第13話
自己紹介はそれからどんどん進んでいった。
普通に自己紹介をする奴や、笑いを取りに行く奴、緊張して噛んでしまうやつ。
色々だった。
「幸城拍莉です! よろしくお願いします! 異能は氷系です、夏なんかは役に立てるよ!」
ボーっとみんなの自己紹介を見ていると、幸城の自己紹介が始まった。
元々の性格が明るいからか、既に友達も何人か出来ている感じだった。
しかも男子からの人気もあるようだ。
「なぁなぁ、あの子良いよな!」
「あぁ、確実にうちのクラスで一番だろ!」
男子は幸城に対してそんな事を言っていた。
まぁ、確かに幸城は可愛いからな。
そんな事を考えている間に俺の番になった。
しかも俺は一番最後、なんか一番最後ってのも逆に緊張する。
俺は席を立ち黒板の前に立つと、簡単に自己紹介をした。
「与那城水面です、趣味は釣りとか音楽聞いたりとかで、異能は水系統です、よろしくお願いします」
あえて出身中学は言わなかった。
もしも、今年入学している奴の中に俺と同じ中学の奴が居たら不審がるからだ。
そこから色々と聞かれのは面倒だし、何より俺がオルトロスだとバレる危険性もあった。
至って普通の自己紹介を終え、俺は席につく。
すると、丁度前の席だった空野が俺に声をかけてきた。
「お前与那城って言うのか、よろしくな!」
「あ、あぁ……確か空野だっけ?」
「あぁ、空野風太! 風太で良いぜ、俺も水面って呼ばせて貰うから」
「いきなり名前呼びか? まぁ別に良いけど」
「いやぁ~俺、同じ中学からこの学校に来た奴いなくてさぁ~。まだボッチだから早く友達欲しいわけよ、だからよろしく! 友人第一号!」
「そんな理由で適当に選んで大丈夫なのかよ? 俺と性格が合わない可能性だってあるんだぜ?」
「そうか? 俺とお前、結構相性良いと思うぜ? なんたって今のところ同じボッチだからな!」
「っふ……良く見てるなお前」
「まぁな、お前なら声かけやすいと思ってよ! よろしくなってイデッ!!」
風太がそんな話しを俺に向かってしていると、先生が風太の頭にチョップをお見舞いした。
「仲良くなるのは結構だが、今は一応授業中だぞ」
「は、はい……」
「罰として空野、お前はこの後先生の手伝いをするように」
「えぇ~!!」
「連帯責任で与那城もな」
「はっ!?」
まさかの巻き添えを食ってしまった。
まぁでも、友達が出来たことは心強い。
どんな奴かまだよくわからないけど、悪い奴ではなさそうだ。
自己紹介が終った後、俺と風太は先生に呼ばれ次の授業で使う機材を教室に運ぶ事になった。
「なぁ水面、お前ってどこ中?」
「え? あぁ……」
機材を持って歩いていると、風太がふと尋ねてきた。
風太にとってはただの雑談のつもりだったのかもしれないが、俺にとっては大ピンチだった。
正直に話してもどこかでほころびが出るかもしれない。
だからと言って嘘をつくのもまずい気がする。
どうする?
ここは適当に誤魔化すか?
でもどうやって?
そんな事を俺が考えていると、急に誰かから背中を叩かれた。
「よっ! 元気そうだな」
「え? あ、滝沢先生?」
「おう、久しぶりだな与那城」
背中を叩いて来たのは、俺が入院していた病院の異能ドクターである滝沢先生だった。
先生は病院と動揺、私服に白衣を来ており、ニコニコしながら俺に話し掛けてきた。
「知り合いか?」
「あぁ……ちょっとな」
「お、新入生か? 俺は異能ドクターの滝沢だ、与那城とは知り合いでな。与那城、放課後、多目的室まで来てくれ話しがある」
「わ、わかりました」
「じゃ、俺は仕事だから、お前らも授業に遅れるなよ」
そう言って滝沢先生は帰って行った。
というか、なんであの人がここに居るんだ?
あの人はあの病院の異能ドクターじゃなかったのか?
もしかして俺の異能と関係があるのか?
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