第10話 良い事いう人々① 苦き杯

「私は貧乏と病気のどん底で生き抜いてきた。私はどのようにしてその悩みを切り抜けてきたのかと質問されれば、私はこう答える。


「昨日も耐えた。今日も耐えよう。明日、どんなことが起こるのか? そんなことは決して気にしてはならない」


私は窮乏、苦闘、不安、失望を知り尽くしてきた。自分の力の限界以上に働き続けなければならなかった。私の人生を振り返ると、それは死んだ夢、破れた希望、砕けた幻影の残骸が散乱している戦場だったことに気付く。

私はいつも不利を承知で闘い、傷ついて血を流し、年よりも早く老けてしまった。しかし私は自分を少しも可哀想だとは思わない。過ぎ去った日々を嘆きもしないし、私のような苦しい目に遭わなかった人々をうらやむ気持ちもない。


あの人たちは単に存在しているだけだが、私は充実した生き方をしてきたからである。


私は人生という杯を最後の一滴まで飲み干したが、あの人たちはその表面に浮いている泡をすすったにすぎない。


私はあの人たちの知り得ない事を知っている。あの人たちに見えないものまで見ている。私は「厳しい試練」という偉大な大学で、安易な生活を送っている人には決して体得できない哲学を学んだ。私は一日一日をあるがままに生活し、明日への心配から生じる悩みを背負わない方法を学んだ。

われわれを臆病にするのは想像上の陰惨な脅迫感である。私はそんな恐怖は追い出してしまう。なぜなら、経験によって、必要な力と知恵が必ず私に与えられると知ったからだ。


私は他人に対して期待しないことを学んだので、あまり信頼のおけない友人や、ゴシップを流す知人とも、かなり仲良く付き合っていける。とりわけ私はユーモアを忘れないようにしている。なぜなら、世の中の多くの事柄は、泣くか笑うしかないからだ。自分の労苦についてヒステリーを起こす代わりに、冗談を言えるような人間なら、二度とくよくよする事はない。


わたしは自分の経験した困難を後悔してはいない。私はそれらを通じて人生の隅々まで味わってきたからだ。」


byドロシー・デイックス


彼女のような人生観を持てば無敵です。何も恐れずに何も悩むことはないでしょう。

人生という苦い杯の、表面だけでなく最後の一滴まで飲み干したのだと彼女は堂々と自負できたのです。それは単に気持ちの持ち方の、気分の問題にすぎないのです。誰にでもできることなんです。

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