第12話
そりゃあ、心配もするよな。
「あぁ、ごめん、スマホの充電切れてて」
「あんまり心配させないでよ……」
「ごめん」
悪いことをしてしまった。
まさかここまで心配されるなんて思いもしなかった。
今度からはちゃんと連絡を入れるようにしよう。
「あ、あのぉ……」
俺と舞が話をしていると幸城が気まずそうに尋ねてきた。
「えっと、与那城君のお姉さん?」
「あ、いや……」
まぁ、姉と思われても不思議ではないよな?
同い年でも俺の成長は止まってるし。
まぁ、適当に知り合いって言っておくか。
変に詳しく説明して、俺が三年間氷漬けになっていたなんて話しまですることはないだろう。
「貴方はえっと……み、水面の友達?」
俺が話すより先に舞が幸城に尋ねた。
「はい! 与那城君のお姉さんですか? 私は同じクラスの幸城拍莉って言います!」
「そ、そうなんだ……こんにちわ。えっと私は水面のお姉さんじゃなくてね……」
「幸城、悪い。ちょっと急ぐんだ、また明日学校で」
「うん、じゃぁ私コッチだからまた明日ね!」
そう言って幸城は住宅街の方に向かって消えていった。
明るくて良い子なのだが、氷系統の異能者か……別にあの子は悪くないんだが、あまり得意ではないな。
「さ、早速友達出来たんだ……」
「まぁね」
「よ、良かったじゃない。それにその……すごく可愛かったし」
「そうだな」
「ちゃ、ちゃんと言っておいてよ! 私が姉じゃなくて幼馴染だってこと!」
「分かってるよ。それより悪かったよ、ちょっといろいろあってさっきの幸城の探し物の手伝いをしてたんだ」
「そ、そっか……そうなんだ」
舞はなんだか焦っているような感じがした。
何を焦っているのか分からないが、焦っているときの舞は口数が多くなるのを俺は知っている。
「聖にも悪い事をしちゃったし、早く帰ろう」
「そ、そうね! みんな待ってるわよ」
正直、あまり家には帰りたくなかった。
パーティーなんて終ってくれてて良かったのだが、舞が迎えにきた以上、そんな事を言える訳がない。
笑顔を浮かべながらも俺の足は重たく、家に帰るのを拒んでいるようだった。
*
入学式の翌日、その日は本格的な学校内の施設の紹介や部活動の紹介や委員会の紹介などがあった。
そして、この日一番とも言えるイベントが今まさに始まろうとしていた。
それは……。
「はい、じゃぁ皆さんからは今から自己紹介をして貰います」
黒板に自己紹介と書き、担任の先生がそう言った。
その前に俺達は担任である先生の名前すら知らないのだが……。。
「先生! 俺達先生の名前すら知りません!」
「あぁ、そうか。俺は土田重明(つちだ しげあき)、異能実習を担当している。ピッチピチの33歳独身だ。よろしくー」
土田先生はやせ型で基本的にあまり表情を顔に出さない人だった。
無表情で淡々と話をする人で、一見すると怖そうにも見えるがつまらないギャグも言える、ユーモアのある先生のようだ。
「よーし、じゃぁお前ら自分の名前と出身中学、それと趣味、休日の過ごし方、あとは自分の異能についてと最近の恋人への不満を話せー」
「先生! 恋人が居ない僕はどうしたらいいですか!」
「好きなタイプでも喋っておけー以上だ。それじゃぁさっきからよく質問してくる君、自己紹介よろしく」
「え!? 俺ですか?」
「そうだー、それ以降は出席番号順で頼む」
「えぇ……じゃ、じゃぁ……第三中学から来ました、空野風太(そらの ふうた)です。趣味はラーメンを食う事で、休日は愛犬の散歩をしてます。あと、俺の異能は風系統で風の操作が出来ます、好きなタイプは慎重が俺より小さくて、手料理の美味しい女子です!」
「はい、空野お疲れ。それじゃぁ次の奴からは好きなタイプは飛ばして良いから」
「え!? いや! なんでですか先生!! 俺ちゃんと言ったのに!」
「なんか言わせて見たら長くて眠くなりそうだったから」
「なら俺にも言わせないで下さいよ! 結構恥ずかしかったんですけど!」
面白いやつだなぁー、多分あの空野って奴がこのクラスのムードメーカーになりそうだな。
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