施す共作エッセイなのですが、一例を挙げてみますと … ”『かなりの火傷をして「病院に行ったら皮膚移植されちゃう!傷跡が二つになる!そんなのやだ!」とハサミで水泡を切り取り、その辺のカッターでデブリ※1をし、ワセリン※2と被覆材※3で覆い、その後も肉が腐るたびにデブリし、今では少しシミがある程度まで治した』  はい。これを読んだ朝樹は「ひ―――っ」となりました。”(「第1話 男前な患者さんに送る、救急外来看護師からの無難な熱傷処置の方法」より)といった具合です。このゆきの様、他にもドアにはさまれて足の親指がちぎれかけてもちょん切られるのが怖くて病院に行かずにひとりで直したり、ギンナンを食べ過ぎて死にかけたり、火を噴く電源コードを素手で掴んで何度も感電したり … と、これが本当に普通の女の子なら、友未は「女の子」という生き物の定義を見直さなくてはなりません。


5.負け犬アベンジャーさま、「たのしいまちがいさがし」

は、ちょっと風変わりなクイズでした。まず最初に、評論かエッセイ風の文章が示されます。次に、同じ内容の文章が次章で示されますが、実は微妙に異なる部分が10箇所あるのです。さて、どこでしょう、という間違いさがしゲームで、最後の章で答が明かされるのですが、実際に挑戦してみた所、9箇所までは何とか見つけたのですが、最後の一つがどうしても分らず、答を見ても、「え、何?」と三度くらい首を捻って照らし合わせて見ないと理解できない手強さでした。皆様はいかがでしょうか?ちなみに、ゲーム素材として示されるこの短文、「鬼滅の刃」を扱った内容で、作者ご自身は「文章自体に意味はないです」「発作的に書きました」とタグされていますが、「鬼滅の刃」を一度も見たことのない友未にとっては、ちょっとしたガイドブックのような面白さがありました。” ……なので、まぁ、そろそろ異世界転生な女性向けなろう小説を書かなければならないところに来てるのだと、追い詰められています。”(「みぎがわ」より)


6.詩川貴彦さま、「クルマについてのエトセトラⅡ」

前回、「原風景の里」の企画に「「疾走」~高杉晋作を想う~」でご参加くださった詩川さま、今回は車愛くるまあい全開のエッセイをお寄せ頂けました。ご自身の事を「ワシ」とおっしゃるその呼び方の独特の面白さはここでも健在です。友未は毎日のように車には乗るのですが、実はなかなかのメカ音痴で、昨秋、そのSF的な外観に惚れ込んだコミコミ20万円の三菱アイの中古に乗り換えた際にも、エンジンがお尻に付いていることや、前輪と後輪の径が違うことを説明されただけでかなりのカルチャーショックを覚えたほどでした。それで、内容を理解できるかなと、恐る恐る覗かせて頂いたのですが、大丈夫、充分楽しませて頂けました。どの文章にも車に寄せる詩川さまの暖かく熱い想いが宿っていて、車や電車の絵本が大好きだった子供時代の友未が蘇ってきた思いです。”ワシはもしかしたら高級車よりも新車よりも、そういうクルマが本来大好きなのかもしれません。「貧乏性」のワシにとって何よりも楽しい時間を過ごすことができたと今でもおもっています。 またどっかに安い中古車はないかのう(笑)”(「第12話 楽しかったクルマたち」より)


7.えくれあ♡様、「蕎麦湯のポテンシャル弍〜乾物の神々〜」

一話10秒以内で読める、愉しい日記ふうのひと口ミニネタ集です。スナック菓子みたいに、読み出すと止まらなくなります。”私の友達の いちばんかわいい子は……   ピンクを身につけない のだと言う。 「もういい歳だし、ピンクはもう……なんかイタイ気もするし」 のだと言う。 ふーん……。 私のスマホカバーは……   ピンクだ……。   あいたたた……。”(「7杯目 ピンク」全文)ときに、えくれあ♡様、その後、尾骶骨は治られましたか?


8.太刀山いめ様、「太刀山のひとり言」

は、温故知新の宝物庫です。武田信玄や大谷刑部吉継らの戦国武将、徳川家康三奉行の一人、鬼作左と呼ばれた本多重次や忠臣蔵の話もあれば、つい一時代、二時代昔の食材や調理の話あり、かと思えばご自身の思い出あり、ワーグナーの「指輪」や、果ては妖怪、怪物の話題に至るまでその博識ぶりには唖然とさせられます。”「ネクタイなんてのは『奴隷の首輪』を面白がった貴族が作った物でな。現代の勤め人の奴隷の首輪だよ」  「私はネクタイはナポレオンが冬戦争をするにあたって服の隙間風を防ぐのに採用したと聞きました」”(「第19話 人間の首輪」より)単なる雑学としても面白いのですが(ちなみにドリアンと酒をいっしょに摂ると死ぬそうです)、特筆すべきはそれぞれのエピソードの合間に添えられるコメントに、時代と共に見失われて来た古き良き物事への愛悼の趣が込められている点でしょう。ことに、弱者への共感と個の尊重の視点には喝采を送らずにはいられません。

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